Stefan Jós - Things You Left Behind

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  • モントリオールのDevon Hansenのディスコグラフィーには、たった数年の歴史しかないのかもしれないが、その音楽性は既に様々な方向に伸びている。Lotide名義では、Astro:Dynamicや、その他のレーベルから、ビートを基調とした薄く透き通るようなサンプルコラージュを、本名名義では、『A Pair Of Quiet And Empty Rooms』のような殺伐としたミュージックコンクレートを展開。そして、Austin Cesearと共に発表した昨年のスプリットカセットでお目見えとなったのが、テープ/ヒスノイズ・テクノを展開する名義Stefan Jósだった。パッと聴いただけでも、どのプロジェクトもそれぞれハッキリと異なることが分かるが、静けさ、極微な動き、そして、サウンドデザインに対する素晴らしい聴覚、といった共通の特徴も存在する。Flauが新たに発足させたサブレーベルraumからStefan Jós名義にてリリースされるHansenの最新EPにおいても、こうした特徴に焦点が当てられている。 収録された4つのトラックは、Stefan Jósの過去作品よりも随分と従来のテクノに近い。そのテクスチャーはハッキリとしており、ドラムのサウンドはどっしりと、そして、トラックはしっかりと直線的な構造になっている。しかも、個性を失うことなく、こうした音楽的な洗練を実現している。例えば、ゆらめくシンセコードによって、Hansenのトレードマークである真夜中の雰囲気が生み出されているが、同時に、自然な響きを持つサウンドを好む彼の姿が、見事に作り込んだ中域のパーカッションに表れている。おそらく本作のベストトラックは、眩く光る"Specialism (Uneasy)"だろう。とは言え、EP全体に一貫した魅力がある。遠回りなやり方ではあるが、極微なグルーヴと輪郭のハッキリとしたサウンドに焦点を当てるHansenの姿勢は、Ricardo Villalobosを彷彿とさせる。にも関わらず、Hansenが犯した唯一の失敗は、どのトラックも5分間しかないということだ。Villalobosのように長尺のスタイルにすれば、さらに素敵なトラックになっていたかもしれない。
  • Tracklist
      A1 Inside Voices A2 Specialism (Uneasy) B1 L'Arcade B2 Places to Drive at Night
RA