Roland - AIRA TB-3

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  • RolandのAIRAシリーズのデザインは3機種共に非常に目立つ。TR-8のレイアウトはオリジナルの808/909にかなり似ていたが、TB-3は303を現代に再現したような先進的なデザインとなった。機材業界でAIRAシリーズがハイプになった際、TB-3よりもTR-8の方に注目が集まったのは、この先進的なデザインに依るところもあっただろう。しかし、中古のTB-303が異常な値段で取引されている状況にある今、世間のTB-3への興味はかなり高い。 TB-3は基本的にはオリジナルの303と同じコンパクトなサイズ(TB-303の30cm x 14.6cmに対し、TB-3は24cm x 17.3cm)だが、フロントパネルの大部分はタッチ・パッドになっている。これは303と同じボディを期待していた人たちには不満かも知れないが、やや不可解なボタンの組み合わせで操作する必要があった303と比較すると、非常にシンプルな操作が可能になっているのは素晴らしい。尚、TB-3にボタンが配置されていない訳ではなく、タッチ・パッドを、各モード(キーボード/XYモード/エンベロープモジュレーター/パターンセレクト/Scatter[AIRAシリーズに共通しているエフェクト]コントロール)に切り替える際にはボタン操作が必要になる。 背面は最近の機材に共通した入出力 − 1/4インチステレオアウトプット、MIDIイン/アウト、USB − が備わっている。USBとMIDI経由で他のハードウェア/ソフトウェアのシーケンスも行える点は好感が持てる。AIRAは全機種共通でUSBポートからオーディオが送れるようになっているが、これはオーディオデバイスの集約(PCでは操作が複雑)が必要となる。また、100%デジタルサウンドなため、303に備わっていたCVとGateは取り除かれている。 TB-3のPlayボタンを押すと、プリセットパターンが再生される。303と同様、64パターン(8x8)が内蔵されているが、303と似ているのはここまでで、TB-3のパターンにはモダンで優秀な機能が追加されている。当然ながらステップレコーディングに対応しているが、同時にタッチ・パッドによるリアルタイムレコーディングにも対応している(尚、テストした際にプレイバックのクォンタイズがややおかしいと感じた時があった)。また、プレイバック中にパターンを繋げたり、別のパターンへコピー/ペーストしたりすることも可能だ。筆者が一番気に入ったのはノートを含むシーケンス上のすべてのパラメーターをランダマイズできるランダム機能で、この機能では、自分でプログラムしたパターンをキープしながら、オクターブシフト、スライド、アクセントなどをランダマイズさせることが可能だ。これはシーケンスを面白くする素晴らしい機能で、瞬間的にランダマイズの使用/不使用を選択できるようになっている。 オシレーター1基(波形はノコギリ波と矩形波の2種類)+18dBフィルター、カットオフ、レゾナンス、ディケイ、エンベロープアマウント、アクセントというTB-303の構成は、才能あるミュージシャンたちが長年に渡り引き出してきたフレーズの素晴らしさを考えると、驚くほどシンプルだ。TB-3でもこれが引き継がれており、殆どの部分で同じコントロールとなっている(尚、エンベロープアマウントとディケイはタッチ・パッドのエンベロープモジュレーションモードでコントロールするため、303信奉者は気に入らないかも知れない)。またTB-3では303の波形がデジタルで再現されているが、そのサウンドは見事だ。ブラインドテストでデジタルとオリジナルの違いを聴き分けられる人も多少はいるかも知れないが、それでも十分にオリジナルの代役を果たせる本格的なサウンドになっている。この段階でも既にTB-3には試す価値があるが、303のノコギリ波と矩形波はTB-3に内蔵されている133のサウンドのうちの2つにしか過ぎない。TB-3の133個のサウンドはAからDまでの4つのバンクに別れている。バンクAには303の特徴的なサウンドが26個入っており、A02より先は大半がエフェクトのかかったサウンドになっている。そしてバンクBには一般的なベースサウンドが50個、バンクCにはリード系、バンクDにはRolandが言うところの「SFX」サウンドが入っている。多様なスタイルのサウンドが揃っているが、全体的には前面に出すような派手なサウンドで、控えめなサウンドを探している人にとってはこの機材は向いていないだろう。 TB-3でRolandが新たに加えた機能の最後を飾るのが各サウンドのエフェクトだ。表向きはエフェクトの強さをコントロールするノブ1個でコントロールするようになっているが、筆者は、場合によってエンベロープモジュレーションモードのタッチ・パッドでもエフェクトの量を変化させられることに気がついた。ただし、マニュアルには、このモードは「選択されているサウンドに最適なパラメーターをコントロールします」と書いてあり、選択しているサウンドのエフェクトを自分で選べないという事実と合わせて考えると、Rolandから「何が良いサウンドかはこちらが把握しているのでご心配なさらずに」とやや上から目線で言われているように感じた。 とはいえ、TB-3に対しては好印象を持った。299ドルという価格を考えると、もう少しサウンドがコントロールできても良かった気がするが、303の再現という意味で考えると、Rolandの選択は正しかったと言える。クラシックな303のサウンドの正確なデジタルバージョンを探している人にとっては価格の価値は間違いなくあり、シーケンス機能や豊富なサウンドがそこに華を添えてくれている。 Ratings: Cost: 3.5/5 Versatility: 3/5 Sound: 4.5/5 Ease of use: 4/5
RA