Elektron - Analog Keys

  • Published
    Jun 30, 2014
  • Released
    December 2013
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  • Elektronはコンセプチュアルでカッティングエッジなデザインと素晴らしいサウンドと豊富な機能を備えたハードウェアメーカーとして高い評価を得ている。Monomachine SFX6以来となるキーボード製品となったAnalog Keysは、基本的にはAnalog Fourのキーボードバージョンだ。同時発音数4、セミウェイテッド37鍵のキーボードバージョンはAnalog Fourよりも機能数が増えており、OS が1.1にアップデートされた他、Overbridgeと呼ばれる新機能が搭載されている。OSはヴォイスアサインの管理や、強力なMIDIマルチマップ、そして元々は追加機能で、今はすべてのElektron製品に標準搭載されている+Driveへのアクセスを可能にしている。Overbridgeは今年後半にAnalogシリーズだけで展開されるOS上の新機能で、初めてUSBポート経由でDAW側と24bitのオーディオデータを送受信できるようになる他、VST/AUの操作とパッチの管理も行えるようになる。 Elektronにとってこのような変化は特に目新しいものではない。過去のOSのアップデートでもただのバグ対応だけではなく、機能性の向上や、複数のリバーブやシーケンスモードなどが追加されていた。つまり、Elektronの機材を1台所有していれば、数ヶ月または数年おきに新しい機材を手にすることを意味する。もうひとつElektronが重視している点は、パフォーマンス時の機能性の重視だ。Analog Keysでは、Analog Fourのパワフルなシーケンス機能がそのまま持ち込まれている他、15のパラメーターをアサインすることで、サウンドに無限の変化をもたらせるジョイスティックが搭載されている。また、サイズが大きくなったことで、4系統のステレオアウトプットとAnalog Keysを瞬時にMIDIコントローラーに切り替えるボタンも搭載された。 Analog Keysにはこのような多種多様な機能に加え、 ユニークなサウンドも備わっている。エフェクト直前までのシグナルパスがすべてアナログだという点は特筆すべきだろう。各ボイスには複数の波形が組み込まれたオシレーターが2基搭載されており、特徴的なサウンドの源となっている。各ボイスには1〜2オクターブ下、またはフィフスに下げられるチューニング機能が付属したサブオシレーター2基が搭載されているため、シングルボイスで4音のコードを鳴らせる。そして各ボイスにはフィルターも2基搭載されており、4ポールのローパスラダーフィルターの後方には2ポールマルチモードフィルターが並んでいる。またノイズジェネレーター、オーバードライブ、フィルターフィードバックも各サウンドをより複雑なものにしてくれるはずだ。モジュレーションに関しては、アサイン可能なLFOとエンベロープが2基ずつと、それらに加え、一般的なモジュレーション機能には専用のLFOとエンベロープが用意されている。よってアサイナブルなLFOとエンベロープを他の機能のモジュレーションに回すことが可能だ。この専用LFOとエンベロープにはウェーブシェープLFO2基、アンプエンベロープ、ノイズフェード・エンベロープ、オートベンド・エンベロープなどが含まれている。またOSのアップデートにより、4つのトラックにはそれぞれ4ボイス、マルチティンバー、ユニゾンを自由にアサインできる。 ジョイスティック付近の「MULTI MAP」ボタンから入れるマルチマップ機能も充実している。4つの異なったパッチをオクターブごとにアサインするような基本的な機能から、内部メモリから異なったパッチをノートごとにアサインできる機能までが含まれている。プリセットマルチには1オクターブのアナログドラムサウンドと、他のオクターブに複数のパッチが配置されているドラムキットパッチも含まれている。Analog Keysの機能は非常に複雑なため、プログラムするのには時間がかかるが、自由にパッチを組み合わせることが可能なため、ステージ上では活躍するだろう。尚、パフォーマンスモードでも、10個のデータコントロールノブをパラメーターマクロにアサイン可能だ。すべてをアサインするにはかなり時間がかかるが、いざアサインすればひとつのノブで好きなトラックの好きなサウンドの5つまでのパラメーターが可能になる。時間をかけて学んでいけば、多くの機能を手元で簡単に使えるようになるはずだ。 64 ステップの内蔵シーケンサーはステップごとにパラメーターが用意されている。セミウェイテッドのキーボードが追加され、シーケンスを組む際の操作性がAnalog Fourの小さなボタンによるそれよりも大きく向上した。シーケンスは4つのシンセトラック、エフェクトトラック、CV/ゲートトラックごとに作成可能だ。またトラックごとに長さを変えられるため、ポリリズムなどクリエイティブなシーケンスが可能となっている。尚、ステップの長さは16分から1/384分まで細かく設定することが可能だ。アルペジエーターはトラックごとに6種類用意されており、それぞれ各種設定が可能になっている。また各シンセトラックには3系統のエフェクトセンドが備わっており、コーラス、サチュレーターディレイ、そして素晴らしいリバーブから選択可能だ。また独自のシーケンスパターンが備わったエフェクトトラックが搭載されているため、エフェクトのパラメーターはステップごとに変化させることも可能だ。そしてCV/Gateトラックではシグナルをデュアルアウトプットから送ることで、他のアナログ機器のシーケンスが可能になっている。このCVシーケンサーの能力は、4ボイスのシンセの付属機能としては、最も洗練されたものと言えるだろう。 Analog Keysの+Driveには4000以上のサウンドが収録されているが、オンラインストアに用意されている大量のパターンやキットの追加購入が可能だ。このフォーマットは、今後のアナログシンセのパッチメモリの販売方法の先駆けとなる可能性がある。Analog Fourでは各サウンドの選択が面倒だったが、Analog Keysでは大型のセレクションホイールが採用されているため、ホイールを回せば、瞬時にパッチリストを確認することが可能だ。またカテゴリ別にタグ付けされているため、たとえばベースを探している場合も簡単に見つけられるだろう。尚、ベース音の他にもリードやパッド、ドラムのサウンドが豊富に用意されている。ドラムのサウンドは平均的なドラムサンプルを参考にして作成されており、筆者の所有する他の機材のキックに匹敵するようなサウンドをプログラムするのは簡単ではなかったが、ノイズハイハットやスネアなど、非常に使いやすいサウンドが揃っている。また背面のステレオインプットが更にこの機材の可能性を広げている。これを使えばインプットシグナルをオシレーターとして扱えるため、外部のサウンドをフィルターやエフェクトを通しながら64ステップのシーケンスで走らせることが可能だ。 Analog KeysはAnalog Fourのデザインをネクストレヴェルに進化させたが、サイズは依然として小さく、移動にも適したライブ用機材としての機能性が保たれている。サウンド、シーケンサー、他の機器との接続機能などが盛り沢山だが、これからのアップデートでは更なる機能の追加が期待できる。ElektronのAnalogシリーズは非常にユニークなサウンドを誇ると同時に、スタジオやステージで他の機材を操作するコントロールセンターとしても機能するため、プロミュージシャンたちがこぞって使用しているのも納得の話だ。 Ratings: Cost: 4/5 Versatility: 4.5/5 Sound: 4.5/5 Ease of use: 3.5/5
RA