- レコード収集という点で、Jeremy Underground Paris（英語サイト）は期待以上の成果を見せる。20代前半まで彼は手に入れる価値があると思った90年代のハウスなら何でも集め続けていた。自身のコレクションが完成する見通しがつくと、次に彼は同年代の未発表音源を探し始めた。彼は偉大な、しかし長らく忘れ去られていたプロデューサー2人を大捜索の末に見つけ出し、そのうちの1人は警察官になるために音楽活動を止めて久しかったのだが、彼らの何十年も埃を被っていたトラックを譲って欲しいと説得したのだった。そしてレーベルを始めその音楽を自身の手でリリースしたのだ。ここまで熱狂的だと常軌を逸した感さえあるが、ハウス・ミュージックのコンピレーションを制作するにあたっては最適な資質を備えていると言えるだろう。
3枚のアナログ盤に渡って収めされた『My Love Is Underground』ではJeremyがフォーカスしたテーマにおいて彼が深い知識を持っていることを見事に映し出している。アーティスト名はどれも知らないものばかりなのだが、クオリティは徹底的に高く維持されている。"Is This Dream For Real?"を例に挙げるなら、このトラックはProject Democracyによる87年の超レア・タイトルであり、Project Democracyは当時、Chi-TownのプロデューサーMarcus Mixxのエンジニアを務めていたGitano Cametoの別名義である。Marcus Mixxの音楽と同様、このトラックもざらついた質感のグルーヴ感に溢れ、完全にタイムレスなものだ。他にもVissalの"Get Up On Your Feet"は、どうしてヒットしなかったのか理解に苦しむほど良質なUKガラージだ。UKハウスのパイオニアCrispin J Gloverの別名義Caucasian Boyによる"In From Behind (Boom Boom Ina Bedroom)"でのシンセ・サックスのリフがトラックにそぐわないと感じる人がいるかもしれないが、ロウな感覚とエネルギーが内包されており決して的を外したりはしていない。Aaron Aceの"Pressure"ではJhelisaの"Friendly Pressure"のフレーズをノリノリでピークタイム時のKerri Chandlerのような雰囲気に仕上げている。DJ Natureが以前に使っていた名義Natureboyの"Eurodisney"は90年代ニューヨークにおけるディープ・ハウスのお手本とも呼べるものだ。他にも、Karry HeardとDon Carlosの中間に位置するドリーミーなイタロ・ナンバーであるUniversity Of Loveによる"Vostok 3"も本作のハイライトだ。Don Carlosは長い間過小評価されているイタリア人プロデューサーである。
本当に『My Love Is Underground』は全て素晴らしい。オールド・スクールのハウスをアナログ盤でプレイしたいと思っているなら、本作は絶対手に入れるべきだ。とりわけ、収録されたレコードを買おうとすれば法外な価格が付けられているからだ。このコンピレーションは単に100ドルの価格が付いたレコードを集めただけだと言っている訳ではない。バーゲン・コーナーの棚にありそうな奇妙なトラックも同様に収録されているのだ。しかし素晴らしいのはJeremy Underground Parisは手間を惜しまず、つまらないゴミのようなトラックをふるいにかけて、宝石のみを残しているということだ。
Tracklist01. Aaron Arce - Pressure
02. Bipo - Why? (Extended Vocal)
03. University Of Love feat. MBG - Vostok 3 (MBG Deep Trip)
04. DJ Trax - Deep Modern Jazz
05. Natureboy - Euro-Disney Pt. 1&2
06. Dose Of Paradise - Latin Dream
07. Project Democracy feat. China - Is This Dream For Real? (Psychedub)
08. Level 3 - Around The Way
09. Caucasian Boy – In From Behind (Boom Boom Ina Bedroom)
19. Manhattan Project - Saturday Luv
11. Vissal - Get Up On Your Feet
12. The Poets - Emotion