Walton - All Night

  • Share
  • 昨年HyperdubよりリリースされたUK出身のプロデューサー、Waltonのデビュー作は控えめな存在ながらもベースミュージック本来のやんちゃさをグライムとUKファンキーの隙間に落とし込んだ実に楽しい作品だった。パーカッシブでシンセを偏重したそのEPは、そのメロディを差し置いても断固としてモノトーンなものだった。だからこそ、ここに届けられた彼の2枚目となるEPを聴いて、そのエレガントなストリングス・スタブと弾んだヴォーカルで始まる冒頭には少しばかり驚かされた。そして、そのすぐ後にはニヤリとさせられた。"All Nite"はまずしなやかなファンクで幕を開け、潰れたパーカッションと跳ね回る8ビット・シンセがやがて複雑に絡み合いはじめる。それはまるでButterzのトラックを酔っぱらわせて部屋中でバウンスさせたような感覚だ。その混乱は時折一丸としたまとまりを見せたかと思うえば、またすぐに方々へ散らばっていく。その抜き差しの巧みさはしっかりコントロールされているという以上に、デビュー作に比較して格段の進歩が見られる。 いみじくも"Mallet"というタイトルが付けられたトラックでは、文字通りマレット(木槌)の音色がふんだんにフィーチャーされており、その特徴的なサウンドはHyperdubの同僚であるFunkystepzゆずりの神経質なスキップ感を滲み出している。Funkystepzからの影響はそのラフなグライム感覚にも見られるが、Waltonはその色彩と明るいメロディをさらに磨きあげている。EPの最後を締めくくる2分間の短いトラック"Kush"は眠りを誘うような白昼夢的トラックだが、他の2トラックにおける複雑ながら求心力の高い作品に比較すると存在感はちょっとだけ劣っているような気もする。
RA