RA.502 Eric Cloutier

  • Published
    Jan 11, 2016
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    194 MB
  • Length
    01:24:42
  • 熟練のセレクターが届ける豊潤なテクノ
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  • 2013年のRA exchangeでは、Eric Cloutierは自身のことを「レコード・ディギング・サイコパス」と呼び、長い時は一日6時間ほどDiscogsで時間を過ごしていることを語っていた。それは大げさであったとしても、事実とはそれほど遠くないのだろう。20年近いキャリアを通して、Cloutierは最も脳をイカれさせるテクノを探し当て、完璧に繋げていくということだけを目標に、ストイックに突き進み続けてきた。彼は陶酔的で時代を感じさせないサウンドを好み、細部までこだわり抜いたプレイを得意とし、ミックスというアートを真正面から大真面目に捉えている男だ。 彼はデトロイトで生まれ育ち、自身のサウンドを生み、2000年代にはThe Bunkerのレジデントとして活躍し、ニューヨークでそのサウンドを磨き上げてきた。現在はベルリンに拠点をおいている彼はプロデューサーとしての頭角も表しており、MosaicとWolfskuil LtdからEPをリリースし、Patrice ScottのレーベルSistrumからもリリースが予定されている。しかしそんな今でも、彼の活動の主軸はレコードを発掘し、かけることである。今回のRA 502は、長年の献身的な活動からしか生み出すことができない深遠さとニュアンスを含んだテクノが展開する84分間になっている。 近況報告をお願いします 今年Sistrumからリリースされるトラックの仕上げをしていたよ。あと、お気に入りのレーベルにトラックを送って、気に入ってくれることを願っている。そして年始ということで、2016年の目標を設定して、より大きなことに挑戦することを計画していた。 制作環境を教えて下さい Pioneer PLX-1000タンテ2つ、Pioneer CDJ-2000NXS2つ、そしてPioneer DJM-900NXSミキサーを、ベルリンのPioneerスタジオで何時間か使わせてもらってミックスを制作したんだ。 ミックスのコンセプトについて教えて下さい 最近はDJがすごく楽しくて、これまでで一番良いプレイができていると自分で思っているんだ。以前よりもダイナミックなセットがプレイできるようにいろいろと挑戦しているんだが、DJとして自分のサウンドを安定させることにもフォーカスしていた。2013年にベルリンに引っ越してからは、街にあふれるインスピレーションと素晴らしいレコード屋に感化されて、90年代後半にかけていたようなテクノに改めてハマって、自分のサウンドやパフォーマンスが原点回帰したんだ。今でもディープなものは好きだし、ハウスのレコードも最近はディグしているんだが、今回のミックスはトライバルでジャッキングでトリッピーなテクノセットになったと思う。最近DJギグでやっているセットに近いものになったよ。古い曲と新しい曲、そして未発表曲や自分の曲を混ぜたんだ。 あなたは特にミックス制作に強いこだわりを持っています。録音されたミックスのどういうところに魅力を感じますか? 若くてまだミックスCDに一種の幻想を抱いていたころは、そういったミックスの完璧さに惚れ惚れし、選曲から構成までを分析して自分でもそういったプレイができるよう何時間も練習していた。しかしそのうち、スタジオ機材の編集でできることを知り、考えすぎていたことに気がついたが、DJにおけるスキルやテクニックを磨くことにまじめに取り組む姿勢は今でも大事にしているんだ。店で売ってるミックスや、レイヴで聞けるプレイと同レベルなポッドキャストを発信するベッドルームDJとして自分を見るようになった。俺の活動を追ってきたひとは知っているだろうけど、ポッドキャスト作りには誇りを持っているし、自分の進化の過程の記録だと思っているんだ。 あと、クラブでのプレイよりもディープでより幅広い選曲になるから、スタジオで録音したミックスのほうが感心させられるものが多いんだ。目の前に大勢の人々がいないほうが人はより冒険的なことができる。客がいるからといって自分のプレイの仕方が変わるべきではないと思うんだけどね。あと、クラブでのDJとミックス作りを同列に扱うことに興味があるんだ。俺はクラブでもポッドキャストでもかけたくなる面白くて新しい曲を常にディグしているつもりだし、そのふたつに一貫性を持たせることを意識しているよ。 2015年のハイライトは何でしたか? Wolfskuilから自分の名前がのったEPを出すことができたことだね。DJとしてこれまで活動してきたから、自分の音楽をプロデュースするためには学ぶことがたくさんで、ようやく最近慣れてきたんだ。しかし去年はギグもとても面白いのがたくさんあった。去年の2月にはBerghainでThe Bunker NYのショーケースがあって、馴染みの仲間と一緒にプレイしたし、親しい友人のPeter Van Hoesenとオーストラリアをツアーし、Strawberry Fields Festivalなどですごく楽しい時間を過ごし、1月にはThe Bunker NYの12周年で憧れのJeff Millsのオープンを務めさせてもらった。 今後の予定は? 豊かな夏を迎えるため、冬はスタジオにこもることが多くなりそうだと予想するよ。プロデュースに関して自信がついてきたから、今年は音楽の世界になんらかの貢献をすることができるんじゃないかと思ってる。The Bunker NYのためのEPを仕上げる予定をしっかりと立てていて、Les Enfants TerriblesからもEPが出る話があって、更にWolfskuilからの2枚目、そしてMosaicからも出せたらと思っているんだ。あと、そろそろアルバム作りにも挑戦しようかと思っている。レコードディグに忙しくないとき。 とにかく今はいろいろなことに挑戦して自分をプッシュすることに集中しているんだ。以前よりも新しいことに挑戦しているし、ギグをやっているときも新しい活力がある。今年は特に良い予感がするし、その感覚はこれからも続く気がしてならないんだ。
RA