- アンビエント宇宙旅
- ロシア人テクノ・アーティスト、Dasha Rushはテクノを目的地ではなく、スタート地点として考えている。DJそしてライブ・パフォーマーとして人気を集め、世界を廻っている彼女だが、作品はダンスフロアに意識を向けていないものも多く、時には音楽そのものにも背を向ける。彼女がRaster-Notonから最近リリースした『Sleepstep』は、彼女の作品を総括したメタファーとして捉えことも可能だ。「これらの16曲は、覚醒と睡眠の狭間の状態から発信された信号だ」と、Tony Naylorがレビューで語っているが、彼女の作品はそういった隙間を体現していることが多い。ダビーであり強烈、獰猛であり穏便、霞めていて、かつクリア。『Sleepstep』はそういった素晴らしい矛盾を多く内包した作品だ。ひとつの枠に収まらないことはRushにとって重要なことであり、それは彼女がインディペンデントな活動を続ける理由とも関連する。2005年にリリースを開始して以来、彼女の作品の大半は自身のレーベルFullpandaから発表しており、2013年のインタビューにて彼女が語っていた通り、このシーンの多くの人がハマってしまう売名合戦に参加するのを拒んできた。それによって、一部のテクノファンには彼女の存在感がとても薄くなっているが、同時に、彼女は好きに音楽を追求する自由を手にしている。
こういったことを踏まえると、ポッドキャストの制作の依頼に彼女から「いいけど、クラブ・ミックスにはならないわよ」という返事が返ってきても、さほど驚きはしなかった。そして到着したミックスは、Rushの内省的な一面が現れた65分間の濃厚なアンビエント・サウンドスケープであった。今週、彼女はモントリオールのMutekにて、Stanislav Glazovと共にオーディオ/ビジュアル・ショウ、Antarctic Taktを北米初披露する。
近況報告をお願いします
もうご存知だと思うけど、ニューアルバムをリリースしたわ。あと今年はリミックスの依頼をいくつか受けた。そのうちの1曲、Token RecordsのInigo Kenndeyの"Requiem"は、とても気に入っている。これは7月に出る予定。あとはもちろん、私のレーベルFullpandaね。6月半ばにはアルゼンチンのアーティストPulse Oneの作品をリリースするわ。LADAのアルバムを年末までに出せたらと思ってる。その合間には、日常の現実を頑張って生き抜いているか、現実を逃避しているわ(皮肉よ)。
ミックスの制作環境を教えてください。
慎重に選曲したあと、一発録りで録音した。即興性をキープするためにね。音楽メディアでいうと、ヴァイナル、CDJとパソコンを使ったわ。
ミックスのコンセプトについて教えてください
光と闇、愛と恐怖をこのサウンド・ピクチャーの源に挙げることができるわ。場の空気や人の感情を解釈して、人間のフィーリングを反映するかもしれないサウンドを組み合わせたミュージック・コラージュよ。個人的には、ポッドキャストを作るのはクラブ・ミックスとは別物だと考えている。踊るため、というよりはリスニングのためだと思うわ。あえて言うとしたら、より知的なエンターテインメントじゃないかしら。あと、ポッドキャストは私により幅広い音楽ジャンルで実験をするチャンスを与えてくれる。抽象的かもしれないけど、物語性のある構成を心がけているわ。
Raster-Notonのアルバムはどのように実現したのですか?
話せばとても長いわ。いつか教えてあげるかも。:)
4DSOUNDプロジェクトではどういうアプローチをするかもう決まっているのですか?
私が今考えているのは、物理的感覚が周波数と呼応する、音、色、空間に密接したパフォーマンス。しかし本当のところ、これが7月までに準備できるか解らないし、4Dチームが今回テクノにフォーカスしたいかどうか解らないから、おそらく私はアブストラクトな「テクノイド」セットをやると思うけど、それでも完全にクラブ・ミュージックになるわけではなく、4DSOUNDの全てを最大限に活用するつもり。
今後の予定は?
先週末はパリとイタリアの南部でプレイした。この次はMutekフェスティバルでオーディオ/ビジュアル・ショウ、Antarctic Taktをやるつもり。Stanislav Glazovがビジュアルを担当してくれるわ。
TracklistBrian Eno - Neroli - All Saints Records
Malcolm Mahiti - Tem-Oh04 - Phloq
Mitchell Akiyama - Meridia - Eat This Records
Daniel Stefanik - Reactivity- Statik Entertainment
Donato Dozzy - Introduczione - Spectrum Spools
Points - Andrei Oid - Hunger to Create (Upcoming )
Alva Noto - Xerrox Spiegel - Raster-Noton
Grzegorz Bojanek - Brain Brain - Mind Twisting Records
Orphx - Radiotherapy 1- Hands
Dino Sabatini - Prophecy - Prologue
Neel - Storm In Stickney - Spectrum Spools
Tuomo Vaananen - Distance- Ljudverket
Included samples and sound loops:
Leo Anibaldi - Blue Noise - Rephlex
Biosphere - Vi Kan Tenka Digitalt - Biophon
Biosphere - Hyperborea - Origo Sound
Monolake - Shutdown - Imbalance Computer Music
Mendeleev - Chrom
Biosphere - Fall In Fall - Touch
ADMX71 - Provisions - Sonic Groove
Cell - Blue Embers - Lobogistic Labs
Mendeleev - Chrom
Donato Dozzy - Introduczione - Spectroom Spools
J.F Cochois - Silence Unheard - Elektrolux