Bee MaskがSpectrum Spoolsよりアルバムを発表

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    Wed, Nov 28, 2012, 05:00
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    Resident Advisor
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  • 『When We Were Eating Unripe Pears』をリリースしたばかりのエクスペリメンタルなプロデューサーに、新作について話を伺った
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  • Chris Madak、別名Bee Maskが今月『When We Were Eating Unripe Pears』と題したアルバムをリリースした。 オハイオ州クリーブランド出身、フィラデルフィア在住のアヴァンギャルドなエレクトロニックアーティストMadakは、最近テクノ界で注目を集めている。アメリカのアンダーグラウンドレーベルからCD-Rやカセットでのリリースを何年も重ねていたが、2009年にUKのTrilogy Tapesからリリースを果たし、ここ一年ほどでNYのThe Bunkerや日本のフェスLabyrinthにもデビューするほどになった。ビートレスな曲が多い彼の音楽だが、テクノやハウスのヘッズからも支持されるようになっており、その中にBen UFOやDonato DozzyといったDJも含まれる。 『When We Were Eating Unripe Pears』は、オーストラリアのレーベルEditions MegoのサブレーベルであるオハイオのSpectrum Spoolsからのリリースとなる。収録されている7曲は、過去5年ほどの間に作った曲をまとめたものだ。そんなMadakにニューアルバムについてや、最近の状況についてメールで話をきいてみた。
    あなたはSpectrum Spoolsの拠点と同じ、オハイオ出身ですね。オハイオのシーンには影響されたと思いますか?それとも、自身で今のスタイルを見つけたと思いますか? クリーブランドはちょっと複雑な変わった場所で、俺は確実に影響を受けているね。他州出身の知り合いがクリーブランドに来て、ギグをやってから、俺の言ってる事がもっと理解できるようになったって言われるほどだ。2005年から2008年頃は、シーンが活発になっていて、今まで個人で動いていた人々が集まってプロジェクトを始めたり、レーベルや定期的なイベントを始めたりしていたんだ。どれも比較的、地に足の付いた規模だったし、ダンスミュージックというよりはエクスペリメンタルなシーンだったけどね。しかし何かムーヴメントが起きている気はしたんだ。あと、昔ながらのレコードショップ(特にBent Crayon)や、フリーフォームのラジオ局(WCSBなど)といった物がまだ存在している場所に暮らしていたのもラッキーだったと思うね。 今では、シーンの勢いが治まってきた感覚はあるけれど、それは俺がもうそこに住んでいないからかもしれない。それでも、クリーブランドみたいな場所は重要なんだ。なぜなら、人との繋がりに頼ってアーティスト活動をしようとするなら、人はこういう街に来ない。だからこそこういう土地で活動をすると、ちょっと歪んだ効果的な視点を持つ事が可能なんだ。 俺がアーティストとしてどう成長したのかについては、この側面が大きいと思う。けれど、他にも要因はあるんだ。例えば、アカデミックだったりアートな環境で、業界について学んでいた事もある。そして、フィラデルフィアに引っ越してからの数年、自ら廻りと距離を置き、孤立して制作しているのは、楽しくないときもあるけれど、自分の成長に必要な行為だと感じている。 もう8年ほど活動を続けていますが、最近になってテクノファンに支持されるようになってきたと感じます。The BunkerやLabyrinthフェスティバルでの公演もその結果だと思いますが、新しいファン層を獲得した実感はありますか?また、これらのギグは今までプレイしてきたそれとは感覚的に違いましたか? 簡潔に答えると、「ああ、間違いない」だね。LabyrinthもThe Bunkerもすごく貴重な体験ができて、参加できて本当に光栄だと思ってる。まだテクノイベントに完全に溶け込めていないと感じているし、まだ夢を見ている気分だが、普通のエクスペリメンタル系のイベントと比べて、こういう環境で自分の音楽をプレイすると今まで気付かなかったことに気付いたり、獲られなかったものを手にする事ができた。例えば高音質のこだわり抜いたサウンドシステムで音が聴けたり、クラウドが実際に身体で反応を示してくれたり、時計じゃなくてライブセットの中で時の流れを感じたり。「なぜ今までこれをやっていなかったのだろう」って思えるほどの満足感だったんだ。この環境で自分にどんな事ができるのか、そして何を学べるか、今後探求したいと思ってる。 分析するには複雑すぎるし、議論を呼ぶものかもしれないが、現在エレクトロニックミュージックの文化的な立ち位置に非常に興味深い混合が起きているんじゃないかと思うんだ。例えば、Donato DozzyとBen UFOといった、方向性の異なる2人が俺の曲をプレイしていたと去年知って、すごく驚いたんだ。それ以来2人と会い、彼等と話をして、俺の音楽が彼等の世界観とどうフィットするのかを知った。彼等を通して自分の音楽を違った視点で見直すことができて、今後の活動にも大きな影響を与えることは間違いないと思うよ。 制作のプロセスについて教えてくれますか?ニューアルバムは大部分が即興に聴こえますが 俺はいつも複数の曲を平行して作業するんだ。曲どうしの繋がり、過去の曲との繋がり、今持っているテーマとの繋がりを探したり、整理をして物語性を持たせたり、新しいツールや素材を研究したり、後で使えそうな素材をストックしたり。作曲やトラッキング、編集やミキシングを何回もやり直すから、基本的にすぐに曲を作るという事は論外なんだ。マスター音源を渡した人なら全員解ると思うけど、俺の音楽が完成するまでにかかる時間の90%は、「50%完成」の状態が続いてる。 即興に関しては、どちらかというと何かを表現しようと即興で行われたものを部分的に、計算されつくした文脈の中で意図的に配置しているだけなんだ。『When We Were Eating Unripe Pears』の制作を始めた数年前、ライブセットとスタジオでの制作が違ったものになってきている事にフラストレーションを感じていた。だから、自分がライブで行った事を元に曲を作ることにしたんだ。ライブで色々な音の要素を組み合わせていた時に生まれた繊細な模様の多くが、その後のスタジオでの制作に反映されるようになった。即興ではあったものの、それはどちらかというと、必要な増幅という感じだ。未完成のものでスタートして、ライブ環境で音を足していく作業だ。 『When We Were Eating Unripe Pears』について、あなたは「過去のBee Mask作品と比べ、音楽の歴史のより形式ばった発想からヒントを得た」と説明していますが、これはどういう意味でしょうか?過去作品とどう異なると思いますか? ちょっと解りにくい表現だったようだけど、つまり言おうとしていることは、過去のBee Maskアルバムは例えば絵画とか映画、食べ物などといった事をテーマに創り上げられていたのに対して、『When We Were Eating Unripe Pears』は、ライブで行った自分の演奏を元に構築した曲を集めた作品で、より所謂“音楽的”なアルバムだと表現できると思ったんだ。 今回のアルバムを作るに当たって、音楽が他の音楽に与える影響のメカニズムについて深く考えたんだ。そして、昔から自分の中で大きなテーマとしてあった事を改めて再確認する良い機会でもあった。それは、意外と目の前に有益で、面白くて、ヤバイ物はいくらでもあって、世の中の軍備拡張競争を真に受けて、無意味な採掘を繰り返さなくていいという発想だ。特に、そのインスピレーションを吸収するアプローチがだまされさすくて、想像力のない、頑固なものだったらね。俺は、人々が二度見しないような物を良く観察して、誰も見つけていない可能性を見出すテクニックを磨くほうが楽しいと思うんだ。
    『When We Were Eating Unripe Pears』は、Room40からリリースしたEP『Vaporware / Scanops』のほんの1ヶ月後の発売となった。"Moon Shadow Move"という曲が ここで視聴可能だ。 Tracklist 01. Frozen Falls 02. Moon Shadow Move 03. The Story of Keys and Locks 04. Pink Drinq 05. Fried Niteshades 06. Unripe Pears 07. Rain in Coffee 『When We Were Eating Unripe Pears』はSpectrum Spoolsより発売中。
RA