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熱き情熱を持った街、札幌

  • クラブの聖地Precious Hallを筆頭に、この街には自由さと真率さを持ち合わせ、最高の音楽体験を求めて飽くなき探求を続ける人々が存在する。Daisuke Itoが現地を訪れた。

    ダンス・ミュージックを好きな人にとって、札幌という場所に特別な感情を持つ人は少なくないだろう。今年、25周年を迎えたクラブの聖地的な存在でもあるPrecious Hallをはじめ、独創的な音楽を創作しつづけるKuniyuki Takahashi、現在は東京を拠点とするハウスのベテランDJ Nori、さらには国内ヒップホップ・シーンにおいて、カリスマ的な存在感を放つTha Blue Herbらを始め、個性的なアーティストたちを数多く輩出している。

    札幌の人口は約200万人、日本の都市人口順位は第四位という大都市だ。碁盤の目のように構築された中心部には巨大歓楽街のすすきのがあるほか、中心部から電車やバスで数十分離れると、観光名所でもある藻岩山ロープウェイがあり、スキー場も併設されるなど、大都市でありながらも豊かな自然に触れることができる。筆者がこの特集のために最初に札幌を訪れたのは2月の上旬、恒例の雪まつりが開催される真冬の時期だ。後述するが、札幌発のレーベルSynapseに加えて、音楽・カルチャーを発信するカフェ/スペースのProvoを経営する吉田龍太氏と合流し、Salon タレ目、Plastic Theater、The Hakata、Precious Hallといったミュージック・スポットへと足を運んだ。

    Salon タレ目は新規の飲食店がひしめくすすきのエリア「M's ビルヂング」の一角にあるミュージック・バー。独特の雰囲気がある内装に加えて、かかる音楽の音量感もちょうど良く、居心地の良い空間。週末ということもあって満席だったが、ライブやDJイベントなども行っているようだ。続いて足を込んだのは札幌の老舗クラブPlastic TheaterとThe Hakata。この日は前者でベース・ミュージック系のイベントが、後者ではハウス系のイベントが行われていたほか、札幌発のスピーカー・ブランドであるKannon Soundのサウンドシステムが導入されていて、その鋭角なルックスとは裏腹に丸みのあるサウンドを聴くことができた。そして最後に足を運んだのはPrecious Hall。この日はGerd Jansonがプレイしており、その日のレビューにも記したが、ローカルDJの実力の高さをはじめ、改めて札幌のシーンの濃さを感じることができた。








     





    後日、筆者はKuniyuki Takahashiのもとを訪れた。札幌に生まれ、現在も札幌に拠点を置く彼は、ローカルのアーティストはもちろん、国内外からもリスペクトを集める孤高のアーティスト。長年、札幌のシーンで活動する彼がクラブの世界に触れたのは1980年代の半ばのことと言う。もともと兄弟でインダストリアル・ミュージックのバンドを組んでいたKuniyukiは、兄に誘われてクラブに通うようになった。当時の札幌のクラブ・シーンについてこう語ってくれた。

    「初めて行ったのがSignifieというクラブでした。Signifieでは僕の先輩達がDJをしていて、一日のパーティーではPhil CollinsもかかればThe Art of Noise、あとはガラージ・ハウスなどもかかっていました。Ishidaさんだとボディ・ミュージックもかけていたし、インダストリアル・ミュージックやPIL(Public Image Limited)なんかもかかって。とにかく一晩でいろんな音楽がかかるのが普通で、みんなハッピーで、すごく面白かったです。僕から見てですが、当時だとWall(かつてLarry Levanがプレイしたこともある)なんかはもう少しハウスやロック色が強かった気がしますね。あとは僕的にはヒップホップやロックだとGhettoがあったり、ほかにもコラムやスラム、VIX、踊庫などのクラブもありました」

    Kuniyukiの先輩にもあたるベテランのDJたちが現役で活躍しているのも札幌のシーンの特徴だ。Precious Hallのオープン当時からレジデントDJであり、パーティーMelting Potを主宰するDJ Seiji、Realizeを主宰するDJ Yakko、ConfusionのKeijiといったDJたちは、Precious Hallの25周年を記念する2018年6月のアニバーサリー・ウィークにもラインナップされていた。














    話は遡るが、札幌にクラブ以前のディスコができはじめるよりも前の時代、札幌の空の玄関口でもある千歳にはかつて米軍基地(1975年に閉鎖)があり、そこからソウルやファンクといった米国のレコードが入ってきていたそうだ。米軍が起点となり、最新の音楽が輸入されてシーンが形成されるというのは、1960~70年代の横浜・本牧のそれとも共通点がある。それに加えて、1980年代にアメリカでいち早くLarry LevanやDavid MancusoといったNYハウスを体験した人々が、札幌のクラブWall(現在はPlastic Theaterとして営業)にLarry Levanを招聘したように、その影響をローカルへと持ち帰り、それが現在の札幌のクラブ・シーンの礎となっているのは間違いないが、もともと先進的なものを受け入れる風土をこの街は持っていたのかもしれない。

    ちなみにMusic From MemoriesからリリースされているKuniyuki Takahashi名義の『Early Tape Works Vol.1』に収録されている”Signifie”は、彼が初めて訪れたベニューへのオマージュでもある。そしてKuniyukiにとってもう一曲、札幌のクラブの名を冠した楽曲が”Precious Hall”だ。今年で25周年を迎えるこのベニューは、Kuniyukiにとってはもちろん、札幌で活躍するDJやプロデューサーにとって、大きな影響を与え続けている。Precious Hallの関係者たちがメディアに出ることは希なため、そのヴェールはこの場所に通う人以外には謎に包まれている。そのためKuniyukiもPrecious Hallのことついては言葉を慎重に選びながらも、愛情に溢れる口調で語ってくれた。

    「Precious Hallのことを言葉で表すのは難しいです。本当のことを言うと、音楽に言葉は必要ないというか。いろんなスタイルのクラブがあるけど、僕が感じるのはPrecious Hallは音楽と人を本当に大事にしている場所。僕もPrecious Hallで人生が変わるくらいの体験を何度もしていて、例えば音楽でフロアが爆発的に盛り上がる経験って、その瞬間でしか体験できない奇跡みたいなもので、言葉にはならないもの。そういった体験のおかげで、自分がこれでまたがんばれるという気持ちにもなる。そこから自分のアクションも生まれるし、それが僕がPrecious Hallから得た大切な糧になっていると思います。音っていうのは、鳴っている場所でしか体験できないもの。そのなかでもPrecious Hallは音楽にとって大切な環境を追求していると思います。また、Fill More Northの頃に設置されていたサウンドシステムは別のフロアに置かれていますが、あのシステムで音楽を聴くと、音が持つ空間だったり、幅、高さ、奥行き……レコードに書き込まれているすべてが表現され、本当に聴こえてくる音が変わってくる。それはもちろん自分が音楽を作るときのリファレンスにもなっているので、音楽に対する姿勢が変わると、音の聴き方はもちろん、作る音も変わると思うんですよね」
     
    Kuniyukiの言葉にもあるよう、最高の音楽体験を求めて飽くなき探求を続けているからこそ、札幌のダンス・ミュージックのシーンは非常に高いクオリティを保っているのだろう。「札幌の独自性はジャンルではなく、シーン全体が持つ自由さだと思う」と語るKuniyukiの言葉は、同地のシーンの特質をうまく言い当てている。先述したヒップホップ・グループ、Tha Blue HerbのIll-Bosstinoはハウス・ミュージックからの影響を公言しているほか、Precious HallにてCloud 9のKaniとともにI&Iというパーティーを開催し、ジャンルに囚われない音楽を提示している。またそれ以外に、Tha Blue Herbが主宰するレーベルTha Blue Herb Recordings (TBHR) では、札幌で活躍するさまざまなジャンルのアーティストの作品をリリースしている。そのなかでもここで取りあげたい1人がNaohito Uchiyamaだ。TBHRから2002年に1st『Directions』をリリースして以降、札幌を拠点に活動を続ける音楽家だ。もともとはパンク・バンドのギタリストとして活動し、クラブよりもライブハウスに入り浸っていたが、Aphex TwinやJesus Jonesといったアーティストの影響もあり、エレクトロニック・ミュージックを志すようになったという。流麗なコード・ワークや心の琴線に触れるメロディを持った独創的なサウンドを展開する彼は、Precious Hallからの影響、そして札幌のシーンについてこう語ってくれた。






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    「Precious Hallができたのが18歳くらいのときで、あの場所にはすごく影響を受けていますね。僕にとってはクラブ=プレシャスだったから、同じ機材を使っていろんな音楽を作ろうとするのと同じで、あの場所でどうやって楽しむかみたいな感じがあった。つまりマインドの問題というか、まわりが変わらなくても、自分の気持ちのなかから変えていくというか。でも、そういう気持ちって、札幌で音楽をやっている人たちはみんな持っていると思います。狭い町だからこそ、自分たちのなかで盛り上がっていかないと。ヒップホップだろうとエレクトロニックだろうと、音楽プロデューサー同士はジャンルに関係なく繋がっているし、何かを作ろうとする人も多い町なのかなと思います」

    Kuniyuki TakahashiやNaohito Uchiyama以外にも、札幌をはじめとした近辺にはMatthew Hayaやmfp、Jelousguyといったアーティストが活動している。そんな北海道の気鋭のアーティストたちを紹介し続けているのが、札幌シーンの重要拠点であるProvoと、同店が運営するレーベルのSynapseだ。Provoは音楽やアートを発信するショップとして2003年にオープンし、2010年にカフェ/ラウンジ/バースペースとして創成川沿いへと移転し、現在に至っている。ダンス・ミュージックのイベントからバンドのライブ、アート系のイベントまで幅広く手掛けているため、音楽やアートに携わる札幌の住人をはじめ、さまざまな人々が集う場所だ。レーベルのはじまりについて、代表の吉田龍太氏が説明する。

    「最初はテクノのパーティーの名前でした。自分もPrecious HallであったLinkっていうテクノのパーティーで遊んでいたり、札幌のキリンビール園で開催していた“& Beyond”っていう1,500人規模のパーティーが2000年から5年間開催されていて、ハウスの日とテクノの日があって、Juan AtkinsやJeff Millsなどを体感しました。気がついたら音楽が好きな人しか回りにいなくて、テクノも好きだったから、そういうつながりをイメージしたのが“Synapse”って言葉でしたね」

    パーティーとしてのSynapseでは2006年にJames Holdenを最初に招聘してから、Afuken、Mathew Jonson、Ritchie Hawtin、Steve Bugといったおもにヨーロッパ勢のプロデューサーやDJたちをアクトとして抜擢していく。また、レーベルとしての活動は、Naohito Uchiyamaの2ndアルバム『The Sun Also Rises』のリリースが発点となった。レーベルの運営に加えてProvoとして十数年、札幌の音楽シーンを見続ける吉田氏は、Uchiyamaと同じような意見を述べる。

    「シーン自体が大きくないぶん、例えばテクノ専門のハコというのもないし、細分化されていないぶん、いい意味でオリジナルなものにはなると思います。ジャンルが違っていても、アーティスト同士でのヨコのつながりが強いのも特徴ですね。街のサイズ感がちょうどいいというか、都市としても広すぎないし、みんなが集まりやすい距離感だから、遊びやすいんじゃないかな。だからこそ、Synapseでリリースしているジャンルレスなコンピレーションもできると思います」

    Synapseより2017年にリリースされた『emergence xx』には新旧の音楽家たちの楽曲がまとめられており、KuniyukiやUchiyamaといった北国的な静謐さと緻密さを持ったエレクトロニック・サウンド、Matthew Hayaの電子音楽名義Matt Hykerやmfpの洗練されたビート・ミュージック、Sofhesoの骨太なテクノ、Jelous Guyのジャジィでアブストラクトなビートなど、いずれも高いクオリティの楽曲が揃う。吉田氏は本作について「寒いところの音楽っていう感じはありますね」と言うが、少し緩めのBPMだったり、繊細で煌びやかなシンセサイザーの音色などは、札幌をはじめとした北海道在住のアーティストたちの独自性と言えるのかもしれない。















    ここまで札幌のシーンにフォーカスしてきたが、近年は札幌以外の北海道の各都市でも、ダンス・ミュージックのシーンが活性化している。北海道の第二都市でもある旭川には、優れた音響環境でNina KravitzやDJ Harveyといったビッグネームも過去にプレイするクラブのBassmentのほかにClub Brooklynなどがあるほか、札幌の近郊でもある苫小牧にはClub Roots、道東の都市・北見にはUnderstandといったベニューがある。いずれも音響サウンドにこだわりを持ちながらアップデートを続けており、各都市同士のつながりが見られるようになったと、吉田氏は説明する。

    「ここ4~5年で北海道内の都市間の行き来が増えてきました。苫小牧、旭川、北見のシーンってこれまでは個々で完結していたけど、ここ数年、それぞれのシーンにいる人たちが他の都市でもパフォーマンスしたりするようになって、そうやって人が動き出すと、流れが生まれるというか。僕らのSynapseも道内ツアーをやったりしています。北海道のダンス・ミュージックのシーンでこういう流れって、これまでにあまりなかったので、今後はもっと面白くなると思います」

    今回の取材に当たり、筆者は寒さの厳しい冬に3度に渡って札幌を訪れた。そのなかでもっとも印象に残っているのは、Precious Hallの音を含めた居心地の素晴らしさであり、雪が降りしきる寒い環境にも負けず、音楽が好きで活動を続ける人たちの情熱の強さだった。Uchiyamaも「みんな純粋で真剣で仲間の絆が強い。同じ年頃の人でもずっと遊んでいる仲間が多いし、それと一緒に若い子も遊んでいるということが普通にあります」と、シーンにいる人々の熱さについて語っていた。各アーティストや関係者への取材以外にも、Precious HallやProvoなどをはじめ、行く先々で知り合った多くのローカルDJやアーティストたちと、音楽について朝まで語り合ったのは、札幌に住む人々の熱さゆえんだったのかもしれない。最後に、Kuniyukiのコメントでこの特集を締めくくりたい。

    「僕は日本って雑食な文化だと思っていて、音楽においてもそれは同じ。例えばベルリンのテクノのように、日本の一都市が特定のジャンルを生み出すというのは難しいかもしれない。でも、日本人が持っている何かを大切にする気持ちは、すごく大きな力だと思うんです。例えばそれが札幌だとPrecious Hallのように、いろんなものを削ぎ落として大事にしているクラブって世界の中でも、別のものだと思います。自然体に音楽のことを大事にしていて、そういう気持ちの強さのようなものは、札幌ならではの独自性なのかなって思いますね。そして、僕にとって札幌は音楽を感じるという意味では適した場所。モノ作りをする時間もあるし、自分がここにいる理由はそれなのかもしれません。でも、北海道は東京に比べたらそこまで仕事が選べるわけでないと思うので、ある意味では厳しい環境かもしれない。生活していくのにお金がいるのはどんな場所でも同じですが、その中でも自分の音楽はもちろん色々なアーティストなんかも、想像をカタチにする時間と場所を持つ余裕があるのかもしれませんね。あと、北海道は冬の寒さが厳しいけど、個人的にはそれがまたいいんです。外に出られないぶんこもれるというか、その間に自分がやりたいことを考えられるし、それをカタチにする時間があるんです」


    • 文 /
      Daisuke Ito
    • 掲載日 /
      Wed, 28 Nov 2018
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