Sherard Ingramは、聴力テストを受けたいのだという。彼はそう告げると、ベルリンのローゼンターラー・プラッツ近くのベトナムレストランで、僕の向かいの長椅子に滑り込むように座った。店内は仕事帰りの人々で賑やかだったこともあり、僕がインタビュー前に始めた雑談を聞きとるのに苦労したようだ。「さすがにそろそろ受けたほうがいい頃合いだろう。何故かって、プレイするようになる前はこんなことはなかったから、これは警告ってとこだな」。

プレイする、というのは、定期的にDJプレイをするという意味で言っている。もちろん、彼自身は80年代後半から活動しているわけだが、DJキャリアにだけ関して言えば、軌道にのったのは最近であり、ヨーロッパ中はもちろん世界中を飛び回っている。「楽しいもんだよ」と、アメリカ中西部風のゆっくりとした訛りで言う。「何ができるかって考えるのは楽しいよ。洗車したり、床を掃除したり、何でもだ。（DJプレイができるのは）いいことだから、文句を言う気も起こらないし、これからも続けていけたらいいと思っている」。心地よい4月の宵の口、レストランの外で風に吹かれる中、彼は話しながらも目をちらちらと動かし、近所の食堂の様子を伺っている。そしてとうとう、話の途中で「あそこにいるのDr. Rubinsteinだよ！」と言いながら窓を叩いたが、当の彼女にはその声が聞こえなかったようで、そのまま通り過ぎていった。

多くの人は、Ingramのことを彼の目元だけでしか知らない。トレードマークのバラクラバ（目出し帽）から覗く目。このバラクラバと、彼のアーティスト名のDJ Stingrayは、DrexciyaのJames Stinsonからの贈り物だ。彼の目は、顔全体の作りとは不釣合いに、親しみやすい雰囲気があるが、その一方で少し落ち着かなげでもある。この日の待ち合わせにもおよそ1時間以上遅れてきたが、忘れてたんだ、と彼は言った。もちろんそれは本当の事なんだろうと思うが、そのせいで何度かインタビューがお流れになり、この日まで数週間ほどを費やすことになってしまった。

もちろん、インタビュー中は不本意そうな雰囲気などまったく見せることはなかった。彼は礼儀正しいし、率直だ。しかし、何十年にもわたり”知る人ぞ知る存在”であったIngramにしてみれば、彼にとって実質初の商業ミックス作品となるTresorの『Kern』シリーズのリリースに伴うこのところの動向に、辟易してしまっても不思議はないだろう。プレス記事、写真、そしてスポットライトの当たるアーティストに寄せられる期待。「このプロジェクト全体が、自分には、見知らぬ水辺で泳ぐような（不慣れな）ものだった」。後日、彼から送られてきたメッセージにはそのように書いてあった。

最近ではようやく、この”見知らぬ水辺”の泳ぎ方にも慣れてきたようだ。彼のホームタウンはデトロイトで、この街のセカンドウェーブと呼ばれる綺羅星のようなアーティスト達、すなわちCarl Craig、Anthony "Shake" Shakir、Kenny Dixon Jr.、Drexciyaらと長年にわたり仕事を続けた場所であり、またそうした綺羅星達の影になり、自身の存在をしばしば覆い隠されていた場所でもある。「彼らとは同世代なのに、なんだか随分自分だけ若いようで、変な感じがする」と彼は言う。「何故かって、彼らを畏れ敬っているけど、すごく近いところで色々教わった間柄でもあるから」。

2010年代に入り、Ingramの独特な才能が改めて国際的な注目を集めはじめたことで、彼はベルリンへと呼び寄せられることとなった。彼はこの街からヨーロッパ中、そして世界中のクラブやフェスティバルに赴き、大復活を遂げたサウンドであるエレクトロと、直情的でスピードの速いDJスタイルを提示し続けている。「観客がこれまで一度も聴いたことのない音をプレイしようとしているから、結構なプレッシャーだ。彼らは毎週末出かけるだろうし、もしかしたら週二回も出かけてるだろうけど、僕が選んでプレイするレコードは聴いたことがないものにしたい。それが今感じているプレッシャーなんだ」。

数ヶ月前、Ingramは満員となったBerghainのステージに立ち、その日の一枚目のレコードをかけようとしていた。CTM期間中の木曜日の夜に行われたイベントでのことだ。全観客の視線は彼のその長身の姿に集まっている。レコードの針をドロップすると、なんとも不気味で偏執的なメロディがフロアいっぱいに広がった。その静止状態はほんの少ししか続かず、わずか2分後にはバンギンなテクノに切れ目なく移行しており、すでにBPM140に達していた。Ingramの目は激しく踊り狂うダンスフロアを左右に揺らめいていた。

そこから3時間にわたり、この熱狂は止むことがなかった。控えめなテクノトラックが急加速されたプレイによってひきつったような音を発し、ストレートなリズムがバラバラになっては歪んだエレクトロの様相を呈し始める。トンネル状のヴィジョンのように連なるループがKraftwerk風のメロディに燃え上がるような印象を与える。Ingramが後日教えてくれた話によると、あのセットの長さはかなりのチャレンジだったとのことだ。彼は尋常ではないスピードでミックスし、約2分毎に新しいレコードを置き、たった4小節の間にフェーダーを上げては外科医のメスさながらの鋭利なクロスフェードをかますというビートマッチングで、疲れてきたダンサー達に喝を入れる。延長戦に突入してもこの濃密さは続いていき、費やしたレコードの枚数は言わずもがな、莫大だ。それでも、この方法こそが、彼自身が満足できるミックスを達成するための唯一の方法なのだ。

「『おい自分、ここはひとつやってやろうぜ』って感じだ。いざレコードが鳴りはじめたら、もう後には退けない。タバコも吸わないし、飲み物を飲むにしたって、顔のマスクをずり上げるわけにもいかないし、それならもう次のレコードをかけるほうがいい。わかるだろ、とにかくエキサイティングにやりたいんだ」。

Berghainのクラウドにとっての「エキサイティング」とはおそらく、1時間に10枚程度テクノのレコードが流れることだろうと思うが、IngramのDJ感覚はそれとは全く別の種類の「エキサイティング」から作り上げられたものだ。90年代初期、Ingramは荒くれ者の集うモーターサイクル・クラブ（訳者注：バイク愛好家チームと、チームが拠点とする建物の両方を指す。ここでは後者）として知られたThe Outcastで2年間レジデントDJを務めた。「相当ガラの悪い場所だった。ベストを着てると店内には入れなかったんだ（訳者注：ベストに武器などを隠して入店しないようにするための意）」。Ingramはテクノヘッズだったが、客はもっと俗っぽい雰囲気の西海岸系エレクトロやマイアミベースを求めていた。そこで彼はかなり大胆な手段に打って出た。手持ちのテクノのレコードを速いピッチでプレイし、高速でミキシングすることで、誰の予想だにしなかった俗っ気のあるサウンドとリズムをダンスフロアに披露したのだ。

「テクノのトラックを長々とプレイしようとすると、客がいなくなる。だが、もし手早くプレイして、そこに2 Live Crewの曲なんかをミックスすれば、客を盛り上げ続けることができた。街育ちの黒人のキッズ達が、純然たるヨーロッパ産アシッドチューンの”Jesus Loves The Acid”で大盛り上がりだよ。いわゆるレイヴチューンでね。Human Resourceの”Dominator”なんかも、たまにプレイしていたな」。

The Outcastで、IngramはKenny Dixon Jrと共同でレジデントを務めていた。2人は近所で育ち、Dixonは80年代中ごろにはDJプレイに夢中になっていた。すぐに2人はスタジオで共同製作をするようになる。Ingramはそれまでも断続的に楽曲製作を続けていたが、友達頼りの製作だったり、機材も、当時働いていたレコードショップ Buy-Riteからの借り物という有様だった。90年代中盤には、Urban Tribe名義でMo' Waxからリリースしたアルバムを製作した。Carl Craigは彼にPlanet Eスタジオの鍵を渡し、防犯アラームのコードも教えてスタジオを貸し出したが、Ingramはすっかりプロジェクトに対しておじけづいてしまった。

「何ヶ月もの間、ただ座り込んでは『どうすればいいかさっぱりわからない』という状況になっていた」。そこでまず、また別の友人であるAnthony "Shake" Shakirに声をかけた。「20個くらいはトラックがあったんだけど、僕は『頼むShake、助けてくれ』って感じだった。それで彼はスタジオに来てくれて、トラックにパーツを加えてくれた。そしてKen（Kenny）にも声を掛けたら、トラックを1つ提供してくれて、ミックスもやってくれた。そしてCarlが来たんだけど『おお、これぞUrban Tribeだな!』だって」。

1998年のドリーミーなダウンテンポLP『The Collapse Of Modern Culture』から、ShakeとDixonとCraigがIngramの指揮のもとに製作する、コラボレーションユニットとしてのUrban Tribeが誕生した。このアルバムによってIngramの名はヨーロッパのリスナーにも知られるところとなったが、彼は大西洋を超えてまで自分の音楽のリスナー達に会いにいこうとは思わなかった。

「自分はとにかくレコードを出すことにしか興味がなくて、ツアーをするような野心もなかった。いや、もう少し正確に言うと、Stingray名義の活動をするまでは興味がなかったんだ。知っての通り、（Drexciyaの）Jamesが亡くなったことで、僕も「OK、ここまでだな」とは思った。それでも色んな人がまだ僕にプレイして欲しいと言ってくれたので「OK、もう少しやってみるか」となって、そのまま続けてるうちに、いつの間にか自分も夢中になっていた」。

そこから何年も経ち、Ingramはついに国境を超えた。彼は昨年秋からベルリンに住むようになり、市内のクラブでドリンクを手に、音のヴァイブスを堪能している姿を見かけることができる。「出かけるのは好きだし、シーンの脈動感を感じ取ろうとしてるんだ」と彼は説明する。「新鮮な気持ちでいる必要があるし、だけど自分らしさを守る壁を全てなくそうとは思ってない。若者がなにをやってるか、他のDJが何をプレイしてるかを見ているんだ。その上で、自分なりの表現に基づいたスタイルとセレクションを調整している」。

しかし、これはむしろ逆なのかもしれない。若いプロデューサーのほうが、Stingrayが示す方向についていこうとしている。彼の愛するエレクトロサウンド、デトロイトを経由したKraftwerkの『Man-Machine（人間解体）』の美学、サイボーグが作り出すファンク、パラノイアにレトロキャンプ、こうした音はこれまでもしぶとく生き残ってきた。しかし、ObjektやHelena Hauffといった評価の高いDJ達や、長年、お互いに連携して地下活動を続けていたCentral Processing Unit、Frustrated Funk、Klakson、Shipwrec、Stilleben、Solar One、そしてTRUSTといったレーベルが一気に花開くことで、エレクトロは2010年代に再度、幅広い注目を集めることとなった。

「これは一種のムーブメントだ。もちろんわかってるさ。自分がDJを始めた頃は、自分と同年代向けの音だったけど、今やどこのヴェニューでも若者が来てる。僕にレコードを渡したり、デモを送ってきては、どんな音楽を聴いて育ったかを話してくれるよ。『正直に言うと、テクノは大好きなんです。でもテクノって、全部同じじゃないですか、皆が同じことをやってますよね。だから(エレクトロは)新鮮に感じられるんです』なんて言ってる若者も何人もいたよ」。

（Ingramにテクノとエレクトロの違いは何かと尋ねると、映画『エイリアン』を知っているかどうかと聞かれた。「まず、今、コントロールルームに人がいる。そして海兵隊もいる。エレクトロ、つまり自分は海兵隊だ。テクノはコントロールルームにいるほうだ。どちらも同じチームに属してるけど、やってることが違う」。）

Ingramとデトロイト・エレクトロの関わりには、このスタイルを作り上げた人々とのつながりももちろんあるだろう。「アンダーグラウンドな人々以外は誰も、Drexciyaのことを知らなかった」と、彼は90年代当時のデトロイトについて語る。「でもデトロイトの人は皆、音楽をやっている人をとても尊敬しているんだ。例えば今いる24歳ぐらいの若者達も、デトロイト・エレクトロを未来的だと感じて気に入っている。だから、この音が当時、どういう風に聴こえていたのかを考えてみてほしい。デトロイト・エレクトロはオリジナルなものだったんだ。」

Drexciyaは、Ingramの勤め先だったBuy-Riteにも来ていたし、Ingramも彼らのレコードを市内のギグでプレイしていた。Ingramは、2000年に初開催されたDetroit Electronic Music FestivalにUrban Tribeとして出演したその後、遂にDrexciyaのJames Stinsonから連絡を受けることとなる。「『ヘイ、DJをやってもらえないか？これからツアーがあるから、Drexciyaの”特攻DJ”になってほしいんだ』って。もう『わかりました！』って感じだったよ。そうして彼らとの関係が始まったんだ」。

この新たな仕事に際し、Ingramにはまた新しいアイデンティティが必要になった。「（Stinsonが）『これから君は、DJ Stingrayだ。このマスクを被ってみてくれ』って言って、スキー用の分厚いマスクを渡してきたんだ。それで『えっと、これじゃ暑すぎですよ』となって。彼はDJじゃないから分からなかったんだな。それで皆で警察用品の店に行くと、バラクラバが目に入ったから、僕が『これでいきましょう』って言ったんだ」。

当時、Ingramはまだ一度しかヨーロッパに行ったことがなかった。90年代中頃、Ministry Of SoundでCarl Craigがショーを行った際にMPCのプレイを担当した時のことだ。 2002年、WarpのMagic Bus Tourで、DJ Stingrayとしての初のツアーを行うことになった。

「初のヨーロッパで、最初の数ヶ月は手が震えて仕方なくて、機材をコントロールするのも危うかった。ここに来ている客はみな、音楽通ばかりだと思っていたから、それがすごくプレッシャーで大変だった。アメリカなら、『OK、皆に音を教えてやろうじゃないか』って気持ちだったけど、ここでは自分が何者かも知られてるし、客は音楽に詳しいし、これまで素晴らしいDJのプレイをたくさん体験している。自分にはハードルが高いんじゃないかと思えてきて、ナーバスになってたんだ」。

DrexciyaはStinsonの逝去に伴い2002年に活動を終えたが、DJ Stingrayをブッキングしたいというプロモーターからの声は止むことがなかった。「当初はほとんどイギリスからのブッキングで、とてつもなく、すさまじい勢いだった。会場に入れば満杯だし、僕の背中に触っては叫んでる客もいる。『オーマイゴッド』って、思わず鳥肌が立ったよ」。

StingrayのDJとしての運の流れが完全に変わったことで、彼の音楽も変わってきた。製作意欲も跳ね上がり、2000年代中盤にはUrban Tribeとして、新しいアルバムを2枚発表。これまでのドリーミーなダウンテンポから、狂乱のエレクトロへと変化した。Ingramに言わせれば、この変化は偶然の発見によるものだったという。「FL Studio 3を初めて使ったのは友人の家だった。自分より15歳は若い友人なんだけど、彼自身はFL Studioを何となく使ってるだけだったから、どう使うかはあまり知らなかった。それで僕が使ってみたら、1日でビートが7つもできたんだ」。

ツアーを終えて帰宅後、まずは海賊版をダウンロードした。「これで色々と変わったんだ。スタジオの時間の予約をする必要もないし、音楽製作を民主的なものにしたソフトだと言える。誰かからドラムマシンを借りたり、機材がないからってわざわざ(スタジオに)出かけては、4000ドルも使うこともない。どのチャンネルにもエフェクトをかけられ、独自のオートーメーションもできる。パワーを手にしたよ」。

先述のUrban Tribeのアルバム2枚は、デトロイトの仲間の手を借りずに作られた。今振り返ると、その名義を使わなければ良かったと思っているそうで、その後に発表した作品からはDJ Stingray名義を使っている。特に2009年からは、ブリュッセルのWéMè、ウィーンのPomelo、イギリスのUnknown To The Unknown、アイルランドの[NakedLunch]、そしてイタリアのPresto!? といったレーベルからリリースしたトラックは、緊密なマシンファンクと、おぼろげな陶酔感、パーカッシブで攻撃的な音を行き来するような、斬新なアイデアにあふれている。

Stingrayはすでに何十年もキャリアを築いているにも関わらず、未だに自身のスタイルを発展させ、豊かなものにしようと努力している。が、彼の目線で若手のエレクトロのプロデューサーを見ていると、そういった気概が誰にでもあるとは思えないようだ。もちろん「新しい作品が沢山発表されてるのは素晴らしいことだね」とは言っているが、同時にこうも言っている。「今のエレクトロのトレンドとしてだけど…要するに、彼らはただ80年代をやり直してる。そういう古いお決まり事に囚われるのはやめにして、21世紀らしい音をやろう。心を解放しよう」。

以前はIngram自身も、エレクトロとして認識されるのを憚っていたところがある（彼のFacebookページにはこうある。『問題はいつも”エレクトロ”という言葉から始まる』）。とはいえ、その姿勢も、彼自身の功績とキャリアを大切にしたいという流れの中で和らいできたようだ。多くの人にとっては、Stingrayという名前自体がエレクトロと同じ意味になりつつあるだろう。彼は今では、自身のことを『このジャンルの長老』だと思っていると教えてくれた。

「去年、そして今年と、若者がクラブに来てエレクトロで踊り、エレクトロをプレイし、そして愛してくれていることが、自分の中での勝利だと思っている。シーンを牽引する力の甲斐もあって、だんだん根付いてきた。エレクトロは遂に根付いたんだ。これからはより拡張し、深まっていくだろう。これは勝利だよ」。

Ingramが手がけた『Kern』のミックスによって、この成功はより確かなものになった。StingrayのDJに馴染みのある者にとっては今更特に驚くようなことではないだろうが、このレコードは、彼のサウンドや、数十年の内に鍛えられた超速のミキシングスタイルなどをよく表したショーケース的作品になっている。正統派アーティストのトラックがたっぷりとフィーチャーされ、DrexciyaのGerald DonaldによるプロジェクトDopplereffektの、Kraftwerk愛に溢れたトラック"Scientist”がオープニングを飾り、最後はDrexciyaの"Cascading Celestial Giants”で幕を降ろす。

また、当時と今の空気感の近さも浮き彫りにしている。Outcast club時代の定番曲だったProfessor Xの1989年の曲"Professor X (Saga)”が、Gesloten Cirkelのアンセム"Submit X”と出会い、Herva、LoneLady、Christopher Josephらの新作トラックなどと継ぎ目なくブレンドされている様は、Ingramが過去にデトロイトにあった気概を、これからの未来にも大事に連れて行こうとする様と交差する。『デトロイトの電子音楽のアーティスト達が残してくれた功績を大切にする』というのもなかなか荷が重いものだと、Ingramは語ってくれた。

一連のプロジェクトにより、Ingramはヨーロッパに渡り、多くの困難と対峙することになった。しかしそこには膨大な数のチャンスもあり、彼自身と、そして彼の故郷の功績をより明解にすることができた。「こうなったら最後までやりきってやろうと思っている。そこにチャンスがあるなら、引き下がる理由なんてないだろう。自分には子供もいないし、特にデトロイトで果たさなきゃいけないような事もないんだ。ベルリンが好きだし、ベルリンの人々も好きだ。ここは国際的だよ。チャンスがある場所こそ、自分がいるべき場所だ」。