

2016年、最も多くの心を掴んだライブアクトたち。
- たった6つのギグでこのリストにランクインできるアーティストは少ない。しかしまた、Larry Heardのようなアーティストはそもそも少ないのだ。アメリカを代表するスターである彼は今年20年ぶりにライブを行い、素晴らしいハウス・トラックスを次々とプレイして、彼を生で見ることができた運の良いファンたちを歓喜で満たした。
- 去年リリースされた素晴らしい作品集が今も話題になっている寺田創一は、今やクラブやフェス・シーンの人気者。オーディエンスの熱愛を浴びながら”Do It Again”や”Low Tension”といったヒット曲をかけていく彼のライブは、その派手なシャツと茶目っ気たっぷりのモミアゲ同様に、遊び心に溢れていた。
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20.
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19.Surgeonは今年DJをしておらず、彼のパフォーマンスは全て即興のライブセットであった。彼はモジュラー・シンセを用いて、破壊力抜群のテクノを構築した。Buchla Music Easelを用いて音の色調を探求し、さらにLady Starlight、Blawan、Denial Beanらとステージ上でコラボレーションをした。そして嬉しいことに、今後RegisとのBritish Murder Boysが蘇生されるというニュースの発表もあった。彼のライブの内容は毎回違ったものになったが、ひとつだけ共通したのは、品、そして熟考され尽くした丁寧さ。それは、このテクノ・レジェンドの名前があるもの全てに共通することである。
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16.高い評価を集めたアルバム『Sirens』の楽曲をもとにしたNicolas Jaarの今年のライブは、半分コンサート、半分ダンスパーティーであった。自身の声と、いくつかのシンセを活用した彼のショウは、いつレイヴ化してもおかしくない程の興奮を伴った。彼はこのリストに登場するのが今回で連続5回目であり、うち3回はトップの座を獲得している。2014年と2015年はバンドでのライブやDave HarringtonとのDARKSIDE名義のライブを行っていた彼だが、今年はソロアクトとしてステージに立ち、これまでにない魅力をアーティストとして放っていた。
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15.Mathew Jonsonがシンセサイザーで遊び始めたとき、彼は9歳であった。それから30年経った今でも、彼は変わらず少年のような心でシンセで遊んでいる。彼は機材ハンティングのためにeBayで何時間も費やしてしまうような人であり、RA Sessionsに出演してくれた際には、ただ場を盛り上げるためだけに楽しいオモチャをたくさん持ってきてくれた。あるときはベルリンが誇る最高峰のスタジオでアンビエント・トラックを作り、またあるときは豊潤でサイケデリックなクラブ・ミュージックで世界中のダンスフロアの心を奪っているJonsonは、音楽にとても真摯に向き合っている人でもある。
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10.VrilのBoiler Roomを見ているところを両親に見られたら、カルト宗教にでも属したのかと誤解されてしまうかもしれない。ドイツ出身の彼のセットは、仮面をかぶって「DYSTOPIAN IS WATCHING YOU」と書かれた黒のTシャツをきたクラバーたちにかこまれて暗闇の中で繰り広げられ、その様子が巧妙に多角度から撮影されていた。そしてサウンドトラックは、深遠で容赦のないテクノ。Vrilはこういった環境で輝くアーティストであり、今年、こういった場で更なる人気を博した。理由? それは、彼のアーティストとしてのアイデンティティにある。異世界から届いているかのようなサウンド、そして神秘性を纏った存在感。それは、テクノのエッセンスそのものなのである。
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9.ブロークンビート、ダウンテンポ、コンテンポラリー・ジャズ、レフトフィールド、クラウトロック、サイケデリック・ロック…Floating Pointsの2016年のシングル「Kuiper」のDiscogs ページに書いてあるジャンル名は少々大袈裟だが、彼の音楽がどれほど幅広いのか十分に伝わってくるだろう。去年、Sam Shepherdは多様な音楽性が共存したアルバム『Elaenia』(RAの2015年第1位のアルバム)を発表し、16人ものミュージシャンを引き連れたライブで多くの人々に感動を与えた。今年、彼はバンドを連れて世界各地を忙しなく廻り、これまで自身が吸収してきた膨大な音楽を、色鮮やかで一貫したひとつのショウにまとめ上げることが可能であることを証明した。
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8.心を動かすシンセ音を兼ね備えた推進的なハウスが、David Augustのシグニチャー・サウンドと言えるかもしれない。しかし派手な音像に惑わされずよく見てみると、彼は細かいニュアンスを大事にしながら、スケールの大きいアイディアを表現するミュージシャンであることがわかる。彼は2017年の前半にドイツの録音技師の資格Tonmeisterを取得する予定であるが、環境音の散りばめ方や協和音の滑らかな重ね方などに、すでに彼の技術の高さが現れている。轟くような低音が彼の作品の特徴であることは変わりないが、Augustの音楽はもはやダンスミュージックという枠組みにとらわれずに拡大を続けている。
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7.Burden兄弟は自身のライブ用の機材一式を「The Mothership」と呼んでいるが、それもそのはず。奇妙なボタンやライトを装備した彼らのマシンは、デトロイトの先輩George Clintonの宇宙船のごとく、地球人にピュアなファンクのメッセージを伝えるために存在するのだ。ふたりはアンダーグラウンド・クラブから大規模フェスまで様々なステージに立つが、彼らのクラシックなデトロイト・テクノ・サウンドはヘッズにもカジュアル・ファンにも幅広く受け入れられる。
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5.2015年は"What's A Girl To Do”が大ヒットした年であったが、2016年はそんな彼の他の一面を披露する絶好のチャンスとなった。Bas Bronはリイシューされた前述のアンセム(去年RAで1位のトラック)と、その後に続いたアルバム『Imaginary Lines』をバネにヨーロッパ・ツアーを敢行した。巨大なステージ(Glastonbury)から小箱(Sub Club)まで様々な場所に出演した彼は、目を閉じて物思いにふけたくなるようなトラックと、ダンスフロアを多幸感で包むようなトラックの両方を手がける二面性をしっかりと提示し、オーディエンスを魅了した。
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1.「Ableton Live時代である現在、“ライブアクト“というのはたいてい、“Liveアクト”を意味する」と、ライターのPhilip Sherburneが以前毒づいていた。ラップトップのみのパフォーマンスでも素晴らしいライブは行われているが、実際、目の前でアーティストが音楽を生成しているのを目撃することには、また違った興奮がある。エレクトロニック・ミュージックでは、他ジャンルと比較すると、そういった興奮を覚える機会が少ないと言える。 KiNKがこれほどまでに支持を集めている理由は、そこにあるのかもしれない。このブルガリア人のアーティストはいくつかのマシンを持って世界を廻り、その場で打ち出すハウス・サウンドで人々を踊らせながら、見ていても飽きないショウを演出する。ドラムマシンを打楽器のように演奏し、キーボードでメロディーを実際に弾き、EQを調節しながら肩を動かし、腰を揺らす。エレクトロニック・ライブアクトというよりは、ワンマンバンドといったほうがしっくりくるパフォーマンスである。KiNKはこのリストにランクインした他のアーティストと比較すると、知名度では劣るかもしれないが、にも関わらず2年連続で首位を獲得している(それまでも長いことトップ5に食い込んでいた)。もしかしたらそれは、彼のショウが面白いからだけではなく、矛盾していると思えてしまう「エレクトロニック・ライブアクト」という言葉を成立させているから、なのかもしれない。