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RA In Residence: Concrete

  • RAが送るイベントシリーズ、『In Residence』。今回は、パリの街にグルーヴを取り戻させたクラブConcreteについてさまざまな角度から紹介する。

    • 01
      In Residence
    • 02
      主要情報
    • 03
      歴史
    • 04
      レジデントDJ陣
    • 05
      クラブを支える重要人物
    • 06
      サウンドシステム
    • 07
      ミックス
    Chapter

    01

    In Residence

    Concrete, Paris

    世界12カ所のベスト・ダンスフロアーでの祝祭



    RAのIn Residenceシリーズは、2016年の1年間を通して世界12カ所のベスト・クラブを巡りながら各地でそれぞれ1ヶ月間にわたってパーティを開催し、クラブカルチャーを讃えようという企画である。クラブという空間は、日々脈動するダンスミュージックにとっての心臓部といってよく、今年我々が巡る12カ所のクラブは各地のシーンを盛り上げつづけている重要なヴェニューである。週末が訪れるたびにクラブのドアは開き、その中ではわたしたちの愛する音楽がプレイされている。

    前回紹介したシカゴのSmart Barに続いて我々が訪れるのは、パリのConcrete。再び活気を取り戻しつつあるパリのクラブシーンにおける原動力と言われているヴェニューだ。セーヌ川沿いに係留された3階建てのボートを利用して作られたConcreteは、終夜もしくは終日を通してフランス国外のアーティストや地元パリのレジデントDJ陣がプレイしパーティが繰り広げられている。今年でオープンから5年目を数えるConcreteだが、パリのクラブシーンはもはやこのヴェニューの存在を抜きにしては語れない。

    各地のクラブへそれぞれ1ヶ月間にわたって滞在するにあたり、我々はそれに連動した特集記事を展開していく。さまざまなメディアを組み合わせ、これらの象徴的なクラブの全貌を捉えていこうと思う。




    Apr 01  RA In Residence, Concrete, Paris
    feat. Veronica Vasicka, Abdulla Rashim, Antigone, Kosme x S3A

    Apr 10  RA In Residence, Concrete, Paris
    feat. Move D, Margaret Dygas, FIT Siegel, Nicolas Lutz, Cabanne, Lowris, Le Loup

    Apr 16  RA In Residence, Concrete, Paris
    feat. Maurice Fulton, Max Graef v Glenn Astro, Mad Rey, Shanti Celeste, Aleqs Notal

    Apr 28  RA In Residence, Concrete, Paris
    feat. Jackmaster, Pit Spector x Ben Vedren


    Chapter

    02

    主要情報

    Concreteの概要

    • 01
      所在地
      69 Port De La Rapée, 75012, Paris, France
    • 03
      オープン年
      2011
    • 04
      サウンドシステム
      Funktion-One
    • 05
      ダンスフロアーの数
      2
    • 06
      キャパシティ
      1200
    • 07
      レジデントDJ
      S3A, Antigone, Behzad & Amarou, Ben Vedren, Cabanne, François X, Lowris, Shlømo




    Chapter

    03

    歴史

    パリはいかにして
    グルーヴを取り戻したのか









    「パリはもはや『光の都』などではない... 夜11時になれば、街はすっかり眠りについてしまう」

    この一文は、2010年にNew York Timesが当時のパリにおけるナイトライフの没落を取り上げた際の記事から引用したものだ。かつて華やかな隆盛を誇ったこの街のナイトライフにとって、まさに死亡宣告を突きつけるかのような痛烈さをともなう一文だが、当時の低迷した状況を鑑みればまったく大袈裟とはいえない。パリという街がエレクトロニック・ミュージックの発展に大きく寄与したことについてはもはや議論の余地はないはずだ。この街はDaft PunkやPépé Bradock、DJ Deepらを育み、フレッシュで刺激に満ちたサウンドがまるで泉のようにとめどなく湧き出てきていた時代が確かにあった。しかし、2010年前後のパリの街は明らかな停滞期を迎えていた。「プロモーターは年寄りばかりになってしまっていたし、どのクラブからもかつてのような賑わいは消え失せていた」と当時を振り返って語るのは、Jeanson Antonin。Antigoneという名義で活動するテクノ・アーティストだ。「当時のパリのナイトライフは、明らかに死にかけていたのさ」

    それから5年後、ずいぶんと状況は好転している。2016年現在のフランスの首都では、素晴らしいダンスフロアーでの体験と簡単に出会うことができる。この街のナイトライフを長らく牛耳ってきた煌びやかなディスコティークは過去の遺物として葬り去られ、今ではフレッシュなレイブやアフターアワーズ・パーティがパリのシーンを彩っている。そして、パリの新世代DJたちは毎週末になるとキラーな音楽をプレイしつづけている。この変化を促した要因はある特定のグループのみの力に限られるわけではないが、その大きな原動力になったのはConcreteの存在であることに間違いはないだろう。セーヌ川のほとりに係留されたボートを利用したこのクラブは、世界的に見ても最良と言えるパーティの舞台となっているのだ。

    ConcreteのレジデントDJの1人であるFrancois Xはこう切り出す。「Concreteで初めてプレイしたその夜から『きっとこれは変化の始まりになるぞ』と思ったものさ。そのパーティは朝の7時から夜中の2時まで続き、最後はMarcel Dettmannがプレイして締めくくられた。このパーティでは最初から最後までクラウドがずっと残っていた。こんなことは今までのパリではまったく考えられなかったことさ。言うなれば、Concreteはパリのクラビングにおいて本物の変換点ってやつを作り出したのさ」

    Concreteの母体となったのはTWSTEDという移動型レイブを手掛けていた3人の友人同士の集まりだったが、BriceとAurélien、そしてPeteと名乗る彼らには実際のパーティオーガナイズ経験はかなり少なかったという(彼ら3人は共にファミリーネームを表に出さず活動している)。「僕らは、ただ単純に世界中を旅しながらダンスフロアーで遊ぶ集団に過ぎなかったし、物事をシリアスに捉えていたわけではなかった」と切り出すのはBriceだ。「僕らはただ、友だちみんなと一緒に好きな音楽を聴いて遊びたいだけだったんだ。その頃のパリはどうにも退屈な場所だったからね。TWSTEDを始めた時の僕らは『もし上手くいけばクールだし、上手くいかなかったとしてもかまうもんか』って感じだったんだよ。でも、いざ2、3回イベントをやってみると小さくない手応えを感じるようになっていたんだ」










    TWSTEDは毎回異なるヴェニューで開催される移動型レイブであったが、パリ市内で良質なヴェニューを見つけることは困難だった。初回のTWSTEDは古い映画館を使って開催されたが、結果は惨惨たるものだったという。「映画館の中をめちゃくちゃにしちゃったんだよ」とBriceは語り、「館内で酔いつぶれた客が残したたくさんの吐瀉物が建物の管理者に見つかっちゃってさ。あわや裁判沙汰になるところだった」と続ける。2回目のTWSTEDは、のちにConcreteとなるボートを使って開催された。偶然にも、そのイベントは2011年にRAがDan Ghenaciaを特集した際の記事で取り上げられたことで思わぬ脚光を浴び、2回目のTWSTEDは大成功に終わった。クルーは3回目のTWSTEDに向け、ある倉庫を使って開催するために動いた。しかし、パーティ直前になってその倉庫の地下から数世紀前の遺跡が見つかり、その場所は発掘調査のために封鎖されることになってしまったそうだ。

    「あれはクレージーな出来事だったね。Facebookで報告したときも、誰もが冗談だと思っていたはずだよ」とBriceは語る。「僕らにはパーティを開催できるヴェニューがどこにも残されていなかったので、2回目のTWSTEDを開催したボートに戻ることになったんだ。2回目のTWSTEDでは大きな手応えを感じていたし、正直なところ毎回新しいロケーションを見つける作業に忙殺されるようになってしまってさ。そこで僕らは『だったら、このボートを正式なクラブにしてしまえばいいじゃん』って考えるようになってね。TWSTEDは2年前にパリ市内の大きな車庫で開催したのが最後だったんだけど、警察が来てしまってパーティは2時間で強制終了されてしまった。そこで、僕らはマイクを掴んでこう言ったのさ。『OK、みんなConcreteへ移動しよう。フリーで入場できるようにするからさ』ってね。で、僕らはそのままConcreteでパーティを続行したってわけ」










    Concreteは急速な成長ぶりを見せた。最初は毎月1回の日曜のみの営業であったが、パーティは午前7時から深夜まで続いた。それからほぼ毎週末に営業するようになり、やがて週に1回は必ずパーティが開催されるようになっていった。クルーはさらに野心的な活動を展開するようになり、Concrete Musicという名のレーベル、Concrete Bookingという名のブッキング・エージェンシー、そしてWeatherという名のフェスまで手掛けるようになった。今では多数のスタッフを抱え、様々な部署が運営されるようになり、設立メンバーの3人はそれぞれ多忙な毎日を送っている。Peteはクラブのカリスマ的な顔役となり、アーティストたちのケアをする傍らで毎夜パーティに最後まで立ち会い、パーティがスムーズに運ぶよう見守っている。AurélienはCEOとして会社全体を代表する立場となった。Briceはクラブの音楽的アイデンティティーを統括する立場としてブッキングを担当し、国内外から著名DJを招くとともに地元パリのアーティストたちに活躍の場を与えている。現在のパリにおけるDJとアーティストのコミュニティにおいて、Briceの尽力ぶりは広く知れ渡っている。










    「僕はBriceに一杯食わされんだよ!」とAntoninは切り出す。「彼に会って、一緒にレコードショッピングに行って軽くおしゃべりしてたんだ。すると、彼が『ところで、今週の日曜日は何か予定ある?』と訊いてきたんだ。僕は『いや、何も予定はないよ』と答えると、彼は『じゃあConcreteでDJしてよ』って言うんだ。いざ日曜にConcreteへ行ってみると、そこには600人ものクラウドがいてさ。僕はそれまでこんなビッグなクラウドの前でプレイしたことなんてなかった。もっと言えば、ちゃんとしたクラブのサウンドシステムでプレイした経験さえなかったんだ。彼は本当に素晴らしい仕掛人だよ。彼はリスクを覚悟で新しいアーティストたちにチャンスを与え、たとえメインストリームから外れた音楽であっても躊躇なく自信をもってブッキングするんだ」

    Concreteの成長に伴って、クラブ自体のクオリティもさらに向上していった。上階にあるデッキ部分はWoodfloorと名付けられ、そこではよりレイドバックしたムードのダンスフロアーが作られ、寒い時期になると可動式のカバーが備えられるようにもなった。ボートのメイン客室であった空間を利用したメインルームではクルーがデザインした特製のDJブースが備え付けられ、Concreteを特徴付けるアイコニックな存在となっている。

    「僕は長年いろんなクラブに通ってきたけれど、ステージのセットアップには一度も満足したことがなかった」とBriceは語る。「どこも大抵似たような見た目でさ。ダンスフロアーがあって、そこから1mぐらいの高さにステージがあって、その上にDJがいるって感じだろ。まるでコンサートじゃん。で、DJの後ろにはVIPゲスト用のリストバンドを着けてバックステージパスをぶら下げた人たちがうようよいたりしてさ。僕は、自分がクラブをやるならもっと民主的な空間を作りたいって思ったんだ。VIPゲストだとか、ステージだとか、そういう権威的なものを排除してね。中でも重要なのは、DJがフロアーで踊っているみんなと同じ目線の高さでプレイできるってこと。クラウドと正面から顔を向き合わせながらね」

    Concreteにおいてさらに興味深いのは、そのDJブースの位置だ。室内空間の奥まった場所にブースが置かれているのは一見通常のクラブと変わらないように見えるが、ブースの両側にはそれぞれ数メートルの広さを持つ空間が確保されているのだ。つまり、クラウドに両側からも囲まれながらDJはプレイすることになるというわけだ。「この仕掛けは一見単純に見えるけど、効果は絶大なんだ」とBriceは説明する。「DJは普段と全く異なる感覚を得ることができるんだ。どこを見回してもクラウドが踊っている姿が視界に入るわけだからね。ステージからフロアーに向かってプレイしている時と違って、周りをぐるりとクラウドに囲まれているから、どれだけの人数がフロアーにいるのかDJは把握しきれない。したがって、まるで自宅のリビングで友だちのためにレコードをプレイしているようなリラックスした感覚が得られるのさ。もはやDJはVIPゲストたちの中に隠れることもできない。クラウドみんなに囲まれるしかないってわけ。こっちのほうがよりパーティっぽくて良いだろ?」










    Concreteが成功した理由を見つけるのは難しいことではない。まず、その雰囲気が独特なのだ。フロアーから天井に向かって伸びる窓の外に目を向ければセーヌ川が流れ、ボートから漏れる照明の灯りが川面に映ってゆらゆらと揺れている。音楽的なポリシーは明確かつオープンなもので、ルーマニア産のドープなミニマルから軽快で爽やかなハウス、バンギンなハードテクノまで多彩なダンスフロアーを提供している。パリのクラバーにとっては、足を運ぶたびに毎回異なる種類のパーティ体験ができるヴェニューなのだ。Concreteでは、常に若くエネルギーに満ちたレイバーたちが思い思いにパーティを楽しんでいる。彼らは大抵オープンからクローズまでひたすらフロアーで踊っている。彼らをそれだけ惹き付けるに値するものが、このフロアーには確かにあるのだ。

    世界の名クラブと呼ばれるヴェニューと同様、Concreteもまたパーティ以上のものをその街に与えているといっていいだろう。Concreteはパリのシーンにおいて非常に重要な影響をもたらしているのだ。「シーンへの貢献は僕らにとって最優先の目的のひとつなんだ」とBriceは語る。「僕らがConcreteを始めたとき、パリに住むアーティストたちはチャンスに恵まれない時期を過ごしていた。僕は、たとえばAntigoneやS3Aのような次世代のパリのシーンを担うアーティストたちをプッシュし、この街のシーンをプッシュしたかったんだ。最大限彼らをプッシュし、良いラインナップの中に彼らをブッキングし、フランスのアーティストたちのために立ち上げたConcrete Musicを通して彼らの作品を世に出すことでね。偶然にも、同じような構想を持っていたのは僕らだけではなかった。僕らがConcreteを通じた様々な活動を展開するのに合わせ、パリでは新しいクルーがどんどん頭角を現し、僕らと同じようにパリのシーンを盛り上げはじめたんだ。例えば、Sonotownのようにね」

    パリの街にグルーヴを取り戻したのは、決してConcreteだけの力によるものではない。これは、Concreteクルーの誰もが指摘する確かな事実だ。単に最初に始めたのが彼らであったというだけのことであり、おそらく最も成功を収めているからに過ぎないのだ、と。Concreteは、彼らのようなやり方がパリにおいて通用することを示し、これを具現化することでパリのシーンを広く活性化してみせたのだ。「僕らがConcreteを始めたころ、誰もが口々に『そんなのクレージーだ、朝の7時から深夜まで営業してずっと客が残っているはずはない』って言っていたよ」とBriceは回想する。「でも、いざ蓋を開けてみるとどうだ? 実は誰もがこういう遊び方を求めていたってわけさ。今じゃこれが当たり前になっちゃったんだよ」










    Chapter

    04

    レジデントDJ陣

    写真紹介

    Antigone
    • Antigone
    • Behzad & Amarou
    • Ben Vedren
    • Cabanne
    • François X
    • Lowris
    • S3A
    • Shlømo
    Chapter

    05

    クラブを支える重要人物

    Pete

    共同設立メンバーのひとり




    Peteはかつてサーカスを運営していた — そう書くとほとんどの人がびっくりすると思うが、実際に彼と会ってみるとその経歴は実に納得がいくはずだ。顔はもじゃもじゃのヒゲに覆われ、目は好奇心でキラキラと輝き、鼻っ柱の強そうなエネルギーが溢れる彼は、いかにもやんちゃなサーカスの旅芸人一座のリーダーのように見える。現在の彼の仕事はサーカス経営と比べると若干ノーマルなものではあるが、それでも彼の特異なキャラクターにはぴったりのものであることに間違いはない。彼はConcreteの創立当初から関わるメンバーの1人であり、彼はクラブマネージャーやアーティストたちの送迎を担当する傍ら、クラブ全体のヴァイブを取り仕切るカリスマ的フィクサーとして君臨している。

    BriceはPeteについて「彼はファニーな奴で、パリの人たちはみんな彼のことを知っているよ。フロアーではいつもクラウドの中に入っていって、誰彼となくウォッカ・ショットを振る舞うんだ。あるいは、出番を終えたアーティストを酔いつぶれさせたりね」と説明する。Peteの名前を話題に出すと、途端に誰もがその表情に笑みを浮かべる。「冗談でもなんでもなく、彼は本当にクラウドの1人1人の顔をみんな憶えているんじゃないかと思うよ。本当に驚きに値する人なんだよ」と語るのは、ConcreteのレジデントDJを務めるFrançois Xだ。

    クラブのオープン前になると、Peteはきまってその日のゲスト・アーティストをビストロへ連れて行き、ステーキとワインを囲みながら他愛もない会話を楽しむ。いよいよパーティのオープン時間が迫ってくると、彼はいつもの仕事モードへ切り替わる。ブースではDJのドリンクが足りなくなるとすかさず補充したり、ドリンクチケットを周囲に配って回る。ダンスフロアーでクラウドの中に友人の姿を見かけると、キスをして挨拶を交わす。彼には数多くの友人がいるので、このルーティンは終始繰り返される。時には、クラブのルール(Concreteではフロアーでの撮影行為は禁じられている)を侵す客に注意をしたりもするのだが、それは大抵の場合ごく柔らかな態度で諌めて終わることが多い。そう、クッキーをつまみ食いする子供に注意するような具合で。フロアーでの彼は、笑ったりダンスしたり親しげな会話を交わしたりと終始忙しいが、彼の突飛な奇行には今もサーカス時代の雰囲気がにじみ出る。最近では、特に理由もなく偽のドル紙幣を撒き散らしながらクラブ内を闊歩し、彼が通った後には偽札の花道ができていたという。

    彼のとめどなく溢れるエナジーの源流を辿るのは簡単だ。「僕の親父は実業家でね。子供の頃から、フランス国内のあらゆる場所やアメリカなどいろんな場所に連れ回されたものさ。パリに住むようになってかれこれ8年が経つけれど、それまではどんな土地に行っても9ヶ月以上同じ場所で腰を落ち着けたことはなかったんだ」と語るPeteは、パリに関してもまだ完全に腰を落ち着けているわけではないという。「いつかこの仕事を辞める時が来たら、おそらくまた別の土地に行って他の何かをするだろうなと思うよ」と言って、彼は一瞬だけ悲しげに肩をすくめる。だが、現在彼がConcreteで務めている役割をすぐに他の誰かが取って代わることなど想像しにくい。Peteという男は、あくまでも自分らしく振る舞うことで自らの道を切り開いてみせた稀有なキャラクターなのだ。Concreteでプレイしたことのあるアーティストは、誰もがPeteのことを忘れないだろう。Peteもまた、Concreteでプレイしたアーティストは誰1人忘れることはないはずだ。

    「もしPeteがいなければ、このボートもはたして存在していたか分からないくらいさ」とFrançois Xは語る。「彼の存在があってこそ、この場所は本当にスペシャルなものになっているんだ」



    Chapter

    06

    サウンドシステム紹介

    Funktion-1



    現在Concreteグループの社長を務めるAurélienは、Concreteを立ち上げるよりずっと以前にJonathan Malaiséという男と出会っている。MalaiséはAurélienと同じくレイバーであり、MagnumやStage Craft Companyといった音響会社に当時勤務していた。90年代の終わり頃になるとAurélienとMalaiséの2人は共にパーティを企画するようになり、Malaiséはサウンドシステム全般と照明を担当していた。2011年、Malaiséは自身でGiglamという音響会社を立ち上げた。Concreteはちょうどそのころに産声をあげたばかりであり、Aurélienは長年の知己であるMalaiséの会社にConcreteの照明とサウンドシステムのデザインを依頼したのだ。Malaiséが特に重要なタスクとして任されたのが、サウンドシステムの構築であった。

    「Concreteのサウンドシステムを構築するにあたり、わたしたちはFunktion-Oneを採用することにしました。Funktion-Oneは当時すでにエレクトロニック・ミュージック業界において確固たる評価を得ていたPAシステムでしたから」とMalaiséは語り、さらに説明を続ける。「Funktion-Oneはパワフルなサブ・ベースの再生能力を持ち、中高域でも高い解像度を誇っています。ボートという音場特性を踏まえ、わたしたちはマルチポイント拡散を使用し、音響特性と解像度を保ちつつ、過度のレベル入力を行うことなくボート全体にサウンドを行き渡らせるようにしました。とりわけ、ボートという特殊な構造内において音場拡散をコントロールすることが主なチャレンジになりましたね。メインルームは非常に天井が低い構造ですので、RES1と5TTをディレイに採用しました」

    Concreteの音響チームは、ここでパーティが行われる時はいつでも時計のように正確に動き回っている。その夜にライブセットを披露するアーティストが出演する際はその機材一式を載せた吊り下げ式のテーブルが天井から下がってきて、パフォーマンスが終わると再び天井に戻っていくが、その様子は何度見ても壮観だ。Malaiséは語る。「わたしたちには、DJブース周りでターンテーブルやミキサー周辺のセッティングを万全に整える専門スタッフが1名います。また、クラブ内でのサウンドのクオリティを管理する専門スタッフも1名います。PA卓はWi-Fiを通じてiPadでの操作が可能になっているので、サウンドや指向性の調整が随時可能となっているんです。そうすることで、ライブであろうとDJであろうと、一晩を通してサウンドのクオリティを一定の高さに保つことができるというわけです。


    Chapter

    07

    ミックス

    Concreteを象徴するサウンド

    重心の低いハウスから135BPMのテクノまで、レジデントDJ陣がConcreteらしいサウンドを提示
    このミックスは何でもないある午後のひとときに、特に気負いなく自分の好きなレコードを選んで次々にミックスしてみたんだ。なぜこんな並びになったのか、そのフィーリングは自分でもうまく説明できないんだけどね。イメージにあったのは、Concreteの朝と夜、あるいはアフタヌーン・パーティかな。それ以外のことはあまり考えなかったかな。Concreteでの時間の流れをイメージして選曲に反映させたつもりだよ。(Lowris)








    僕がConcreteのレジデントDJ陣に加わったのは2012年。その時に唯一Concreteクルーから言われたのは「3時間セットの中で何をやってもいいよ」ってことだった。その日は肌寒かったけれど、良く晴れた日だったな。僕はRon Morelliの後にプレイしたんだ。クラウドの反応も素晴らしくて、非常に居心地の良いヴァイブが流れていたね。

    僕はConcreteを愛してやまない。Concreteクルーは僕をファミリー同然に受け入れてくれるし、ここでプレイするといつだって最高の思い出が得られるんだ。毎回ここではロングセット(最低でも3時間以上)をすることが多く、クラウドと一緒に大きな波を作れる時間がたっぷりとある。アンビエントからディスコ、テクノはもちろん1992年ぐらいのUKハードコア・レイブまでね。このボートでは僕にとってすでにいくつものかけがえのない思い出が生まれた。かのLaurent Garnierと一緒にバック・トゥ・バックしたり、MoodymannやFloating Points、Lil' Louis、Awanto3の前にプレイしたりね。ここでDJすることはいつもチャレンジングだけど、それだけに素晴らしい体験が得られるんだ。(S3A)









    Concreteが与えてくれた愛、音楽、そしてオープンマインドに感謝を。

    このミックスは、同世代のソウルにインスパイアされた僕たち流のテクノにおける入門ガイドといった感じかな。

    21号棟93号室から愛をこめて。

    ピース!(Behzad & Amarou)











    Still haven't got your Concrete fix? You can visit its club profile here, and there's more information on the series via the dedicated In Residence page.
    • 文 /
      Will Lynch
    • 掲載日 /
      Thu, 7 Apr 2016
    • 翻訳 /
      Kohei Terazono
    • Photo credits /
      Header - Roman Boed
      01, Behzad & Amarou, - Rémy Golinelli
      02, 03, 06 - Geo.H
      04, 05, 07, Antigone, Ben Verde - Jacob Khrist
      Cabanne - Lara Kiosses
      Francois X, Lowris, S3A, Soundsystem - Guillaume Murat
      Mix-Pictures - Flavien Prioreau
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