「大好きなニオイのひとつだね。大小便、老人の下着、それに腐ったコロンの臭いさ」Danny McLewinは古いレコードのニオイをこう表現する。そして忘れてはならないのは、彼はそのニオイの元を25000枚所有しているということだ。7年前に共通の友人の紹介でTom Coveneyと知り合ったMcLewinは、Coveneyとの間に多くの共通点を見出し、Psychemagikを結成。お互いにパッとしなかったキャリアをついに開花させることになった。

PsychemagikはこれまでにFleetwood MacからBobby McFerrinまで数多くのエディット作品を生みだしている。またレフトフィールドな選曲と、再構築された楽曲群の魅力によってDJとして各地のフェスティバルに呼ばれ続けており、今年はアメリカの単独ツアーを2回こなし、またオーストラリアやクロアチアなどのフェスティバルにも出演している。この成功は、彼らが最近リリースした隠れた名曲を集めたコンピレーション『Magik Sunrise』の高評価によるところが大きい。このアルバムにはサーフポップからシャンソン、そしてダブディスコまで、様々な楽曲が魅力的な裏話やライナーノーツと共に収録されている。

Psychemagikは数年に渡り無名の状態が続いていた。またWarner Musicと契約していたため、他のレーベルからのリリースが一切できない状況に置かれていた。彼らはCeeLo Greenと同等の未来あるヴォーカリストとして考えられており、Amy Winehouseの『Back To Black』で起用された17ピースのオーケストラと一緒に作業するレベルまで行っていたが、結局上手く行かなかった。レーベル側が支配者のようにふるまうようになり、レーベルとの関係性が崩れてしまったのだ。「上手く行かなくて良かったと思うね。短期間で色々起こり過ぎたし、お互いを良く知らなかった。今置かれている状況はもっと自然に生まれたものだし、あの時よりも多くのことを手に入れられたような気がする」とMcLewinは語る。今回は夏の多忙なスケジュールを縫って地元ケントに戻っていた2人を捕まえ、好きなレコードについて語ってもらった。

Jan Hammer
Don't You Know
1977

Jan Hammerはマイアミ・バイスで知られる“Crickett’s Theme”から入ったのでしょうか？

Danny McLewin: そうじゃない。この曲は約10年前に初めて聴いた。彼のアルバムは何枚か持っていて、この曲が収録されているアルバムは『Melodies』ってタイトルだが、最初に聞いた時は、本当に驚いて椅子から転げ落ちそうになったね。本当に美しい音楽で、歌詞やメロディー、そしてシンセの演奏も最高だ。メインストリームではあるけれど、心に響く楽曲のひとつだ。

この曲で新しい世界が目の前に開けたような、そんな感じでしたか？

Danny McLewin: ああ。あるアーティストを見つけて、そいつの作品を聴いたことが無かった場合は、全曲聴くようにしているんだ。でも素晴らしいアルバムは1枚しかないようなアーティストもいる。

Tom Coveney: インターネットとDiscogsはこういう音楽を探すには本当に欠かせないよ。

Danny McLewin: 俺の掘り方は、アートワークやタイポグラフィー、写真が魅力的に思えたら、まず引っ張り出してみる。それから裏面を見て、演奏者や楽器をチェックする。Moog、ドラム、シンセみたいな楽器がそこに書かれていたら聴いてみるが、ハーモニカやバンジョーなんかが書いてある場合は基本的に聴かない。

Tom Coveney: あとサックスも聴かないな。

Danny McLewin: そうだな。いわゆる「サックス」のサウンドには全くピンとこない。一番嫌いな楽器だ。ちなみに僅差の2位はバグパイプさ。

それは何故でしょう？

Danny McLewin: 単純に酷い音だからさ。

Tom Coveney: 80年代はとにかく上にサックスをかぶせたセックスについての楽曲ばかりなんだ。セックスがテーマのベタな映画はすべてサックスが入ってる。

Danny McLewin: いわゆるブラスが苦手だ。ブラスが上にかぶさってるが故に沢山の名曲が台無しになっている。まぁそこが聴かせどころなんだが。

ブラスを取り除きたいという思いがエディットに繋がったのでしょうか？

Danny McLewin: いや、そうじゃない。俺たちはただループを作る、良いと思えるパートを引き伸ばす、ダメな部分を取り除く、そしてパンチのある音にする。これが俺たちのポリシーだ。古いトラックは基本的には素晴らしいが、最近のトラックとミックスする時は、古いトラックのサウンドを強化して、クラブ用に変える必要があるってことさ。

レコードコレクションは頻繁に整理しますか？

Danny McLewin: いや、俺は聴かずに買うなんてことは滅多にしない。レコードショップに2、3時間滞在して、50枚位を選んで全部試聴する。そうやって時間をかけて新しい音楽に出会うのさ。俺はそれが好きなんだよ。そういう新しい発見は最高の瞬間だね。

テキサスにあるEnd Of An Earって名前のレコード屋に行った時に、自主盤のセクションがあった。個人でプレスした自主盤はかなり面白いし、変わっている楽曲が多いけれど、何せ自主盤だから音が悪い。その中でアーティストの父親の丸太小屋で制作された作品があった。素晴らしいアルバムだった。俺はそういうアルバムを探しているんだ。

つまり、制作秘話や裏話もあなたにとっては重要だと？

Danny McLewin: ああ。俺は完全なオタクだからさ。ライナーノーツは全部読む。この前Magik Sunriseをリリースしたが、ライナーノーツのためにすべてのアーティストに連絡を取ったよ。そういう裏話はいつも楽しみにしているんだ。

Kenny Rankin
I Was Born
1972

この曲に出会ったのはいつのことですか？

Danny McLewin: Ben Hornerという人が20年くらい前にプレイしてくれたのが最初だ。本当にぶっ飛んだよ。美しい曲だった。歌詞は胸を締め付けるようだし、コードとメロディーも本当に凄い。昔の俺はもっとフォークなセットをプレイしていたが、夕暮れ時にこの曲をプレイすると、みんな涙を浮かべて喜んでいた。みんなが楽しめるメランコリックなフィーリングが詰まっているトラックさ。俺たち2人ともこの曲が好きなんだ。俺は彼の作品を6、7枚は持っているね。大ファンなんだよ。

あなたたちと同様、このアーティストも楽曲の再構築を得意としていたようですが、Fleetwood Macの作品をはじめ、エディットするにあたって気が重くなる時がありますか？

Tom Coveney: いや、そういう感じは全くないね。勿論、Fleetwood Macならばビッグヒットな訳だし、気が重くなる可能性もあるけれど、俺たちは単純にダンスフロアだけを意識して、自分たちだけのためにやってきているからね。自分たちが上に登るためにやってるわけじゃないんだ。単純にエディットすることで、みんなが好きなトラックを違う形で届けられればいいなと思っているだけさ。

Danny McLewin: 自分たちが好きかどうか―これが制作に対するモチベーションだ。もちろん他人が気に入ってくれれば嬉しいし、実際気に入ってもらえている訳だから、俺たちはラッキーだと思う。

ライセンス作業についてはどうですか？

Danny McLewin: 『Magik Sunrise』と『Magik Cyrkles』は全曲ライセンスされている。あと、Wang Chungの“Dance Hall Days”のエディットをSoundCloudにアップしたら、本人が聴いて気に入って、俺たちに素材を送ってくれた。それで正式に制作して、彼のアルバムに収録してもらったよ。

Tom Coveney: 実はこの曲は『Wilfred』ってアメリカのテレビ番組で使われたんだ。Elijah Woodが犬と一緒にこの曲に合わせてダンスしてくれたんだけど、クールだったね。

レアなレコードを大量に所有していますが、SoulwaxやThe Chemical Brothersにレコードを売る時もあるそうですね。サンプリングのネタとして買っているのでしょうか？

Danny McLewin: Soulwaxは常にサンプリングのネタを探している。でもレコードコレクターでもあるし、DJセットもかなり幅広い。で、俺もジャンル問わずレコードを集めているし、イタロからサイケディスコ、ボリウッドものまで色々見せてやったんだ。彼らのレコードバッグは常に色んなレコードが入っている。自分たちが気に入っている曲があって持っていなかったら必ず手に入れるような連中だよ。

あなたも最終的にはコレクターの道に進むと思いますか？

Danny McLewin: そうなりたいと思うし、今もインターネットが普及する前には収集不可能だったようなレアなレコードを集めているが、結局はひっかかってくるのは金だけど。David Axlerodで言えば、彼のこれまでの作品をすべて手に入れようとした。彼の作品はプロダクションが素晴らしいんだ。天才だと思う。Kenny Rankinも同じだよ。アルバムを6、7枚一気に買った。ずっと探しているアルバムを見つけた時はもう何とも言えない。本当に長い間探しているからさ。でもレアだからという理由でそのレコードの価値を上げることはしない。他の人はそういうことをやっているみたいだが、俺に言わせればエサ箱に入った1ドルのレコードだって同じだと思うね。

Steeleye Span
The Blacksmith
1971

Tom Coveney: これは数年前に初めて聴いたんだ。俺はそこまでコレクターじゃないからあまり知らないんだけど、これは好きだね。俺はフォークをずっと好きだったし、俺たちは2人とも好きなんだ。でも俺はそれだけなんだ。フォークに出会って、好きになったけれど、バンド名とかは特に詳しくないんだ。

フォークにはまったきっかけは？

Tom Coveney: 両親からの影響だね。両親にいつもプレイしてくれと頼んでいたシンプルなリズムの古いフォークの曲があって、それが自分の中にずっと残っているんだと思う。

Danny McLewin: 実は俺たちは『Morris On』っていうアルバムを通じて仲良くなった。これはモリス・ダンスのアルバムで、アコーディオンを使ったテンポの速いアルバムさ。

あなたたちの作品同様、フォークもヴォーカルが肝ですよね。あなたたちが魅力を感じるのは声でしょうか？　それとも歌詞でしょうか？

Tom Coveney: 全体だと思うよ。この曲のヴォーカルは素晴らしい。Fairport Conventionのようなブリティッシュサウンドだと思う。昔の酒場を思い出すよね。確かこの楽曲にはFairport Conventionのメンバーが参加しているんだ。というのは、当時の彼らは様々なプロジェクトに顔を出していたからね。

Danny McLewin: 大きなジョッキを振り回していたような300年から400年前を思い出させる。昔のイングランドというか。僕たちのルーツさ。

Tom Coveney: 中世というか、過去に連れて行かれる感じだね。

確かにブリティッシュなサウンドだと思います。このような楽曲はたとえばアメリカのような土地でプレイしても通用するのでしょうか？

Danny McLewin: こういう楽曲はプレイしない。2人でフォークのエディット作品を作ろうって話は何年も前からしているが、単純に趣味の作品になるだろうね。人気は出ないと思うが、何人かは気に入るかも知れない。

ではDJではどのようなプレイを？

Tom Coveney: ディスコとハウスだね。スローモーや、ちょっと変わったトラックからスタートする。セットは常に変化していくけれど、今は昔よりコスミックっぽさが無くなったと思うよ。

Danny McLewin: 俺たちは本当に何でもプレイするし、内容は場所によって変わる。大抵は「何でも好きなようにプレイして」と言われるが、自分の前のDJが新しいトラックを中心にプレイしていたら、自分たちが古いレコードをプレイしても馴染まないし、フロアが空になってしまう。DJする時はとにかく人を踊らせることを考えている。常にフロアを人で埋めていたいのさ。

Tricky
Feed Me
1995

何故このトラックなのでしょう。以前からトリップホップのファンでしたか？

Tom Coveney: 10代の頃に初めて聴いたんだ。昔から怖い音が好きだったし、これはトリッピーなトラックだよね。ヴォーカルが本当に凄いと思う。このトラックの持つ全体的なムードが好きだ。Trickyについてはあまり良く知らないけれど、別にそれでいいと思う。当時は何回もリピートさせて聴いていたよ。この曲をヘッドフォンで聴きながら、学校の校庭でサッカーをしていたことを思い出すね。

このデビューアルバムの後も彼をフォローし続けましたか？

Tom Coveney: 少しだけね。でもこのトラックがとにかくショッキングだった。

Eric B & Rakim
Paid In Full (Coldcut Remix)
1987

彼らのクロスジャンルなミックスに影響を受けたのではないですか？

Tom Coveney: このトラックのサンプルの使い方が好きだね。初めて聴いた時に凄いトラックだって思ったよ。

Danny McLewin: Coldcutは別次元だ。80年代後半から90年代初頭にかけての彼らのミックスは本当に素晴らしい。今でも凄いと思えるサウンドだ。彼らはスキルのあるハードディガーだ。

Tom Coveney: クリスマスプレゼントで祖母からヒップホップのミックステープをもらったんだけど、このトラックが入っていたんだ。「ドープなトラックだよ、ありがとうおばあちゃん！」って感じだったね。

Danny McLewin: ファンキーなバアさんだ！

EPMD
So What Cha Sayin
1989

1989年の段階でこのプロダクションは素晴らしいと思います。

Danny McLewin: 本当に素晴らしいと思うね。10代の頃はヒップホップに夢中だった。Beastie Boysの最初のレコードを13歳の時に聴いて凄いと思った。それでLL Cool JやEPMDを聴くようになったんだ。Paul’s BoutiqueのDust Brothersのプロダクションも好きだったけれど、EPMDは本当に凄いプロデューサーだと思ったし、MCも素晴らしかった。『3 Feet High and Rising』もそうだね。聴くたびにショックを受けたよ。当時ヒップホップは俺の人生で大きな部分を占めていた。でもヒップホップは90年代中頃からダメになってしまったと思う。The Neptunesの初期が最後に聴いた作品だね。でもそれ以降はもう聴かなくなってしまった。

昔からプロダクションに目を向けていたのは興味深いですね。自分でも作品を作っていましたか？

Danny McLewin: いや、DJの方に力を入れていた。サンプリングに興味を持っていて、色々ネタを集めていたが、それは単純にDJをするためだった。大学の頃はMorcheebaのメンバーの1人Paul Godfreyと一緒に集会所でDJをしていた。バンドがスカとかファンク、サイケを演奏して、その合間に俺たちがDJをしていたんだ。

新しい音楽はどの程度フォローしていますか？

Danny McLewin: その話はTomの担当だな。

Tom Coveney: 名前は憶えていないけれど、フォークを沢山聴いているね。昔はインディーにのめり込んでいた。今でも聴くし、そこから学ぶこともあるけれどね。あとは毎日ハウスを聴いているよ。最近だとLeatheretteのアルバムが良かったな。でもとにかく沢山聴く。毎日少なくとも20曲はあたらしいトラックを聴いているよ。

Origin Unknown
Valley Of The Shadows
1996

これは意外でした。

Tom Coveney: 俺はジャングルが大好きだったんだ。1991年頃に特定のジャングルを聴くようになって、11歳の頃にはもう人前でプレイしていた。16歳頃からケントの汚いクラブでプレイするようになったね。そこはアシッド漬けのボロボロのオッサンが経営していて、俺はクラブに入れる年齢じゃなかったのに、彼は全然気にしてなかった。隣にはマリファナを吸う部屋が用意されていたし、クレイジーだったよ。まさに隠れ家って感じだったね。

このトラックに話を戻すけれど、このトラックがどうやって生み出されているのか全く理解できなかった。ベルのサンプル音はどうやって作られたのか皆目見当がつかなかったし、この世の音楽とは思えなかった。時が経ってからどうやってこのトラックが作られたのかを知って、ようやく納得できたんだ。

その秘密を理解した時に興味を失ってしまったのではないですか？

Tom Coveney: だね。でも興味を失うまで結局6年もかかったんだ。1998年、1999年頃にトランスのシンセ音が入るようになって、興味を失ったよ。

Danny McLewin: 魅力が無くなったよな。

もう聴かないというようなジャンルは他にありますか？

Tom Coveney: UKガラージには3、4年ハマってた。モノには期限があると思うけれど、ハウスミュージックに関しては30年前の作品でも未だに強力だ。

Danny McLewin: 最近のディープハウスやテクノのプロダクションは本当に素晴らしいし、ネクストレヴェルだと思う。このジャンルで起きていることは衝撃的だ。俺たちも最近ハウストラックを作ったところさ。

Tom Coveney: ちょっとブリストルな雰囲気があるトラックだよね。俺たちはハウスを制作するのが好きなんだ。エディットやリミックスを何年もやっているけれど、近々スタジオに戻ったら自分たちの作品を作り始めるつもりさ。ハウスを沢山作る予定だよ。

それはDJの回数が増えて、フロアに接する機会が増えた結果でしょうか？

Danny McLewin: だと思うね。だが、以前からやってみたいと思っていたし、インスピレーションを与えてくれる素晴らしい音楽も世の中に沢山ある。ただ、沢山の人たちに会って、一緒に作ろうと言ったはいいけど、生活しなきゃならないからリミックスを沢山こなす羽目になっているのが現状さ。自分たちの作品に取り掛かれる時間が取れるような状況になればなと思っているところさ。

Jimi Hendrix
Voodoo Chile
1971

これを選んだ理由は？

Danny McLewin: 取り上げたのは15分のバージョンの方だ。初めて聴いたサイケでね。16歳の時だった。マッシュルームを少し食べていたし、このレコードのサウンドの素晴らしさには本当にしびれたよ。75回位プレイしたかな。自分の耳の音楽の捉え方が凄かった。あの経験は一生忘れないだろうね。

サイケというワードがこのインタビューで何回か出て来ていますし、あなたたちの音楽にもそのフィーリングがあると思います。サイケなドラッグはあなたたちのクリエイティブな部分に関わっているのでしょうか？

Danny McLewin: 探究心の延長上にあるんだと思う。個人的には自分の精神状態や意識、それに音楽を理解するという意味では健康的な行為だと思う。ただし、ちゃんとした環境下でやるべきで、俺に言わせればそれは自然の中でということになるな。

David Bowie
Oh You Pretty Things
1971

こういうポップはもう存在しませんよね。

Danny McLewin: 子供の頃に初めて夢中になったのがDavid Bowieだった。俺はこのレコードと一緒に育った。赤ん坊の頃に両親がずっとプレイしていたよ。“Kooks”を選んでも良かったが、最近ちゃんとしたサウンドシステムが用意されているビーチでこの曲をプレイした時に、ベースとドラムの音が最高だって気付いたのさ。素晴らしいアルバムだし、同時に子供の頃を思い出す曲だ。

当時のレビューには「迫りくる宇宙人と現代社会の若者が手を組んでいるという意味で、この作品は差し迫る人類の危機と言えるだろう」と書かれていましたが、当時このように感じていましたか？

Danny McLewin: そりゃ俺の感想そのものだ（笑）。Bowieは素晴らしい詩を書くし、彼のファーストアルバムも周囲の評価は低かったが、素晴らしいレコードだと思う。Jimi Hendrixも同じだ。当時俺は生まれていなかったが、こういう音楽に当時の世間はカリカリしていたのさ。

現在でもこのようなショッキングな作品が生まれる可能性はあると思いますか？

Danny McLewin: ダブステップは衝撃的だったが、決して良い意味ではなかったね！

Tom Coveney: 可能だと思うよ。たまに「どうやってこのサウンドを作ったんだ？」って思う時があるからね。

Danny McLewin: かなり出尽くした感はあるし、新しい音楽でもそこには昔の要素が入っているのが現状だ。昔はJimi Hendrixのようなエレキギターの演奏は誰も聴いたことがなかった。でも今はそういう状況を生み出すのは難しい。何か新しい楽器を生み出す必要がある。今俺たちはバンジョーとバグパイプ、それにサックスが組み合わさったようなものを作ろうとしているんだ。Banjopipeって言うのさ。

今のポップについてはどう思いますか？

Both: クソだね！

Danny McLewin: 大半のポップは数年前にヨーロッパのリゾート地でしか聴けなかったようなくだらないダンスミュージックだ。

Tom Coveney: Simon Cowellのせいで滅茶苦茶にされたんだ。アイツは最悪だね。

Peter Green
Slabo Day
1979

Peter GreenはFleetwood Macの創設メンバーで、あなたたちに大きな影響を与えていますよね。なぜこのバンドはあなたたちにとって重要なのでしょう？　悲劇のバンドですよね。

Danny McLewin: 確かに。でもその悲劇を音楽に昇華させたバンドだと思う。色々な問題を乗り越えて一緒に活動を続けていったのは素晴らしい。でも今回選んだのはPeter Greenのソロアルバムだ。これを作った頃の彼は完全におかしくなっていた。クラウトロックのバンドに拉致されて、アシッドを大量に摂取させられて、スタジオでギターを弾かされていたのさ。奴らのせいで彼はボロボロになったんだ！

Tom Coveney: 無人島に持って行くアルバムだね。オールタイム・フェイバリットのベスト5に入るよ。

Danny McLewin: サウンドとメロディーは共に完ぺきだ。理想を超えた存在というか、すべての面において最高だ。ひとつのミスもない。

Tom Coveney: グリーンのカラーヴァイナルだし！

Fleetwood Macの再結成についてどう思いますか？

Tom Coveney: 数年前に彼女と一緒にライブを観たけれど、“Everywhere”をプレイしてくれなかったから、彼女は悲しくて泣いてたよ。まぁ良いライブだったとは思うけれど、場所はロンドンのO2だったからね。あそこは大嫌いなんだ。可能ならもっと小さな会場で聴きたいね。

Danny McLewin: 70年代、80年代は素晴らしいバンドだったが、今はカラオケに近い。グラストンベリーのMick Jaggerのようなものさ。Mickは何を歌っているのかさえ分かっていなかった！だから俺はPublic Enemyを聴きに行ったよ。あの時のChuck Dは最高だった！

レコードをディグして、コンピレーションにまとめていく―この一連の作業に終わりはあるのでしょうか？

Danny McLewin: 中毒みたいなものさ。終わりはないし、70年代、80年代だけでどれだけ多くの音楽が存在しているかを考えるだけで未だにビックリする。アナログを集め出したら、詰んだってことさ。