「大学に通っている時にレーベルをやり始めようとしたんだ。でも、レーベル運営っていう言葉自体チンプンカンプンで具体的に何をすればいいのかが分からなかった。僕と友達で、曲作りをしていた連中の為にコンピレーションアルバムを作ったんだ。18歳の時だったかな。コンピのタイトルは『Who Drops the Beat（ビートを投げ込むヤツ）』。と、ロサンゼルスからの電話で語ってくれたのはLeeor Brownだ。

「残念な結果に終わってさぁ」

それからBrownはPR業界へと進んでいった。

そして、また挑戦したのだ。

「レーベルを作ることは昔からの夢だったんだ。でもPR業界で働きはじめると、デジタルディストリビューションがそこまで大変なものでないことが分かったんだ。オーディオやマスタリングのプロセスなんかを学ばなければければいけなくて、費用があまりかからないことも知ったよ。PRの仕事もしていたから、プロモーションに関する一般常識は理解していたしね。」

彼の二度目の挑戦として始まったレーベルFriends of Friendsのリリースは、「成功」という言葉以上の結果を残すことになった。PRエージェントTerrorbirdで経験を積んだ彼のアーティストとの結束は、プレスの人間以上に強い。エレクロニックミュージックシーンの今のトレンドにもなる場所、ロサンゼルスで、Friends of FriendsはBrownの得た経験を生かしてレーベル作りを開始した。

「何か新しい事をするなら、違った方法でやろうとは思っていたんだ。」
different."

当時親しい関係にもあったDaedelusの、息を飲むような3曲を聴いた時、Brownはどうにかしてリリースをしなければと感じたという。しかしどうやって？「CDやレコードを出してレーベル事業を開始したくはなかったんだ。何万もの人が同じことをやってきたし、何か違ったアングルで物事を行う必要性を感じたんだ。」
買った人が鑑賞出来てしかも使えるもの。Brownはレーベルのブランドイメージを作るため、そして歩くプロモーションとしても活用できるものとしてTシャツを選んだ。
「コストも結構かかったよ、CDに比べれば断然ね。コストはかかったけど、『ユニークなものにしたい』っていう気持ちが強かったんだ。Tシャツも全て手刷りで、オーガニックなものに仕上げたんだ。皆が皆とても気に入ってくれて、とてもやりがいのあるプロジェクトだった」と当時の事を振り返るBrown。

パートナーシップ、そして人間関係を作るのが好きだというBrownは、音楽自体を面白く、そしてプレゼンテーションとしてコラボ出来るものにしようとした。EPシリーズをリリースする上で、Brownの中には既に良いアイディアが浮かんでいたのだ。「仲の良い友達にリリースのアイディアを持ち出して、b-sideを彼らの知り合いにやってもらう。それから他の友達にもT-シャツのデザインもしてもらった。フィジカルなもので手に入るのはTシャツとダウンロードカードだけで、そのダウンロードカードも環境に優しい作りになってる。土の中に入れると植物が生える仕組みにしたんだ。」こうして、レーベルFriends of Friendsは生まれた。Daedelusと彼が選んだデュオ Joggerの、オーケストラとヒップホップが上手くブレンドした6曲入りEPが、ダウンロードカードとTシャツという形で「リリース」された。レーベル発の第一弾リリースとしては、度肝を抜いたものと言っていい。

実験的ともいえるレーベルが行ったこの戦略は、すぐに良い結果として出るものではなかった。「正直、売り上げはイマイチだったんだ。僕みたいにすぐに結果として現れてほしい人にとって、タイミングが良くなかったとも言えるけど、ああいった新しいアイディアをきちんと形にするには、時間がかかるんだ。」とBrownは言いつつも、戦略は最終的に良い方向へと展開していった。「Friends of Friendsは、Tシャツのアイディアだけが先攻してしまったんだ。それだけで有名になってしまうのが嫌だったからTシャツ付きアルバムをやめたんだ。一番始めのTシャツ付きアルバムが発売されてから3ヶ月くらい経った時に、レーベルDowntownにも知られてか、Mos DefがTシャツ付きのアルバムを出したんだよ！Downtownみたいに大きくてお金のあるレーベルが『”俺たち”がT-shirtレーベルをやってるぜ』って言っている傍らで突っ立っているわけにはいかなかったんだ。抗議するのも時間の無駄。むしろ、そんな事には目も触れずに新しくて面白い事をやる必要があったんだ。」

このレーベルは、昔ながらのやり方だけでなく、野心に富んだプロジェクトをすぐ新たに見つけた。 Mexicans With GunsことErnest Gonzalesのデビューソロアルバムは、コンセプトに富んだウェブサイト、フルカラーのアートブック、そしてGonzalesの友人が手掛けたリミックスアルバムつきのものだ。「１年もの年月を費やして出来上がったものだよ。何かアルバムを特別なもの、拡張したものにするために、このパッケージにする必要があったんだ。」とBrown。レコード『Been Meaning to Tell You』が音楽シーンで評判になった一方、アルバムの延長として出来上がった製品は、アーティストでありレーベルオーナーでもあるBrownにとって、とても重要な意味を持っていた。「デジタルミュージックの出現によって、音楽が言わば「使い捨ての存在」になってしまった。だからレコードやアートブックが、リスナーの興味をそそられるものになっていたんだ。」とGonzalesが説明してくれた。

『Been Meaning to Tell』が他とは違う点は、LAで話題になっているものを無視した突拍子もない音楽だ。ゴージャスで、思いのこもったギター、ドラムマシーンそしてシンセサイザーのブレンド。うなりがぶつかったようなものというより、もっとおどけた内省的な感じだ。「Brownがハウス、テクノミュージックの熱狂的なファンだったことも知っていたし、レーベルも起動に乗り始めていて、しかもLAサウンドを越えたものを出したいって言う事も理解していたんだ。」と説明してくれたのはSalvaだ。彼はレーベルからリリースもしていて、Brownの良き友人の一人でもある。

今年初めにリリースされたSalvaの『Complex Housing』は、Friends of Friendsからリリースされた2011年度好調な出だしのアルバムで、クラシックなハウスミュージックとヒップホップ色の強いロサンゼルスのビートを織り交ぜたスタイルだ。「Salvaは、Low End Theoryのビートスタイル、ジューク、そして踊れるような曲それぞれのジャンルにフォーカスを置いたものをEPとしてリリースしたかったんだ。」とアルバムの経緯について話し始めてくれたBrown。「でも僕が率直に感じたことは、Salvaというアーティストに皆が期待していることは、ジャンルを越えた何かを作る人って言う事だ。」彼の『Complex Housing』は、確かに様々なものを混ぜ込み、より良いものへと形を変えている。「彼と働きたいとか、世界ツアーをしたいなんていう人も今では沢山いる。それも、僕たちが彼のスタイルを形成したからだとも思っているよ。」

Shlohmo: Burger vibes

アーティストSalvaと同様、Friends of Friendsを一言で説明することは難しい。2011年には『 Complex Housing 』のような、ポリグロットファンクからメキシカンなフレーバー漂う Ernest Gonzalesのエゴを結集した、Mexicans With Gunsによる『Ceremony』などと、その音楽ジャンルは多種多様だ。そして今レーベルは、最もパワフルで影響力をもたらすであろう Shlohmoの『Bad Vibes』のリリース準備で大忙しだ。Friends of Friendsはアルバムを主軸にしたレーベルで、アルバム全体で伝えたい、深きテーマに重きを置いている。「ただEPばかりをリリースするだけじゃ、レーベルを運営するのは難しと思っているんだ。それだけ多くの窓をアーティストの為に開けてあげるかだと思ってる。EPばかりだと、アーティストとの関係も切れてしまう。アルバムのリリースの話になれば、リリースするまでの準備期間、ビデオ、ビジュアル、そしてそのアルバムの意味など、色々な話が出来るだろう？EPとなると、一枚で終わってしまうんだ。アルバムは芸術作品になりえるし、Henry（Shlohme）の場合、今はプレスフォトやカバーアート、ミュージックビデオなどの準備で今大忙しだよ。」

Brownはジャンルに拘らない、そしてそれがFriends of Friendsの特徴だ。「『グレイ』な状態が好きなんだ。皆が皆レーベルから出たリリース全てを好んでくれるわけではないけど、予想もしないような良い音楽を発見してもらえると嬉しいよ。」とBrownは楽天的に話してくれた。 Groundislava名義でレーベルからリリースしているJasper Pattersonの声が電話越しに聞こえる。「アニメの『ボルトロン』みたいに何種類ものロボットが一つになって、馬鹿でかくて恐ろしい巨人に変身したイメージだよ。殆どのレーベルが、レーベル自体のテーマに沿ったアーティスト選びやリリースをしているけど、Friends of Friendsは、全人類の為の音楽を取り込むっていう目標があるんだ。」

Brownは、レーベルの中身がバラエティーに富んでいることが嬉しいようだ。「昔のジャンルの在り方は、今とは全く違ったと思うんだ。最近だと、何を聴いているんだ？っていう質問に『何でも』っていう答えがしょっちゅうある。何でもって一体何なんだ？ってね。ここ最近、一つのアイデンティティーだけで誰かを語るなんて不可能だって感じてて。僕たちはエレクトロニックミュージックのレーベルを運営していて、エレクトロニックミュージックをリリースしている。ただそれだけだよ。」ここまでの偉業を達成したにも関わらず、Brownは謙虚であり、そして、未だ満足していないようだ。「僕らのレーベルの今の立ち位置を褒め称えてくれる人もいるけど、自分では未だ浮き足状態だって思っているんだ。僕の好きなレーベルなどと比べたら、僕たちの存在なんてちっぽけだし、もっと一生懸命働かなくちゃって思うよ。うちのレーベルから出しているアーティストたちがもっと注目されてほしいしね。まだ若いから、何とでもなると思っているよ。」彼のミッションは極めてシンプルだ。「一番大切な事は、今人気だからとかそういう事を抜きにして、人々が心から欲しいと思うものを作ることだ。なぜならこれはホットなmp3だからね。」

Friends of Friends Mix

今月は Salva & Lazy Browによるレーベルショーケース。多種多様なサウンドをミックスでも披露してくれている。ミックスに収録されているものの半分は、リリースされていない、もしくは近日発売予定のものばかりだ。

Download: RA Label of the Month 1108 Mix: Friends of Friends
(右クリックで保存)
Filesize: 98.1 MB
Length: 40:50

Tracklist
01. Mexicans with Guns - El Moreno ft. Helado Negro
02. Burial - Shell of Light (Shlohmo Remix)
03. Kelis - Milkshake (Shlohmo Remix)
04. Robot Koch - Overnight ft. Jahcoozi
05. Salva - Keys Open Doors (Devonwho Remix)
06. Larytta - You Got Nothing
07. Gun Selectah - Villa Ghetto (LOL Boys Remix)
08. Gun Selectah - Villa Ghetto
09. Beans - Blue Movie (Salva Remix)
10. Groundislava - My Unexpected Return to Olympia
11. Asura - Always Be My Baby (Mariah Carey)
12. Groundislava - I Bet I Do (Supa Blanco)
13. Shlohmo - Just Us