もう何年にも渡り、Andy Stottファンは非常に満足感のある日々を過ごしてきた。早くからStottにハマった人は、彼の拠点でもあるマンチェスターの優良レーベル、Modern Loveからのシングルの数々を、量・質ともに満喫してきたことだろう。Stottは、Basic Channelの焼き直しのように聴こえてしまうことが多い非常にトリッキーなジャンル、ダブテクノの従来のサウンドとは一線を画すようなノベルトラックを作る才能に長けたアーティストだった。その後彼は、自身のクラブ志向の音楽に飽きてしまい、「何回も何回も壁にぶつかりながらも諦めずに進み続けた」時期を乗り越えた結果、ドロッとしたテンポと粗いサウンド、濃密な雰囲気が印象的な、当時"knackered house（くたびれたハウス）"と彼が呼んでいた新しいスタイルを完成させシーンに戻ってきた。思い切った方向転換だったが、フォロワーは減るどころか大きく増加したようであった。この頃からStottはアルバムアーティストとして認知されるようになり、その後2枚のフルレングスを発表している。RAが2014年の年間ベストアルバム1位に選出した『Faith In Strangers』は、より奇妙で、より多様、そして歌を多く取り入れいていた一方、先月リリースされたばかりの『Too Many Voices』は、彼のユニークな音世界により深く入り込んだ作品である。過去10年間におけるStottの進化は、一貫して前に突き進むアーティストの模範的なケースとなった。

そんなStottの最新アルバムの中の傑作トラックの1つ"New Romantic"は、彼の長年のコラボレーターであるAlison Skidmoreの声をフィーチャーしている。先月RAのロンドンオフィスで収録された今回のライブセッションで、Stottは彼の音楽の魅力の象徴とも言える、悲喜交交の部分を大きく引き出したパフォーマンスをしてくれた。