- Jordan Rothleinによる特集記事Breaking through: Wata Igarashiを読んでいるなら、既に"Mantle"と"Displacement"を入手済みだろう。エネルギー充填されたシンセコードの中へ強烈に押し込んでくる"Mantle"に対し、"Displacement"は気怠い白昼夢のようなトラックだ。しかしこの両トラックの出自は「Ciphers」の残りのトラックと共に同じだ。Peter Van HoesenはIgarashiには「サイケデリックな感覚がある」と語り、それにより東京拠点の彼をコンピレーション『Stealth』(英語サイト)に含めることにした。そのサイケぶりはベルリンのMidgarに提供した本作においても健在だ。
ディープで物憂げなフロア仕様の"Ciphers"により本作はスタートする。"Hailstones"では宇宙から発せられた不気味なエイリアンブリープが鳴り響き、その後トラックは劇的で奇妙な力強いものへと構築されていく。"Lucifero"でも再び雰囲気が変わり、ここではきらめきながら弾け散るシンセにより、明るくアップビートでメロディアスなサウンドが生まれている。"Cocytus"にはムーディーなドローンアンビエンスが含まれている。言わずもがな、Igarashiはいつも自分の作品に多種多様な性質を持ち込んできた。しかし、彼の職人技は一貫しており、そうした様々なムードやBPMをすべてひとつにまとめ上げている。「Ciphers」も例外ではない。本作はテクノのアルバム作品のような幅と深みがある壮大なEPだ。
TracklistA1 Ciphers
A2 Hailstones
B1 Lucifero
B2 Cocytus
C1 Mantle
C2 Displacement