- Dave Sumnerは25年に渡ってDJ活動を続けているが、そんな彼でさえ、Berghainのミックス制作は手ごわい作業だったようだ。彼は先日RAに対し次のように語っている。「俺が今までやってきた音楽プロジェクトの中でも1番大変な仕事だったよ」。この手のプレッシャーにはいくつか理由がある。まず、これまでにリリースされた6つのBerghainミックスによってクオリティの基準が高く設定されていることが挙げられる。そして、Sumnerがこのミックスシリーズに参加した初めての外部アーティストであることも忘れてはならない。彼はベルリンで話題のクラブ、Berghainのレジデントを務めているが、この場所でキャリアをスタートした訳ではないし、DJとしての彼の評判はBerghainや同クラブのトレードマークであるテクノに限定されている訳でもない。Ostgutが新たに展開するデジタル限定フォーマットには制限が無いため、エクスクルーシブ・トラックの選出がますます複雑化していることも理由のひとつだ。今回、制作されたミックスの総トラック数30曲の内、実に17曲ものエクスクルーシブ・トラックが収録されることになった。結果、彼がBerghainでプレイしている模様を記録したかのような完ぺきなセットが誕生することになった。
『Berghain 07』において非常に鮮烈であることのひとつに、ミキシングのスムーズさが挙げられる。Ableton内で完ぺきに繋ぎ合わせるのではなく、ロータリーミキサーを静かに操作している手触りを感じさせながらミックスが展開している。きらびやかでダイナミック、そして時として、驚くほどメロディアスなミックスだ。テクノの巣窟として有名なクラブのサウンドトラックに成り得そうだが、同時に、眩いシンセとシネマティックなメロディラインがふんだんに用いられている。Sumnerは誰も気付かなかった組み合わせを見出す術を知っている。例えば序盤、Rødhådの"Kinder Der Ringwelt"からChristian Wünschの"Auger Electrons"への展開は、精密でレゴブロックのようなミックススタイルの好例だ。
彼と同じようにテクノに対してしなやかで航空力学的視点を持つプロデューサーを選んでいることも、『Berghain 07』の一貫性に寄与している。その筆頭はLuke Slaterのトラックだ。Planetary Assault Systems名義の吹き出すような勢いや、L.B. Dub Corp名義のグルーヴィーなベースラインは、本ミックスの個性作りに貢献している。そして、Peter Van Hoesenや、Post Scriptum(SumberのレーベルであるInfrastructure NYとサインを交わした匿名アーティスト(英語サイト))、そして、Blue Hourらのトラックは、液体のようにうごめく場面を提供している。こうしたトラックは複数のクラシックチューンの間に見事に収まっており、例えば、序盤の20分が過ぎる頃、Testeの"The Wipe"とCJ Bollandの"Horsepower"が組み合わされ、猛々しいクライマックスが演出されている。何も知らない人であれば、90年代前半に発表されていたトラックだとは思いもしないだろう。
『Berghain 07』でクライマックスが序盤に訪れていることも、本作がいかに他とは違うミックスであるのかを示している。このミックスには数多くの着火点が含まれているが、それはSumnerの公平で熟練したDJプレイの証だ。次から次へと積み重ねていくアプローチではなく、定期的にビートを抜き差しすることで、彼はトラックを繋ぎ合わせる少しの間、リスナーを宙に漂わせているのだ。実現するのはかなり難しいアプローチにも関わらず、Sumnerは見事に成し遂げている。『Berghain 07』の終盤にかけて、L.B. Dub Corpのトラックに挟まれる形で、Sumnerの"Golden Dawn"がCarl Craigの"Twilight"に融合しており、洗い流されるような華麗なアンビエント空間が生まれている。ここでミックスが終了するかのような場面なのだが、そこからSlaterの別トラックが牽引しながら、力強いラストスパートへと変化していく。
先日、RAでのインタビューにて、Sumnerは『Berghain 07』を「フレッシュ」に感じてもらえるようにしたかったと語っている。確かに、本ミックスでふんだんに用いられている星を眺めているようなメロディや、みずみずしいシンセサイザーは、90年代に呼応しながらも、きらびやかでモダンに響いている。Sumnerが数十年かけて磨き上げてきた派手さを抑えたスタイルを優先するため、長尺のトリッピーなブレンドや、おざなりのトラックは用いられていない。彼が「典型的」と形容しそうなこのアプローチこそ、『Berghain 07』をここまで聴き応えのあるミックスにしているものだ。それは現場を潜り抜けてきたベテランが、お気に入りのプロデューサーによるトラックを、お気に入りのクラブのためにプレイした90分のミックスだ。Berghainのレジデントが常にもたらしてくれそうな快感と安心感を、本作は素晴らしいレベルで実現している。
Tracklist01. Tadeo - Reqiuem
02. Post Scriptum - Constant Acceleration Drive
03. Rødhåd - Kinder Der Ringwelt
04. Christian Wünsch - Auger Electrons
05. DVS1 - Electric
06. Mark Broom - Satellite
07. Rrose - Signs
08. Teste - The Wipe
09. CJ Bolland - Horsepower
10. Cleric - Concrete
11. Blue Hour - Common Ground
12. Peter Van Hoesen - Objects From The Past (Neel Remix)
13. Psykofuk - Psykofuk
14. Steve Bicknell - Transcendence #3
15. Post Scriptum - Human Timescales
16. Steve Bicknell - Odyssey #1
17. Steve Bicknell - Odyssey #2
18. Planetary Assault Systems - Arc
19. Allen - Kepler
20. Cassegrain & Tin Man - Oxide
21. Inland - Sca Fell
22. Truncate - 86
23. L.B. Dub Corp - Roller feat. Function (Len Faki Interpretation)
24. Function - Golden Dawn feat. Stefanie Parnow (Live Version)
25. Carl Craig - Twilight
26. L.B. Dub Corp - So Much
27. Blue Hour - Parallels
28. Abdulla Rashim - A Shell Of Speed
29. Silent Servant - Noise Treatment I
30. Sandwell District - Untitled A