- Bonoboとして知られるSimon Greenが『LateNightTales』を担当するのは必然だと思う。彼の音楽は夢うつつな空間の中に漂っているものであることが多く、LindstrømやAir、そしてNightmares On Waxらのミックスをリリースしてきた『LateNightTales』はふわふわしたパーティー序盤のような空気感で有名だ。このことを念頭に置いて考えると、このミックスシリーズをBonoboが担当し上手くいくというのは決して驚きではない。
ここに収録された音楽はほぼフォークミュージックにそのルーツを持っている。1曲目のDustin O'Halloranによる"An Ending A Beginning"はディープなストリングスとマイクを接近させて録音したようなピアノペダルのサウンドに溢れた繊細なトラックで、そこに続くのはヒューストンのKhruang Binによる一風変わった東南アジアの響きを持ったオルタナティブカントリーミュージックだ。濃厚なバイブスが漂うのはDonovanによるBonobo"Get Thy Bearings"のカバーバージョンだ。このバージョンではオリジナルでの気だるいヒッピー感覚を取り除き、代わりに最近の4heroを思い起こさせるようなアレンジメントを施している。
選曲アプローチにおいてGreenがオープンマインドであるということは今回のミックスのキーポイントの1つだ。ブログを中心に活動するフォークアーティストEddi Frontもこのミックスの中では往年のソウルシンガーDarondoのように心地よく、深い悲しみとピュアな好奇心の間にあるような、ほろ苦い感覚を分かち合っている。ジャンルを横断するということだけに留まらず、固定概念にとらわれないGreenのスタイルも同様に重要だ。正確に言えば、一切の装飾を排し、各楽曲に適したパフォーマンスを行っているのである。
しかしミックスが騒がしくなり、バラバタしてしまっている瞬間もあり、例えば、びっくりするほどに面白くないAirhead"South Congress"は、その後に静かに立ち昇ってくるMatthew Bourneの"Juliette"を台無しにしている。Romareによる"Down the line (It Takes A Number)"をミックスしている部分を聞けば分かるが、Greenは本来、こうした感情溢れるトラックを綺麗にミックスしていくことが出来る能力を持っているだけに、前述の点は非常に残念で仕方がない。
ともあれGreenが持つダウンビートの天賦の才にその身を任せたとき、『LateNightTales』は他のミックスとは全く異なる心地よさを感じさせる。この点は彼のDJとしての資質を支えるものであり、このミックスシリーズがテーマとする「寝るには遅い時間だけれど、コーヒーを飲むには早すぎる」ような時間帯の感覚を見事に生み出している。
Tracklist 01. Dustin O'Halloran - An Ending, A Beginning
02. Khruang Bin – A Calf Is Born In Winter
03. Bonobo - Get Thy Bearings (Exclusive Donovan cover version)
04. Dorando – Didn’t I
05. Nina Simone - Baltimore
06. Hypnotic Brass Ensemble - Flipside
07. Menahan Street Band - The Traitor
08. Andrew Ashong - Flowers
09. Romare -Down The Line
10. Shlohmo - Places
11. Lapalux - Gutter Glitter
12. The Invisible - Wing (Floating Points Mix)
13. Badbadnotgood - Hedron
14. Matthew Bourne - IIV. Juliet
15. Airhead - South Congress
16. Matthew Halsall - Sailing Out To Sea
17. Dorothy Ashby - Essence Of Sapphire
18. Peter And Kerry - One Thing
19. Eddi Front - Gigantic
20. Bill Evans - Peace Piece
21. Benedict Cumberbatch - Flat Of Angles Part 3 (Exclusive Spoken Word Piece)