- さすがの抜け目無さというべきか、WarpがRecord Store Dayのために用意したスペシャル・リリースにはNicolas Jaarとともに2人の著名アーティストがクレジットされている。まず注目はNicolas JaarがBrian Eno "LUX"をオリジナルの45分から8分間に凝縮し、さらに静謐さを拡張したリミックスだろう。最初の数分間は、レコードが鳴っているのかどうかさえよほど注意して聴かなければわからない。でも、これはJohn Cageへのオマージュではない。向日葵の花が咲く様子をタイムラプス・フィルムに収めているかのように、徐々にサウンドが姿を現してくる。ピアノの音色は控えめに散りばめられ、美しいヴォーカルがするりとほどけていく。このリミックスはラディカルなものというよりは、オリジナルへの畏敬の念に溢れている。
芸術肌のオルタナティブ・ロックバンドGrizzly BearをJaarがリミックスしたヴァージョンもさらに興味深い。昨年彼らが発表したアルバム『Shields』に収録されていた"Sleeping Ute"にピアノやヘヴィーに加工したギター・ループ、歪んだベースなどを足して燃え殻のような超スローモー・ハウスに仕立て直している。非常に多くのニュアンスをまとめあげているので、何度も繰り返して聴かなければその全貌は容易には掴みづらいだろうが、これはJaarがこれまで手掛けた作品の中でも屈指のもののひとつと言える。
TracklistA Grizzly Bear - Sleeping Ute (Nicolas Jaar remix)
B Brian Eno - LUX 2 (Nicolas Jaar remix)