Maxxi & Zues - Quiet Village Remixes: Too High to Move

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  • Martin Dennyが先鞭をつけたエキゾチカ・サウンドの影響は今日でもBonobo、Quantic、Rainbow Arabia、そしてもっとも最近ではMatthew Dearの"Her Fantasy"などで見つけることが出来る。とはいえ、Martin Dennyが50年代から60年代に手掛けたユニークなアレンジメントを現在知る人は必ずしも多くはないだろう。そのDennyの名作アルバムから名前をとったJoel MartinとMatt "Radio Slave" Edwardsによるプロジェクト、Quiet Villageはすっかり忘れられかけていたDennyのラウンジ・スタイルに対するトリビュートを捧げ続けて来た。Edwardsにとっては普段のRadio Slave名義での作風とは大きく異なるものであり、このプロジェクトではいつものブート・リミックスやシングルを皮切りに、'08年には!K7からデビューアルバム『Silent Movie』をリリースした。精力的なプロモーション・ツアーを経て、MartinとEdwardsは一旦このプロジェクトを凍結させるのだが、2年のブランクを経てMark BのInternational FeelからMaxxi & Zuesという新たな名義を名乗って復活した。 以降もMaxxi & Zuesとして活動を続けながら、Edwardsが運営するRekidsのエクスペリメンタル・オフシュートPyramid Of MarsからここにQuiet Village名義でのリミックスを10曲集めたアルバムが届けられた。彼らが手掛けた最初のトラックにちなんで名付けられたこのリミックスアルバム『Too High to Move』には彼らの初期ホワイトレーベル作品、François K "The Road of Life"の未発表リミックス、Mudd "Speilplatz"のインスト・ヴァージョンなどが収められている。他にも、今では解散してしまったAllez Allezを日差したっぷりのダブに仕立てたリミックスやレーベルメイトであるBubble ClubやBernard FevreのBlack Devil Disco Clubに提供したリミックスもMark EやToby Tobiasのよりフロアライクなリミックスとうまく対比されて並んでいる。Massive Attack "Protection"やGorrilaz "Kids with Guns"などの秀逸なリミックスが収録されていないのは残念だが、こうしたメジャー・レーベル系のしがらみがある以上は仕方の無いところでもある。 一貫性が高く、豊かで映像的なそのサウンドは一発だけのギミックで聴かせるものというよりはよりディープなシネマ・スコアに近いと言ったほうがいいだろう。欲を言えば、その収録トラック群の性質からしてアルバム全体をシームレスなひとつのミックスとして提示したほうがよりトラックごとの個性も分かりやすかったはずだし、より聴きやすいものになったかもしれない。この『Too High to Move』は必ずしも誰もがマストバイだという類いのアルバムではないが、このヴァイナル中毒者2人の素晴らしい職人魂が確かに滲み出た作品ではある。
RA