Deadbeat - Drawn & Quartered

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  • ダブテクノ界で注目されるような、面白い作品を、少なくとも興味を持ってもらえるような作品にするとなると、とても実験的な、ダブテクノとは呼べないようなものにする必要がある。そう、とてもややこしいのだ。カナダ出身、ベルリン在住のDeadbeatは、前回のアルバム 『Roots & Wire』では様々なものを取り込み、クロスジャンル的な作品に仕上げたり、mix CD 『Radio Rothko』 を通してダブテクノの歴史の常識に挑戦した。 Scott Monteithによる6枚目のアルバムは、以前の作品と比べると型破りな仕上がりになっている一方、彼の新しいレーベル BLKRTZでは、自身のベーシックへと戻っている。 がっかりする必要はなし。Basic Channelから録って作ったようなものではないし、実際はそんなものとは全く違ったものと言って良い。 『Drawn & Quartered』は、ダブテクノのルーツをありのまま表現した作品になっている。 Rhythm & Soundのような、ドシンドシンとしたサウンドは敢えて選ばず、Scott Monteithのダブは、デジタルパーカッションを使って滑らに作られたものになっている。 アルバムの初めを飾るハイディフィニションなピクセルフォグにも似たアンビエントな雰囲気も、雲の蒸気というよりもむしろ、艶艶しく、未来的、穴のあいた紙に光が射しているようなサウンド。駆け抜けるようなビートのセクションにアルバムが突入すると、 『Drawn & Quartered』は 残忍な程ドライで、ベーシックなプログレッションを繰り返しながら、10分間もの間、小さな変化をつけながら、進んでいく。 アルバムの中での強みでもある質の良さのお陰で、ディープ且つパワフルで催眠状態にかかってしまうよう。アルバムは大きく5つに分かれており、リーピート状態の中、上質な小節へのリズムをうけながら溶け込んでく。緊迫した雰囲気を醸し出す曲作りによって、 「First Quarter」でのディレイの効いたコードや 「Plateau Quarter」の直前の意気揚々しまくったリフなど、突然の変化やノイズが生み出され、それらはどっしりと圧倒的なものだ。拳を振るような 叙事詩的なダブテクノは想像できないだろう。 それぞれのトラックで、Scott Monteithの様々な音楽的側面がテーマにそって構造的に表現されている。アルバムの序盤そして終盤では、リズムカルかつメロディーに富む一方、 「Second Quarter」ではテクノの世界に足を踏み入れている。 今回のアルバム『Drawn & Quartered』は、三通りの経験ができる。細かく聴く価値のあるすばらしいサウンドデザインでありながら、バランスも良く、夕食の支度時に聴いても良い作品だ。 とりわけ重要なのは、Deadbeatがジャンルのルーツを強調する事によって‘where next(次の場所)’の質問に’backwards(後ろに戻る)’という答えを出しているのだ。Scott Monteithのbackwardsは、後退という意味からはかけ離れたものだが、彼の特性に磨きをかけたことで、Scott Monteithはダブテクノが本来もっていた魅力を引き出すことができたのだ。
RA