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  • 最先端のクラブミュージックということであれば、The Astral Planeのミックスシリーズは有数の発信源だ。同ミックスシリーズに加えて、彼らはデジタル配信のコンピレーションを数タイトル発表し、Victoria Kim、Celestial Traxといったアーティストをフィーチャーしてきた。そして今回、彼らは正式なレコードレーベルとしてAstral Plane Recordingsを始めた。その初リリースは幸先のいい内容だ。しかし、それを手掛けたのは比較的無名のアーティストである。ローザンヌを拠点に活動するイギリス生まれのSHALTは無名のレーベルClubwerksからリリースしたことがあり、Astral Planeの最新コンピレーションにもトラックを1曲提供している。SHALTは、レーベルを始めたいと思わせてくれる類のアーティストだ。彼は現代的なサウンドや構造を取り入れているが、その影響元をあからさまにすることなく、未知の感覚を持つSFの世界に一貫してこだわり続けている。 "Acheron"によって本作の幕が開かれた途端、何かが発射される。その正体はシンセだ。ざらついて腐食しており、汚れた部分が剥き出しになっている。そのシンセが惑星に降り立つたびにドラムパートから破片が散っている。未来的なサウンドだが、同時に古くさくもある。本作はKim Stanley Andersonの小説『Mars』にインスパイアされたようだが、実際にはGeorge Lucasが最初に構想していた『Star Wars』的な世界観を思わせる。Lucasは「使用感のある未来」を欲していた。つまり、非常に使用感のある機械のように最新機器が使い回されて汚れている未来だ。それが「Acheron」で最も顕著な特徴だ。 SFの良作と同じく「Acheron」の大部分には唖然とさせられる。馴染みのあるアイデアを扱っているときですら、それは同じだ。"The Treatment"はテクノをひっくり返したかのように、ドラムパートが枠にとらわれることなく延々と跳ねまわり、"Unconfined"では天井を崩してしまいそうなローエンドを使ってTesselaスタイルのブレイクビーツに挑んでいる。"Hypermalthusian"では、追いきれないほど散り散りになったドラムパターンが即席で形成される。リードシンセが周囲を爆撃する間は特にそれが顕著だ。本作は破壊欲求を伴った創造力に富むデビュー作である。
  • Tracklist
      01. Acheron 02. Hypermalthusian 03. The Treatment 04. Unconfined
RA