Rhythmic Theory - Forgotten Realms

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  • Rhythmic Theoryの新作がBlackest Ever BlackのサブレーベルA14から発表された。これまでと同様、鏡に映った自分を反芻する静かな面持ちの女性写真がカバーデザインに使われている。カバー裏面には、ハムステッドにあるマンションIsokon(英語サイト)に関する本から引用した文章が掲載されている。Isokonはバウハウスの名士、著名な作家、ソビエトのスパイといった人々の御用達だった場所だ。そうしたコンセプトの点と点を繋ぎ合わせていると、Rhythmic Theoryがグルーヴィーに跳ねるトラック2曲を通じてヘヴィな音楽を提供してくれる。どちらもミッドテンポのセットを盛り上げてくれそうだ。 Rhythmic Theoryはパーカッションを重ね合わせて分厚い板のようなサウンドにすることがよくある。2013年の"Siren Song"でのタムは特に強烈だった。"Forgotten Realms"は比較的きれいめなアレンジだが、巧みなリズムによって極めて適合性のいいトラックが実現されている。ダビーなスタブが空気を一掃して、タイトに重ね合わせたスネアと強力な低域を鳴らす空間を生み出している。一方、爽快なパッドと囁くようなビブラフォンによって澱んだ要素と暖かみのある要素のバランスが取られている。そして殺伐としたブレイクでは何の前触れも無く、ほぼ静寂な状態にまでダンスフロアが急降下し、いつものRhythmic Theoryらしく、その勢いに任せて一からトラックが再構築される。 Bサイドに収録された不気味な雰囲気の"Spirits Of Duality"は、古いダークなジャングルからサンプルしたアンビエントパートのようなサウンドだ。当時の陰謀めいた雰囲気は影を潜め、代わりに低域とドラムパートによって重々しさを演出している。シンコペートするシャッフルビートはファンキーやガラージから派生した不気味なサウンドを彷彿とさせるが、既に定義されているカテゴリーにすんなり収まるようなサウンドではなく、本作に個性を与える要素のひとつになっている。速いテンポのクラシックなUKダンスミュージックで用いられるサウンドデザインに魅力を感じる一方で、BPM130以下で踊りたいという人がいたら、Rhythmic Theoryがその欲求を満たしてくれるだろう。
  • Tracklist
      A Forgotten Realms B Spirits of Duality
RA