Dan Andrei ‎- Parcul Cosmos

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  • [a:rpia:r]のファンの多くがクリスマスパーティー明けで二日酔いの体をいたわっていた12月末、同レーベルから突然アルバムがリリースされた。このような変わったタイミングでのリリースはひとつのパターンになってきている。約1年前にはRareshの「Vivaltu Remixes」がリリースされ、2年前にはPetre Inspirescuの『Grădina Onirică』があった。今回はDan Andreiから『Parcul Cosmos』が届けられた。Rhadoo、Raresh、Petre Inspirescuの3人による同レーベルが2007年に発足して以降、Andreiは彼らと活動を共にしてきた。全8曲を収録した本作は、Inspirescu以外のプロデューサーによる最も充実した実験的リリースであり、[a:rpia:r]の歴史において重要な作品となっている。 Dan Andreiのサウンドはリリースごとに進化してきた。歯切れのいいハウス、トライバル、そして、引き締まったダビーな路線に進むなど、どのリリースにも他とは一線を画す世界観がある。最近で言えば、彼はメロディアスなシンセを多用した制作に励んでいるが、その結果生まれる作品は玉石混交だ。昨年、Sensual Recordsのコンピレーションに提供したトラックには苛立ちを覚えそうになったし、「Vivaltu Remixes」にてRicardo VillalobosやPetre Inspirescuの隣に並んだ彼のリミックスからは独創性に欠けていた。しかし、そうしたスペーシーな作品は、『Parcul Cosmos』(宇宙公園、という意味)における成熟したサウンドに至るまでの足掛かりだったようだ。同時に本作はこれまでに[a:rpia:r]がリリースしてきた中で最も多様性のある作品だ。 シンセ、シンセ、シンセ・・・。『Parcul Cosmos』ではシンセが存分に使われている。アブストラクトでグリッチーなものから("Logic"や"Bub")、メロディアスかつメランコリックなものまで("Saturat"や"Lumo")、音色の幅は広く、削ぎ落したアレンジをしているときのAndreiには無い感覚が含まれている。今回のAndreiが素晴らしいのは、ダンスフロア用のトラック作りに気を向けていないところだ。『Parcul Cosmos』には、切れのいいブレイクビーツときらびやかなシンセによって繋ぎ合わされたエレクトロや実験的なハウスが収録されている。[a:rpia:r]の設立者3人が"Fuzzy Se Întoarce"や"Fără Vanilie Va Rog"といったトラックをプレイしてフロアを盛り上げている光景を容易に想像できる。 『Parcul Cosmos』のようなアルバムが、Andreiや[a:rpia:r]から届けられると思っていた人は皆無に近いだろう。しかし、ルーマニアサウンドの新たな波が、同国で確立されたミニマルから分かれて派生していけば、今後も『Parcul Cosmos』のようなアルバムがさらに生まれていきそうだ。本作は[a:rpia:r]で最も強力なリリースであるわけではないが、とどのつまり、ミニマルを再び活性化させるにあたって、Andreiの音楽が重要な役割を担っている理由を再認識させてくれる。
  • Tracklist
      A1 Saturat A2 Crash B1 Fuzzy Se Întoarce B2 Fără Vanilie Va Rog C1 Logic C2 Spine D1 Lumo D2 Bub
RA