Donato Dozzy & Peter Van Hoesen in Tokyo

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  • LabyrinthをオーガナイズするMindgamesが手掛ける恒例の年始パーティが、今年は“One”というタイトルのもと、代官山UNITで1月9日(土)に開催された。メイン・フロアでは人気のレジデント・アーティストであるDonato DozzyとPeter Van Hoesenが、ライヴ/DJを織り交ぜたハイブリッド・パフォーマンスをオープン・トゥ・ラストで開催するとのアナウンスもあったせいか、前売りチケットは早々に完売。600人限定となったパーティー当日のエントランスには長蛇の列ができ、フロアはテクノ・ファンで埋め尽くされた。 ちなみにDozzyとPeterの2人によるライブ・パフォーマンスはこれが初ではなく、すでに幾度か行われており、お互いが演奏に手応えを感じていたという。それが今回のMindgamesでのスペシャルなパフォーマンスへと繋がったようだ。では2人によるハイブリッド・セットは一体どういう仕組みになっているのだろう。ステージ上にところ狭しを並べられた彼らの機材に目を向けると、Dozzyのエリアには2台のElektron OctatrackにROLAND TR-808、EventideのリヴァーブにMIDAS Heritage(ミキサー)というVoices From The Lakeでの機材群をシンプルにしたようなマテリアル。その一方、PeterはElektron Analog FourにROLAND TR-909、KORG Electribeといったライブ機材に加えてABLETON Liveを併用したハイブリッド・セット。ここからDozzyは基本的にサンプラーを主体にしたライブ演奏で、加えてPeterはLiveを用いたDJも併用するパフォーマンスであったことが分かる。もうひとつ付け加えておくと、彼らが出力していた音質の良さ。これにはPeterの手元に設置されたAlpha Recording Systemのロータリーミキサーが大きく影響しているようだ。UNITのサウンドシステムはJBL PROFESSIONALのラインアレイを用いているため明瞭であるものの、ときと場合によっては音が鋭くなり過ぎることもある。だが、今回は特にキックの丸みやまろやかな高音域が印象に残り、一晩を通して音に没頭しやすいサウンドだった。このあたりにはMindgamesらしい音へのこだわりを感じられた。 オープン時間は少しおし、24時頃に彼らのパフォーマンスはスタート。最初の2時間はお互いが良き塩梅を探っている印象もあったが、このあたりはDozzyのインプロ重視のフィーリングによる部分もあったのかもしれない。その後はPeterが主導する時間帯、Dozzyによる時間帯と、ある程度のタームをお互いがイニシアチブをとりながらお互いが補完しつつ、ミニマルでアシッドなテクノ・サウンドを展開していく。こうやって2人のサウンドを比較してみると、ビートの骨格はふたりとも共通するが、高域の構成音に違いを感じた。整然としたミニマル感で攻めるPeterに対して、よりヒプノティックな変化を見せるDozzy。いずれもアシッディでありながら、両者の個性を感じられた興味深いパフォーマンスだった。2人によるサウンド・ジャーニーにどっぷりと浸かっていると、すでに時計の針は朝7時を過ぎていた。オーディエンスの暖かいアンコールに応えたのち、およそ7時間超にわたるロング・セットは幕を閉じた。 改めて当日を思い起こしてみると、Mindgamesのパーティーは本当に抜かりがない。この日のために用意されたDozzyとPeterのスペシャル・セットはもちろんのこと、Labyrinth同様に機材同士を結線する極太のケーブルに加えて、今回導入されたロータリー・ミキサー、さらに踊りやすい空間を提供するための600人のリミット……まさに至れり尽くせりなフロアにいた幸運な600人にとって、“One”は最高の踊り初めになったことは間違いないだろう。そしてエレクトロ・ミュージックのフリークスにとって一年間で最高に贅沢なジャーニーとなる、9月の迷宮がすでに待ち遠しくなってしまう。そんな気持ちをアディクトさせられる充実した一夜だった。
RA