Fred P - Modern Architect

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  • ニューヨーク出身のFred Peterkinは様々な名義で10年近く作品をリリースし続けてきたが、特に2015年は創作活動を加速させた。今年は彼のメインプロジェクトのふたつであるFred PとBlack Jazz ConsortiumのEPをリリースした他、比較的新しいプロジェクトAnomalyとFP197の作品や、"Fred P Reshape"と名付けた数々のリミックスを発表した。今年はPeterkinにとって多作の年だったが、中でも最高だったのはFP-Oner名義でMule Musiqに提供したヒプノティックなLP『5』だった。Peterkinがダンスミュージックシーンにおけるハードワーカーのひとりであることは既に明らかだが、彼は今年中にもうひとつ作品をねじ込む時間を見つけたようだ。 新シリーズの第一弾と言われている『Modern Architect』の6曲は、彼のDJセットにとりわけフィーチャーされてきたが、いくつかの理由によりリリースされていなかったFred P名義のトラックだ。そのため本作にPeterkinの実験的な傾向は無く、代わりに彼が最もよく知られている理由である、深く潜り込むソウルフルなクラブミュージックに焦点が当てられている。トラックの中盤辺りまで待ってようやく着実なキックの間にハットが振り上げられるなど、"Tokyo To Chiba"はゆっくりと構築されるのだが、本作の全体的なイメージは9分間に渡ってオープニングを飾るこのトラックによって決定されている。分厚いリズムとベースパターンに空間的なピアノが加えられた後、濃密な持続コードや、言葉にならない声を発するボーカル、そして、幾重にも重ね合わせた精巧なハンドパーカッションによって、ジャジーでエモーショナルなダンスフロアの瞑想空間が生み出されている。 以降、Peterkinのトラックはさらにディープになっていく。7分間に及ぶ"Sybian"には、つんのめるコードと躍動するヘヴィなリズムの後ろに宇宙時代の空気が漂っている。"Don't Be Afraid"ではシャッフルパーカッション、ムーディーなコード、魂を焦がすメロディ、そして、Minakoによる女性ボーカルが巧みにアレンジされている。このトラックのアレンジも展開を確信的に控えており、全開の状態になり始めるまで実に6分間を費やしている。 『Modern Architect』を締めくくる"Down Under"は、今年リリースされたあらゆるPeterkin作品よりも、少ない要素で多くのことを成し遂げているのではないだろうか。流れ込むコードにフィルターをかけたサンプル、タムのようなベースライン、そして、連なったオープンハイハットだけを使って、どっしりとしたリズムの舞台上に陶酔感のある勢いを構築している。このトラックは本作で最も万能なDJツールだ。そして、現代のクラブミュージックシーンにおいて印象的な職人でいるために、細かく作り込まれた構造が必須という訳ではないことを明らかにしている。
  • Tracklist
      A1 Tokyo To Chiba B1 Sybian B2 Dub In The Sky C1 Don't Be Afraid feat. Minako D1 Memory P D2 Down Under
RA