ENA ­- Meteor EP

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  • 直近の二作品に渡って、唯一無二の響きを持ったダブステップとドラム&ベースから離れていくENAの動きは加速しているかのようだった。その音楽はより散在的に、そして、より内省的になり、『Divided』の粒子が渦巻く抽象性に至ることになった。Andrew Ryceが同アルバムのレビューで記したように、普段の作品において緻密で正確な一面を持つアーティストにしては、この時のENAのサウンドは顕著なまでに荒々しく、カセット作品『Divided』に未完成な印象を与えることになった。日本人プロデューサーである彼がSamurai Red Sealに提供したEP「Meteor」からはしかし、そうした未完のスケッチがじわじわと解消されていることが分かる。 『Divided』の脈打つ不穏な感覚と、『Binaural』における骨格剥き出しの微細なアレンジの間に、「Meteor」は位置づけられる。しかし、この二作品が繊細で、時として脆弱ですらあったとするならば、本作はそれには当たらない。特に"Bulkhead"や"Insective"は大胆で強度がある。反復し鼓動するリズムには主張力があり、そのノイズは刺々しく意識を搔き乱す。それはこれまでに巡り合ってきた以上に辛辣で脅威に満ちたENAだ。"Bulkhead"の表面下には恐るべき何かがあり、解放を求めてうめき嘆いている。 それに比べると"Body"は軽い。より柔らかく、よりけばけばしいサウンドデザインが、その豊かさと奇妙さを弄んでいる。このトラックはさらに深いディープリスニングへと誘う。一方、"Meteor"のぎこちない拍子と腐食したパーカッションに魅力を見い出すこともできる。それは、より馴染みのあるENAのサウンドを立証する技巧だ。もっとも、彼は以前の調子をまだ取り戻してはいないのだが。
  • Tracklist
      A1 Meteor A2 Bulkhead B1 Insective B2 Body
RA