Takuya Matsumoto - Places Of Colours EP

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  • 喜ばしい事にTakuya Matsumotoの評価は、日本国内よりも海外で一層高くなっているのではないか。というのも新潟のインデペンデント・レーベルであるIeroからのリリースだけではなく、近年はオランダのRoyal OakやUKのMeda Furyからもリリースするに至り、海外のレーベルから期待を寄せられているからだ。大雑把に言えばディープ・ハウスに括られるであろうMatsumotoの音楽には、しかしその生き生きとした豊かな動きの中に哀愁が混在するメロディーや、ロウな音質から生々しさも伝わる味わい深いビートが、ツール向けの作品とは一線を画す要素として盛り込まれている。 Matsumotoにとって2015年の2作目となる本作も、おおよそ今までの路線から大きな変化はなく、むしろファンが期待しているメロディーを大事にした作風が貫かれている。その中で"Souvenir"はざらついたハイハットがジャジーな空気を生む曲だが、しっとりと湿り悲しげなピアノのメロディーや色っぽくも落ち着いた女性のスキャットが情緒深く、その感動的な展開はじんわりと心に沁みるようだ。硬いキックによるでこぼことしたリズムが特徴の"Coco"は、しかし繊細でか細いピアノのコードと優美なストリングスが上品に彩っており、エレガントに舞い踊るその様はハウスのみならずブロークン・ビーツとの相性も良さそうだ。一方で"Filo"はデトロイトのビートダウン・ハウスに接近したロウなビート感があり、光沢のあるコズミックなシンセ使いやボイス・サンプルからは黒い芳香とファンキーな高揚が発せられ、今までの作風から更なる飛翔が見受けられる。そして最後の"Seasons"では柔らかで淡い色彩を伴うメロディーが穏やかな気分を誘い、ジャジーなグルーヴで清々しいまでのハウスを展開する。どれもこれもMatsumotoらしいセンチメンタルなメロディーが感情に訴えかける内向的な作風で、無駄なくすっきりとした装飾の曲は適度なダンスとしての要素もあり、自身の作風を固めてアーティスト性の確立に至っているのは明白だ。
  • Tracklist
      A1 Souvenir A2 Coco B1 Filo B2 Seasons
RA