Roland - JU-06

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  • Juno-106は、そのクラシックなサウンド、比較的入手しやすい価格、シンプルなインターフェイスから多くのスタジオに置かれている。まさに便利な機材で、エクスペリメンタルなエディットこそ不可能だが、暖かく太いベース、分厚くレイヴィーなスタブ、美しく透き通るようなパッドを生み出せるため、中古でも比較的入手しやすいにせよ、RolandのBoutiqueシリーズJU-06としてラインアップされたのは非常に納得がいく。AIRAと同様、このシリーズはクラシックなRoland製品を、アナログコンポーネントをアナログではなくデジタルで再現する、同社自慢のAnalogue Circuit Behaviorテクノロジーを使用している。 その再現方法に関して様々な批判が生まれたことについては、ここで改めて書くまでもないが、Muff Wigglerでのブラインドテストで、SH-101を再現したAIRAのSH-101 Plug-Outのサウンドをオリジナルだと思った人、また逆にオリジナルのサウンドをPlug-Outだと思った人がほとんどだったのは非常に興味深い結果だ。個々の感じ方がこのような議論を取り巻く様々な意見を生み出している。そして筆者の場合は、JU-06のサウンドがオリジナルに非常に近いために、自分が感じた違いは恐らく自分が実際に耳にしているサウンドそのものではなく、オリジナルに対するこれまでの自分の “知識” が影響を与えた結果なのだろうという印象を持っている。その私が感じた違いとは、JU-06の方が明確でクリーンなサウンドに感じられたということで、つまりはパーフェクトな状態のJuno-106とも言える。JU-06はオリジナルのレトロフューチャー的な瑞々しいサウンドを維持しており、オリジナルのクラシックなサウンドを自由に行き来できた。また、Juno-106最大の特徴であるコーラスも非常に満足のいくものだった。 オリジナルと同様、JU-06の操作も非常にシンプルだ。オシレーターはノコギリ波、矩形波、パルス波の3基(パルス幅は調整可能)で、矩形波のサブオシレーター1基もついている。パルス幅とピッチはLFOでモジュレーションをかけることも可能だ。また、ノイズジェネレーターも備わっている。このオシレーター部で作られた信号は次にハイパスフィルター・ローパスフィルターを通過する。ハイパスは周波数だけだが、ローパスは周波数、レゾナンス、そしてエンベロープ、LFO、キーフォローが備わっており様々な調整が可能だ。そしてフィルターを通過した信号は、VCAへと送り込まれ、ADSRエンベロープか、ゲートを通過して出力される。シグナルパスに関しては、オリジナルそのものだ。 バンクには64種類のパッチが備わっており、オリジナルの半数となっている。中にはいくつか似たようなサウンドもあるがまったく同じではない。そしてフロントパネル右下にはJuno-106と同じ2種類のコーラスボタンが配置されている。このコーラスは非常に豊か且つ細やかなサウンドで、どのサウンドにも立体感とステレオ感を与えてくれるが、特にサスティンさせた伸びるようなパッドの時にその効果を発揮する。また、オリジナルの機能のいくつかはこのフロントパネル最下部のボタン群に組み込まれており、複数回押すことで機能させる。パッチのセーブとポルタメントのふたつは特に使用頻度が高いので、アクセスしやすい配置を望む人もいるかも知れないが、操作は非常にシンプルなので、マニュアルを読めばすぐに理解できるようになるはずだ。 恐らくJU-06で最も大きな議論を呼ぶ物理的な変更は、フェーダーの小型化と、ピッチベンドとモジュレーションがジョイスティックではなくリボンコントローラに置き換えられた点だろう。特にフェーダーの小型化については、操作性の精度を下げてしまう可能性があると批判されている。そのような批判をする人たちがどれだけの精度を求めているかについては分からないが、JU-06のフェーダーはやや脆弱にせよ、十分に正確な調整が可能だ。一方、リボンコントローラに関しては、ピッチとモジュレーションの同時操作を難しくしている。ボディサイズの関係でジョイスティックを組み込むのが不可能だったのかも知れないが、1本の加圧式リボンコントローラにまとめた方が良かったのかも知れない。また、見れば分かる通り、JU-06にはキーボードが付属していないが、リボンコントローラを使用してサウンドの試聴が行えるようになっている。また、シーケンサーや別売りのK-25mキーボードでもこの点はカバーできる。しかし、この別売りキーボードは鍵盤のサイズが小さく、また2オクターブしかないため、スタジオ用というよりは、ツアー中に使用するためのアクセサリーというところだろう。 機能面は大量の変更が加えられている。LFOの周波数はオリジナルよりも高く設定できるようになっているので、よりエクスペリメンタルなサウンドが生み出せ、ハイパスフィルターもオリジナルのステップではなく、よりスムースな連続可変になっている。また、シーケンサーにもタイ、ゲートタイム、シャッフルなどを含む数々の機能が追加されている他、ディレイも備わっている。最大同時発音数はオリジナルの6から4に減っているが、大がかりなコードが欲しい場合は、2台をチェーン接続するか、サウンドをレイヤー化すれば解決できる。個人的には価格設定を下げたことを考えると、これは納得できる機能削減に思えた。また、Juno-106のユーザーをずっと悩ませてきたチップの不具合もない。 JU-06がオリジナルのJuno-106と違う点はそれなりに多いが、特筆すべきはその低価格だ。中古を買うよりも出費を大きく抑えられる他、当然ながらスペースも取らないため、移動にも適している。また、先述したような次善策を用いれば、諸問題の解決も可能だ。そして最も重要なサウンドについては、とにかくオリジナルに近い。他の機材と併用すれば、オリジナルとの差は更に小さくなるだろう。Roland曰く半年間の限定生産となる、このJU-06を含めた全3種類のBoutiqueシリーズは、スタジオの主軸となるクラシックシンセを限られた予算内で探している人にとって、購入する価値が十分にある製品群と言えるだろう。 Ratings: Sound: 4.2 Cost: 4.8 Build: 4.1 Versatility: 3.7 Ease of use: 4.6
RA