Novation - Circuit

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  • Novationが新製品を発表する10月1日までに展開したティーザーキャンペーンのキャッチフレーズに使われていたのは「Start Something」という言葉だった。それ以外はほとんど明かされず、インスピレーションやクリエイティブな制作プロセスなどについて一般的な言葉で語るアーティストのインタビュー、そしてプロデューサーたちがその問題の新製品を使っていると思われる巧妙な画像などが使用されていた。そのキャンペーンを経て、満を持して発表されたのがこのCircuitだ。 CircuitのデザインはNovation伝統のデザインが元になっており、Launchpadに似た4x8のパッド、そしてUltraNovaに似た8個のエンコーダーによるシンセエンジンが組み込まれている。そのパッドとエンコーダーがフロントパネルの大半を占めているが、その隙間には様々なモードを切り替えるためのボタン群も配置されている。また、240 x 200 x 35mmというサイズは携行性に優れているが、その小ささにも関わらず、実際の作りは堅牢で、底部がゴム製のため、今回のテストでは置いた場所からずれることなく操作できた。また内蔵スピーカーと単3乾電池6本での駆動も携行性を更に高めており、しかもその残量はスタート時にパッドを使用して視覚化されるため、電池残量について心配する必要がない。外部接続は1/4インチのステレオアウトプットと、3.5mmのヘッドフォンジャック、そして3.5mmジャック(変換アダプター付属)経由でのMIDI IN/OUT、USB端子が備わっている。 サウンドの生成に関しては、2つのシンセパートと4つのドラムパートで行っていく。各シンセパートは最大同時発音数6で、そのサウンドはMiniNovaとUltraNovaで使用されているアナログモデリングのサウンドエンジンによって生成される。プリセットは64種類で、プリセットごとのパラメータは、パッド上部の8個のロータリーエンコーダーにマッピングされている。各プリセットとエンコーダーはジャンル分け/ラベリングがされていないため、Circuitはコンセプチュアルなサウンドデザインをする機材というよりは、実験や発見に重点を置いた機材になっている。4つのドラムパートは更に分かりやすく、各パートは64種類のサウンドから選んでシーケンスが組めるようになっており、8個のエンコーダーで、2つのパートのピッチ、ディケイ、ディストーション、フィルターを同時にコントロールできるようになっている。エフェクトに関しては、リバーブとディレイが備わっており、パートごとにセンドヴォリュームを調整できるようになっている。また、マスターミックスにはハイパス/ローパスフィルターが備わっており、フロントパネル左上の専用のノブでコントロールする。フィルターを前面に押し出している点は評価できるが、個人的にはパートごとにフィルターをかけられる方が嬉しかった。 既に予想していた人もいるはずだが、Circuitにはパッドを使用した様々なシーケンス機能が備わっている。ドラムパートはベロシティ感応型のシンプルな16ステップシーケンサーになっており、パッドを使用したそのステップシーケンサーでは、ドラムパート2つを同時にシーケンスできる他、MPCのように個々のサウンドをノート別に鳴らしながら録音することもできる。シンセも同様だが、機能の数は更に多く、各ステップには最大6ノートがシーケンス可能で、スケールも16種類がプリセットとして用意されている。シンセパートのステップシーケンサーの使い方はCircuitの機能の中で最も素晴らしいと思えたもののひとつで、ポリフォニックなシーケンスが素早く直感的に組める他、シンセパートをミュートし(これは単純にシーケンス不可にするだけだ)、ステップシーケンサーのパッドをノート/コードのトリガーとして使用して、各ステップを好きなようにマニュアルでプレイできるという気の利いた裏技も隠されている。また、残念ながらドラムパートには備わっていないが、シンセパートではステップ数を16以下に設定出来るので、ポリリズムなシーケンスも問題ない。そして、ノートだけではなく、Electron製品のパラメータロックのようにエンコーダーの動きもシーケンスできる。シンセのパラメータや、ミキサーのレベル、エフェクトのセンドなどが記録できるのは嬉しい。この価格帯でこの機能が備わっている機材はレアだ。 各パターンが1小節に限定されているのは残念だが、有り難いことにCircuitはパターンチェンジに対応している。Duplicateボタンを押せば、各ノートやパターン全体を複製できるので、最長8小節まで簡単にパターンを伸ばせる。パターン同士のチェーンも非常に簡単で、最初のパターンを長押ししながら、繋げたいパターンを押していくだけだ。それだけでCircuitは選択されたパターンを繋げたループを作成する。唯一残念に思えたのは、一度チェーンを組んでしまうと、個々のパターンを選択してチェーンを解消しない限り、チェーンからひとつのパターンを選択してエディットすることができないという点だ。そして、シンセ、ドラムサウンド、エフェクト、パターンはSessionと呼ばれるものに保存されるが、Circuitには32のSessionスロットが用意されている。現時点では外部へのバックアップ/エクスポートはできないが、今後可能になると噂されている。 今回のテストプレイの全体的な印象はかなり良かった。まだ改良の余地がある部分もあったが、Novationがこの製品をリリースしたのは正解だったと思える。瞬間的なクリエイティビティを表現するツールとして、また新しいアイディアのためのスケッチパッドとしては、この価格帯でこれを上回る機材はないだろう。Novationが時間と共に改良を加え、ユーザーがオリジナルのシンセやドラムサウンドをデザインしたり、DAWとの連携性(そのデザイン上、Ableton Liveの優秀なコントローラになるはずだ)が高まったりすれば、エッセンシャルな機材になる可能性が高い。まだリリースされたばかりの初期段階にあると言える機材だが、購入する価値は十分にある。 Ratings: Cost: 4.9 Versatility: 4.3 Sound: 4.6 Ease Of Use: 4.2
RA