Simple Things 2015

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  • 英国で非常に多様な音楽性を持つ街のひとつであるブリストル。同市にある複数の会場でバンドとDJのプレイを鑑賞するというアイデアには、飾らない魅力が溢れている。そういったアイデアを実践しているイベントは数多くあるが、その中でSimple Thingsが突出しているのには理由がある。量より質を重んじるブッキングポリシーだ。他のイベントと比較した時、アーティストを可能な限りラインナップに加えようとするもの多い中、Simple Thingsではアーティストの出演時間が十分に設けられており、称賛に値する。ライブパフォーマンスを行うなら60分以上、DJの場合であれば3時間に及ぶこともある。それにも関わらず、すべてを見るのは到底不可能な数のアーティストが2日間に渡る同フェスティバルに出揃った。 Godspeed You! Black Emperorによる開幕パフォーマンスを見るため、Colston Hallに歩いて入っていくと、オーガナイザーがどんなオーディエンスを惹き寄せていたのかが即座に明らかになった。シンフォニーオーケストラのホームとして有名な歴史的会場であるColston Hallには、躍動する9人編成のハーモニーによる利点や、同アクトによるニュアンス、もしくは、それ以外の天才的なアレンジメントについて議論を交わそうとする人々で膨れ上がっていた。絶妙にディストピアな映像が照明を変化させる中、感情と興味心を鷲掴んだモントリオールのポストロックグループは、同フェスティバルの幕開けとして完ぺきに近かった。 それから約12時間後、土曜の鬱蒼とした雨にも関わらず、宴の参加者たちは全開で街に繰り出していた。ブリストルという街の規模における重要な利点は、どの会場にも互いに歩いて行ける距離にあるということだ。つまりそれは、Colston HallでOliver Wildeのローファイなフォークトロニカの後に、Firestation(消防署跡地を利用した会場)でMike Skinnerによる一切合切を取り入れたどこか味気無いアーバニズムを見るために移動しても、比較的、雨に濡れずにいられるという意味だ。 個人的な好みはさておき、午後4時の時点でSimple Thingsは盛り上がりを迎えていた。その状況を続けようとする意志の強さは他の人にも確かに伝播していた。地元のヒーローであるMaximum Joyを見た後は、この日のハイライトのひとつ、テキサスの3人組バンドであるKhruangbinの登場だ。彼らはダブ、ファンク、低域で満たしたサイケデリアを醸成させ、意識に訴えかけるサウンドを披露し、多くの参加者が夕食代わりに飲んでいた地ビールのGemよりも強烈な酩酊効果をもたらしてくれた。夜が更けるにつれ、その宴ムードはさらに顕著になっていった。Warp RecordsのBattlesは、その場から離れることを拒むかのような、抗いようのないリズムセクションで巨大な空間を絶え間なく満たし続け、そこにいたすべての人に踊ると同時に考える「何か」を提供していた。 どうやら快楽主義者たちの半数にとって最終目的地となったのは、迷宮、Lakotaだった。同会場のラインナップはどこから見てまわろうか迷ってしまうほどだ。午前0時以降、Untoldが繰り出す推進力は、極めて保守的な人たちさえもその場に留め、グリッチと拍を外したノイズを4つ打ちに交えたいつもの荒々しい選曲を届けてくれた。Objektによる3時間セットは、現在、彼がDJブースに欠かせない存在のひとりである理由を明らかにしてくれた。空間系ブロークンエレクトロから、拳を突き上げたくなるダーティーなテクノ、みんなが一体となるようなグルーヴィーなハウスまで、すべてを網羅した彼のセットは、楽しさとシリアスさを同等に感じさせる多様性のお手本と言えるものだった。このレビューでは、HodgeとRandomerによる豪快なバック・トゥ・バック、Galcher Lustwerkのとびきりディープなハウス、そして、午前9時まで続いたアフターパーティーなど、見逃してしまったものも多かったが、それはまさにSimple Thingsが数多くの見どころを用意していたということだ。
RA