The Fantasy - Secret Mixes Fixes Vol.17

  • Share
  • 「実在しないArthur Russellの素晴らしい楽曲をDanny Krivitが素晴らしくテープエディットして、それをLarry Levanがプレイしている、という架空の過去に私たちは生きてみたい」とは、Secret Mixes Fixesのマニフェストに書かれた言葉だ。同エディットレーベルは2003年から運営されており、彼ら曰く「中西部サウンド全体に影響を与えた音楽」をDJフレンドリーに解釈してリリースしている。その中にはPrinceやChris & Cosey、そして、The Fatback Bandらが含まれる。Ronaldo Mystiqueと名乗る人物が運営するこのホワイトレーベルは、「ゲイディスコの扱い方マニュアル」を自称するBath House Etiquetteというサブレーベルを主宰するGay Marvineや、デトロイトのベテランDJふたりが匿名で手掛けるThe Fantasyらのエディットを、この2年間の内にリリースしてきた。そして、17枚目となる本作を届けてくれたのもThe Fantasyだ。 Aサイドには、喜びに満ちたディスコトラックを素材にしたエディット2曲が収録されている。"Jerked Out"の原曲はThe Timeの"Jerk Out"だが、舞い上がるようなコーラスが取り除かれ、澱んだ仕上がりになっている。"Strong Dub"の原曲はCaroline Crawfordの"Coming On Strong"だが、DJが好みそうな、イントロ部の巧みなドロップとテクノに匹敵する勢いが備わっている。しかし個人的に素晴らしいと思うのはBサイドだ。"CH BB"はバウンシーなエレクトロツールだ。しばらく硬質な音を立てた後、分解され、逆再生のドラムループによる旋風に変わっていく。"Chrome"はフィードバック音に付け込んだ、若干ポストパンクを感じさせるトラックで、ズタズタにされたボーカルはSkinny Puppyを彷彿とさせる。奇妙なトラックではあるが簡単にミックスができ、ジャンルがぶつかり合うサウンドや、もしくは、「何だこれ!?」という瞬間を実現するのに完ぺきだ(今回の収録曲は結局のところ、すべてDJツールなのだ)。そして、好奇心をかき立てられるこのレーベルに影響を与えていたのも、もともとはそうしたサウンドである。
  • Tracklist
      A1 Strong Dub A2 Jerked Out B1 CH BB B2 Chrome
RA