Danny Scrilla / DJ Madd - Higher Plane / Interstellar Dub

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  • ポートランドのZamZam Soundsは特異なダブレーベルだ。新しいプロデューサーの新作をリリースし、純粋なダブ信者たちだけでなく、ダブを聞き始めたばかりの人たちなども惹きつけている。Beat PharmacyやDJ Madd(aka Peter Simon)による昨今のリリースで証明されているように、彼らはルーツサウンドに忠実でありながら、ルーツサウンドの枠を超えていくこともいとわない。今回、DJ Maddが2曲のトラックを携えて再びZamZamに帰ってきた。Danny Scrillaのデビュー作となる7インチと合わせて聞くと、ワンツーパンチのように機能する。この2枚の7インチでスポットが当てられているのは、普段、ストレートなダブを作っていないダンスミュージックプロデューサーだ。 ふたりの内、ダブを制作することが苦にならないのはDJ Maddの方だ。これまで彼が手掛けてきたダブステップ作品は、どれもレゲエに影響を受けている。彼はダブステップの先祖にあたるサウンドを、その子孫と調和させることに焦点をあてたRoots & Futureというレーベルを始動している(このコンセプトに相応しいレーベル名だ)。彼にとってZamZamから初となる7インチが昨年リリースされたが、そこにはデジタルダブを滲ませた伝統的なサウンドを生み出す鋭い感覚があった。そして、「Interstellar Dub / Spook Dub」は前作に恥じない仕上がりだ。彼のダブステップはこれまでBPM140で制作されてきたが、何より明らかなのはそのスイング感だろう。そうしたトラックで鮮烈なのは、メロディーそのものをすり抜けながらベースラインを組み、ローエンドでジグザグによろめくのではなく、前に向かってベースラインを押し進めているところだ。"Interstellar Dub"は全編を通じて揺れ動き、一方、"Spook Dub"では、蒸気オルガンが不気味な色彩を加える中、抑制され乾いたパーカッションが鳴らされている。 ドイツ人プロデューサーであるDaniel Pirkl(Danny Scrilla)は、BPM150越えの「Higher Plane / Maroon」上にドラマティックな路線を持ち込んでいる。フルートが原動力となっている"Higher Plane"では、フットワークのように跳ねたり弾けたりするリズム上でメロディカが長い吐息を吐き出す中、新旧のサウンドがブレンドされている。若干テンポが速い"Maroon"は、崩したベースラインがクラシックなダブのホーンサウンドを補完しており、DMZスタイルのダブステップを感じさせる。この2曲もSimonの7インチと同じく、新鮮なアレンジとサウンドでオールドスクールなダブにアプローチしている。
  • Tracklist
      Danny Scrilla - Higher Plane / Maroon A1 Higher Plane B1 Maroon DJ Madd - Interstellar Dub / Spook Dub A1 Interstellar Dub B1 Spook Dub
RA