- Altarは、ベルリンを拠点に多岐に渡って拡散を続けるSamuraiファミリーから現れた最新レーベルだ。Altarを母体とは切り離して運営していくことを決めるまでに、設立者のGeoff Wrightは時間を要さなかった。このレーベルは単なる派生物ではなく、むしろ同人物がキュレーションを手掛ける全く新しい試みだ。Samurai関連の他レーベルはドラム&ベースをルーツに持っているが、Altarはそこから離れて全体としてテクノを取り入れている。同レーベルの1枚目はニューカマーであるNastikaから届けられた。提供された偏執的な迷宮音楽4曲は、若干ではあるが、アクの強さを無くしたFisのようなサウンドだ。
しかし「Incantation」は単純明快な内容である訳ではない。タイトルトラックでは生き残りを賭けた戦慄の光景が広がり、骨の打音や不吉なドローンが鳴り響いている。一方、"Immure"では電気有刺鉄線で包まれているかのようなベースラインによるひび割れたグルーヴが展開している。"Rapture"の奇妙なブロークンビーツには90年代のCoilを感じさせる。そして、"Daeva"では全要素がひとつの強力な塊へと丸められている。
Altarの1枚目がカバーしているのは新たな領域ばかりではない。本作のサウンドはEnaやFisといったSamuraiのアーティストのファンであれば馴染みがあるだろう。突き詰めれば、ドラム&ベースに対するSamurai HoroのアプローチをAltarはテクノに対して行っている。つまり、ジャンルの試金石となるものを解明しているのだ。しかし、そうしたアプローチは試すだけの価値があることが多い。そして、「Incantation」はその強力な第一歩だ。本作は奇妙なテクノを探している人にはもちろん、単にダークでズタズタになったエレクトロニックミュージックを好む人にもアピールする1枚だ。
TracklistA1 Incantation
A2 Immure
B1 Rapture
B2 Daeva