PLO Man - Stations Of The Elevated

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  • Acting Pressの初リリースを飾ったCC Notの「Geo Fi」には、多くのことを考えさせられた。これまでの人生で数え切らないほどのダンスミュージックを浴びてきている人には、ベルリンとバンクーバー出身のメンバーによるプロジェクト、CC Notがズレた視点から音楽を制作する様は、非常にかき立てられるものがあっただろう。あれほど素晴らしく感覚がズレた作品はなかなか無い。一方で、CC Notと関係を持ちベルリンを拠点に活動をするPLO Manによる新作EP「Stations Of The Elevated」では、Acting Pressはそのズレを正しく直そうとしているような印象だ。 結果、本作は分かりやすく楽しめるようになっているが、酩酊感は少なくなっている。ヒスノイズによるアンビエンス、特大のキック、パッドスタブ、そして、ブレイクビーツを少し - 表面的に見れば収録曲そのものはそれほど特徴立っているわけではない。Sex Tags Maniaをドリーミーにしたようなサウンドと言えるだろうか。しかし同時に、収録曲はそれぞれ独立した印象になっている。Aサイドの"Rare Plastic"と"Nearly Invisible"は2曲でひとつの壮大な作品として機能しており、キリキリと巻き上げられたシンコペーションによるリズムから、16分のクリック音が刻まれる直線的で緊張感のあるトラックへと展開していく。徐々に変化していくサブベースの減衰から、柔らかなアンビエント空間で果てしなく増殖し続ける生物のようなサウンドまで、PLO Manのアレンジはどれも緻密だがやり過ぎではなく、確信的だが自分に酔っているわけではない。 "Type Damascus"は風通しが良く、激しさも増している。このトラックでは、パッドが一筋のゆらめく蒸気になるまで削ぎ落とされているが、ドラムサウンドにはターボチャージャーが搭載され、猛烈な勢いで束の間の興奮状態にリスナーを導く。実に3分間にも渡ってパッドだけになる展開には驚かされ、ひどい二日酔いで海を漂っているような気分になる。つまり、思考をしっかりと紡ぐことはできないけれど、他に行き場所が無い感覚だ。
  • Tracklist
      A1 Rare Plastic A2 Nearly Invisible B1 Type Damascus
RA