Stephanie Sykes - Black Simulation

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  • 昨年、Dasha Rushのレーベル、FullpandaからFjäderと共に発表したスプリットEPによるデビューで今後の展開に大きな期待を集めたStephanie Sykes。彼女に取って初のソロ作品「Black Simulation」はイスタンブール/ストックホルムのレーベル、VENTからリリースとなる。本作はドイツ生まれにして英国を拠点に活動するSykesによる魅惑的な試みだ。音響的要素と共に丁寧に重ね合わせ、音数を抑えた空間的なテクノスタイルは、Fullpandaでのトラックにおいても取り入れられていた。今回のSykesは広範なアレンジを施した3曲を仕上げてきた。その内1曲はDasha Rushによってリミックスされている。 タイトルトラックである"Black Simulation"には、ドラムが使われていないながらも唸り声を上げるサウンドスケープが広がっており、不安感をあおる微細なドローンが無数に立ち昇り始める。本作のハイライトは"Creep"だ。かろうじてスイングさせたキックと執拗なトレモロによるリズムにより、ダンスフロアに接近した内容となっており、トラックはギターの嘆きや耳をつんざくような音色、そして、不安げなメロディの中を注意深く進んでいく。逆サイドに収録されたBPM140の"Hyper"が制作されたのは実は4年前だそうだ。ドラムサウンドは鋭く重厚な鳴りをしており、Sykesのサウンドに不可欠な、展開を抑えた広々としたアプローチはここでも共通している。長めのブレイクにおいて圧搾されたアシッド音がほんの少しだけしか使われていないのが良い例だろう。Rushによる"Hyper"のリミックスは期待通りの仕上がりだ。よりストレートでDJフレンドリーなアレンジでは、力強く重心の低いドラムサウンドとリバーブの効いたアシッドリフに、原曲における極上のバイブスが縫い合わされている。本作はテクノ界における新たな才能の登場劇がまだ終わっていないことを示している。
  • Tracklist
      A1 Black Simulation A2 Creep B1 Hyper B2 Hyper (Dasha Rush Remix)
RA