Yone-Ko in Shizuoka

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  • 大都市のイベント過多な環境では薄れがちな一晩に注力する感覚と、シーンを取り巻く人々の結束力、これらの要素に支えられた特別な瞬間こそ、地方都市のパーティーの醍醐味だ。そう改めて実感できたのが、静岡のLekkerクルーによる新パーティーGeherだ。迎えられたゲストは、渡独3年目にして、ベルリンの地下志向なテクノ・ハウスの中心地Club der Visionaereにてレジデントの座を掴んだYone-Ko。3週間にわたる来日ツアーの締めくくりとして、キャリアをスタートした静岡で渾身のセットを見せてくれた。 この日の会場Dazzbarは、2014年2月にオープン。姉妹店のJakataの流れもあり、DJ MasdaやTakaaki Itohといった国内の有力アクトもたびたびDJを行っている。ブースの横にはPA用のやや小型のスピーカーが配置され、後方には大型のサウンドシステムを思わせるスピーカーが目を引く。出音は規模に合った、聴き疲れしないちょうど良さ。気軽に訪れ、長く滞在できる居心地の良さがあった。 筆者が到着した時点で、この日の2番手yskがDJをスタートしていた。グルーヴの揺らぎを抑え一貫した空気感をキープしつつ、癖のあるフレーズのシカゴハウスもプレイ。徐々に高揚感をもたらした上でYone-Koにバトンタッチした。出演者やスタッフ同士のリラックスしたムードを感じられたが、サウンド自体に内輪感は全くナシ。Yone-koはマシングルーヴ色の濃いディープハウス・テクノを中核に据えたセットを展開。細やかなEQや音量操作によって、驚くほど違和感なく曲同士をつなげていくスタイルは健在だ。むしろ、以前よりもさらに磨きがかかっているようにも感じる。徐々に階層を下るようなヒプノティック・テクノの反復が、終盤にかけてのエモーショナルな曲展開を引き立たせるよう。彼独特のドラマを感じさせる、完成度の高い音楽体験を楽しむことができた。続くmaaboはスムースで、どこか色気のあるテックハウス・ディープハウスに緩やかにシフト。色付けやえぐみのない、シンプルだが不思議と飽きのこない展開はまさに玄人技だ。浮き沈みなくひたすらフラットで、かつ軽快さを保ち続けるグルーヴは、Yone-Koに勝るとも劣らない勝るとも劣らないインパクトがあった。 この日はYone-Ko自身も「同窓会!」と笑うほど、彼と縁深い出演人・スタッフが集結しており、そのため各DJの息もぴったりで、サウンドにもジャンルを超えた統一感があった。店内にはドイツの青信号マーク(独語でGeher)をかたどったデコレーションが一面に飾られ、さらにドイツを訪れた人にはなじみ深いカリーヴルスト風のフードも。ライブペイントやパーティーのために作られたTシャツにもこだわりが表れていた。“神は細部に宿る”という言葉が思い浮かぶような、楽しむことへの妥協のなさを随所に感じる一夜であった。 Photo credit: az
RA