Lowtec - Man On Wire

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  • Jens Kuhn(Lowtec)が最後に発表したレコード「Workshop 20」を特徴付けていたのは、ゆっくりとした性質と官能性だった。だからと言って、Workshopの共同設立者である彼はそうした性質を好んでいる訳ではない。しかし、彼の最新作も同じく気だるい魅力があることを考えれば、こうしたムードをKuhnがさらに取り込もうとしているように思えてくる。プロデューサーとしてのKuhnの能力をこれ以上証明する必要は無いだろう。そして、最近の彼の音楽は独自の路線で極めて心地よく響いている。 「Man On Wire」のタイトルトラックはBPM100に沿って傾いており、しっかりとしたグルーヴを紡ぐことなく、きらめくローズの和音と変容させたパーカッションが鳴らされている。"Man On Wire"というタイトルはおそらく同名の映画のことだろう。しかし、このトラックには映画のように向こう見ずな挑戦をしている感覚はほとんどなく、優雅で気楽なダウンテンポが展開に従って魅力を増していく。"Reconstruction"バージョンはハウス仕様になっているが、Kuhnはアレンジメントに十分なスペースを残しており、まるで軽めに叩かれるドラムサウンドと黄昏時のシンセコードが意図せず組み合わされているかのようだ。"Hidden Track"の前半は、よりダイレクトな興奮を届けてくれる。序盤のグルーヴはKuhnの最も心地よいフロアアレンジとしてお馴染みのクリップさせたファンクを思わせる。しかし、程無くすると、「Workshop 20」のA2とほぼ同じメランコリックなコード進行が、異なる方向性へと誘い始める。煌びやかな瞬間はほとんど無いが、依然として非常に聴き応えのあるトラックだ。
  • Tracklist
      A1 Man On Wire A2 Man On Wire (Reconstruction) B1 Hidden Track
RA