Up To You with Lazare Hoche, Yoshitaca

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  • 時折、「このアーティストも来日するのか!」と驚かされる告知があるが、中目黒のSolfaは特にその会場となっていることが多い気がする。お洒落なイメージの街とは裏腹に渋好みなアクトによる自由なパーティーが行われているが、その中でも今回のUp To Youには驚かされた。ここ最近で急成長し注目を浴びているとはいえ、Lazare Hocheの名と作品を知っている人は東京でもそこまで多くはないだろうと思っていたからだ。しかし、そんな勝手な心配も、Solfaのフロアに入るとともに杞憂だと判った。 オープンからロングセットを務めていたのは、Fasten Musiqueの中核Yoshitaca。ラフなミックスと骨太なビートで勢いをつけつつ、そこに流麗なフレーズを乗せ、ムードを高める。Fastenのリリースから伺えるモダンなハウスグルーヴとはまた違った一面を聴くことができた。この時点でフロアには人の流れが生み出されており、オーディエンスとDJとの呼応が感じられた。ラウンジはOkaからスタート。ディスコからハウスまで振れ幅大きめな選曲ながら、ラウンジの流れを意識したプレイ。Naoはより音数を減らし、ルードな感覚のミニマルからデトロイト系のディープハウスへと移行していく。その裏でもYoshitacaがUS系のファンキーなグルーヴを組み込み、さらにフロアの盛り上がりを高めていた。 続いて本日のゲスト、フランスの新鋭Lazare Hocheが登場。キックや上物のスウィング感、楽曲のテンションを保ちつつ展開する欧州ディープハウスの正統派といった印象だ。ClassicからリリースされたJean Caffeine aka Luke Solomonの楽曲や、MD’Z Revengeなどのレアな盤も躊躇なくプレイ。HeadcoreやNinbus Qurtetの作品を自身のレーベルから再発したことからも伺えるディガーっぷりを発揮していた。ベースラインの連なりをEQで抜き差しするシンプルなミックスだが、ブース狭しと踊る姿も含め、フレッシュな勢いを楽しむことができた。 一方、ラウンジは緩やかなトーンを保ちつつ、多くの人が会話に興じていた。Kyohsuke Taniguchiはシンプルなテックハウスで空気を切り替えつつメロウな展開も見せる。Masakatsu Sanoは引き継いだムードはそのままに、より持続したグルーヴへと転換していた。メインの終盤は、I:Cubeのクラシック"Disco Cubism (Daft Punk Remix)"からLazare HocheとYoshitacaとのB2Bがスタート。共にバウンシーなディープハウス中心の、小細工のないストレートな選曲で、高揚しきったフロアのテンションを落とすことなく走り切った。 日本では地理的にもヨーロッパからゲストを呼ぶにはコストがかかるからか、ある程度の知名度とキャリアを持ったアーティストが週末のラインナップほとんどを占めていることが慣例となっている。だからこそ今回のUp To Youのように、臆さず次世代のニューカマーを招致してくれるパーティーは、シーンに新鮮な風を送り込む役割としても重要ではないだろうか。巧拙とは別の次元で、フランスらしいハウス偏愛を受け継いだ25歳のLazare Hocheのプレイは、落ち着いたベテランにはない熱さがあった。パーティー自体も20代のクルーとその周縁のDJによってつくられているとのことで、ありきたりな感想ではあるが、次の一手が楽しみでならない。 メインはDJ2人のみという贅沢なタイムテーブルながら、早い時間からSolfaのどちらのフロアにも人があふれ、最後まで盛り上がりをキープし続けていた。客層は音楽へと意識が向いている人ばかりではなかったものの、この夜を楽しもうとするエネルギーが共鳴し、良い空気が流れていたと思う。無我夢中になって踊るには少々混みすぎていたけれど、それも一つの成功の証と言えるだろう。
RA