Marcos Cabral - Buried Alive Twice

  • Share
  • 5年前の発足以来、多くのレコードをリリースしてきたL.I.E.S.だが、Marcos Cabralの『False Memories』のように適確にレーベルのパーソナリティを捉えたタイトルは少なかった。拡張的で時として暴力的なこのLPはCabralによる初期の音楽実験をまとめたもので、その中には本人さえ作ったことを覚えていないというトラックすらあった。鋸歯状のフロウと弛んだカセットテープのサウンドは、後にChemotex名義による鋭利なハウス作品で探求することになるざらついた音楽性を再燃させた。そしてCabralは、今回の『Buried Alive Twice』によって『False Memories』に匹敵し得る作品を生み出した。Chemotexでも取り入れられている焼け付く融合物により、先のアルバムのアマチュア精神を再び生み出している。 L.I.E.S.はロウなアナログハードウェアジャムというアイデアの典型的存在だが、そんなレーベルにとっても『Buried Alive Twice』は本当にロウに映る。直接ミキシング卓に録音する昔のパンクロックの手法を思い起こさせるストレートな性質が作品から感じられ、収録曲はコンピューターを介しているようには決して聞こえない。『Buried Alive Twice』で最も荒々しい瞬間は敵対的ですらある。例えば、"Shallow"は辛辣なアシッドラインとガラガラヘビが威嚇しているような興奮したスネアロールによるドラムトラックだ。こうしたスネアと反響音、そしてカッティングは本作で最も顕著なサウンドで、"That's Not A Bathroom"では鼓膜を切り裂きそうにすら感じられる程だ。単なるローファイサウンドを超え、一般的なダンスミュージックの仕掛けを強力な武器にまで磨き上げているのは、この不快なまでに密室的で突き刺すようなアプローチだ。 『Buried Alive Twice』のテクスチャーに含まれるこうした要素が、ストラクチャーには欠けている。しかし、その予測不可能性も楽しみの一部だ。項垂れたように動く1曲目の"Mind Of Minolta"は、高密度のベースラインとハイピッチのブリープ音が爆発的な特性を生み出している。まるでのっそりとしたドラムトラック上で揮発性物質を混ぜ合わせ、ぶくぶくと泡立てているかのようなサウンドが多い。"Not Alive Yet"にも同様の不安定さがある。歪んだスピーチの断片が不安げなグルーヴから野暮ったく現れては消えてゆき、醜くけばだつサウンドがゆっくりとすべてを覆い尽くしていく。 『Buried Alive Twice』はイージーリスニングではないし、そもそもそんな風には作られていない。収録曲の内、数曲はDJセットでも機能するかもしれないが、論点はそこではない。Cabralにとって2枚目のLPとなる本作では、彼の破壊的衝動を燃え盛るダンスミュージックに注ぐのではなく、その衝動を化膿させ燃え立たせているのだ。本作は『False Memories』とは完全に異なる時代に作られているが、『False Memories』を素晴らしい異端作たらしめた要因となるものを『Buried Alive Twice』も近しく掴んでいる。本作は即興的な作品だ。それは時にすばらしく、とびきりパンクなのである。
  • Tracklist
      01. Mind Of Minolta 02. Buried Alive Twice 03. That's Not A Bathroom 04. Shallows 05. Not Alive Yet 06. Back Seat
RA