DJ Nigga Fox - Noite E Dia

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  • 「Noite E Dia」の大部分は従来の感覚から言えばあり得ないサウンドに聞こえるかもしれない。しかし、グリッドに沿わずに打ち込まれる猛々しいパーカッション、適当に弾いているようなシンセ、実体の無いおかしな声など、リスボンのアーティストDJ Nigga Foxがアレンジする作品はどれも「あり」だと思う。収録された4つのトラックはとても奇妙かつ熱狂的で、威圧的にすら感じられるが、それでいてダンスフロアを解き放つような活性がある。 Nigga Foxは一枚目のEPのタイトルを「O Meu Estilo(自分のスタイル)」としていたが、彼が真の意味で自分自身のサウンドを確固たるものにしているのは今回の「Noite E Dia」だ。本作の中では比較的分かりやすいトラック"De Leve"は、ゆっくりとバウンスするやんちゃなタハシンニャで、リスナー全員に大声で呼びかけているようなシンセが使われている。このトラックは"Tio Kiala"や"Um Ano"のようなやり方でリスナーの感覚を揺さぶってはいないが、ドラムのプログラミングは同じくざっくりとしており、まるでNigga Foxが使っているFruity Loopsからクオンタイズ機能が取り外されているかのようだ。 本作で最も多く使われている要素はパーカッションだが、かと言って常に一番目立つように使われている訳ではない。例えば"Um Ano"でのカタカタと多量に刻まれるハンドドラムの下では、何とも奇妙なグルーヴに向かって地震のような低域が揺らいでいるし、一方、"Apocalipsiii"ではソリッドなキックパターンがべっとりとしたリズムの支柱となることで、ベースラインとカエルのようなエフェクトを思う存分解き放つことが可能になっている。しかし、どんなに各アレンジメントが制御不可能でぶっとんでいるように聞こえても、そこには完全にレールから外れ切ってしまわないように繋ぎ止めるものが何かしら残されている。 B1に収められた"Tio Kiala"で「Noite E Dia」はクライマックスを迎える。このトラックはマッチョな叫び声と狂乱のドラムパートによる強烈なクドゥーロだ。力強いポルトガルのクラブミュージックの好例だ、と言って終わらせることもできるかもしれないが、このトラックでNigga Foxは唯一無二のやり方でジャンルの壁と既成概念を打ち砕いている。彼は新鮮なパーカッションやはつらつとしたシンセフレーズをコンスタントに投入していき、ほぼ全ての小節において次々と荒唐無稽なパターンを生み出している。まるでお馴染みのスタイルでどれだけ新しいことができるのか見せつけているかのようだ。"Tio Kiala"は様々な展開を経て最後にビートがループしているのだが、それを聞くとNigga Foxがまだまだトラックを展開させていきそうな気分になってくる。
  • Tracklist
      A1 Um Ano A2 Apocalipsiii B1 Tio Kiala B2 De Leve
RA