Various - Raw - Iero Specimen -

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  • 2003年、Kouji Nagahashiによって新潟に設立されたIeroは、年に一枚程のリリースペースと寡黙な活動ながらも日本よりは海外で高い評価を得ているレーベルだ。デトロイト・テクノやディープ・ハウスに影響を受けたように、トラックをツールとしてではなくソウルを丹念に編み込み豊かなハーモニーやメロディーを重視した作風が特徴で、日本的な侘び寂びも発する点が海外にこそ目立って聴こえるのだろうか。 レーベルにとって一年ぶりとなる新作は、「Raw - Iero Specimen」=「生の家路の標本」というタイトルが示す通りにレーベルの音楽性を指し示すショーケース的な内容だ。レーベルオーナーであるKouji Nagahashi、そしてレーベルの看板的アーティストのTakuya Matsumoto、そして新潟の新鋭であるMasashi Kuritaが曲を提供しており、レーベルの音楽性を理解するには最適であろう。Matsumotoによる"Chocolate Giants Part 2"は温かみのあるエレピやシンセの音を用いてメランコリックなメロディーを紡ぎ、生っぽい変則的なキックがジャジーなグルーヴ感も生む切ない曲だが、このフロアの狂乱からは隔離したような寂静な世界観は正に侘び寂びと言う表現が的確だろう。Nagahashiによる"Lost Crown"はライブ感溢れる粗いジャジーなビートと、そこに気怠いピアノやフルートの音色が滴るようなメロディーを配しているが、そこからは宗教的な厳かさと黒っぽい艶やかさが立ち込めている。またKuritaによる"Raw Emo"も素晴らしく、乾いた4つ打ちが永遠としたリズムを刻む上を幻想的なシンセのリフレインが残響が淡い余韻を残すミドルテンポのこの曲は、10分にも渡って微細な変化を展開しながら長い旅路の果てに切ない感動に出くわす。その他含めて計5曲の新曲はどれもが決して大袈裟な音楽観は無く、むしろ内向的でどれも慎ましささえ感じられる叙情性の強い世界観が共通しており、Ieroの方向性を指し示しているようだ。
  • Tracklist
      A1 Takuya Matsumoto - chocolate giants part 2 A2 Kouji Nagahashi - my soul desert A3 Masashi Kurita - WATERCITY ( short edit ) B1 Masashi Kurita - raw emo B2 Kouji Nagahashi - lost crown
RA