Bloc. 2015

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  • 当時、RAを含む各誌で報じられたように、前回のBloc.は惨事であった。2012年7月、2日間に渡るイベントの1日目の夜が始まったほんの数時間後に、会場のLondon Pleasure Gardensには警察が押し寄せ、ロンドン初開催だったBloc.は中止に追い込まれた。数千人ものパーティーピープル達は、チケット代として払った£100以上を失い、Bloc.は破産状態に陥った。そしてUKのダンスミュージック・コミュニティは、国内トップクラスの人気を誇る同フェスティバルが消えてしまうことを嘆き悲しんだ。 だが、Bloc.は復活した。2013年2月、彼らはイーストロンドンを拠点に、セミ・レギュラーのクラブナイトをスタートした。次第に2012年の悪夢は皆の心から消えていき、Bloc.は信頼を取り戻していった。そして、2014年10月に大きなニュースが発表された。Bloc.が2015年3月に、3日間のフェスティバルとしてバトリンズの街に戻ってくるというのだ。もし2012年の惨事の直後、3年後の自分が再びマインヘッドを訪れることになると知ったら、当時の私は腹を抱えて大笑いするだろう。しかし、事実私は、金曜の午後にM4(イングランドを走る高速道路の1つ)を下っていた。 困ったことに、ひどい交通渋滞のおかげでロンドンからの移動時間が予想以上にかかってしまい、筆者の他にも何百人という参加者が遅れて会場入りしたようだ。筆者は11時間という長旅の末ようやく現地に到着した後、Hudson MohawkeがプレイしていたCentre Stageに直行した。敷地内のバンガローが改装されているほかは、フェスティバルのレイアウトや、バトリンズの巨大アリーナにある大小5つのステージで様々な音楽が鳴り響いている点は、2011年当時とほぼ変わっていないように感じた。無数のファストフードの屋台や、ゲーム機が放つ安っぽくギラギラとした光は相変わらずであったし、クラウドはかつてのBloc.らしく、ロンドンやブリストルから訪れた若者、もう少し大人のレイバー、業界関係者まで、あらゆる人種が入り交じっていた。週末中、会場のヴァイブはただひたすらフレンドリーであった。 金曜の夜、フェスティバルは最高のスタートを切った。上の階では、Hudson MohawkeがアンビエントやEDMじみたトラック、Notorious B.I.G.等を織り交ぜ、やりたい放題の狂気溢れるプレイをしていた。一方、下の階にあるRedsステージではObjektが持ち時間の1時間を高速ベース/エレクトロで突破し、その後半分ほど埋まったFACTステージではRødhådがカリスマティックなテクノを披露した。実は、フェスティバルのチケットがソールドアウトしていないと噂されていたのだが、それも納得できた。ダンスフロアが常に満員ということはなかったし、音楽はほぼ最高だったのにも関わらず、会場のパワーが落ちてしまう場面が時折見られた。しかしこれによって、Jackmasterの突然のキャンセルが不幸中の幸いに転じたようだーこの時Robert Hoodの出演フロアがCentre Stageへ変更されたのだが、ヘッドライナーが1人減った代わりに、大勢のクラウドがこの夜最高のセットを目撃することとなった。Hoodは"The Bells"から自身の"Never Grow Old"へと繋ぎクライマックスを迎えた。フロアは終始多幸感に溢れ、これぞパーティーといった雰囲気だった。 スタート当初より、Bloc.のセールスポイントは秀逸なラインナップにあり、土曜日に関してはその典型的な例であった。Levon Vincentが90分間のムーディーなテクノで口火を切り、その後Omar-SとMoodymannのダブルパンチによってフロアは一気に活気づいた。Omar-Sが"The Shit Baby"、"Here's The Trance Now Dance"、"Day"など自身のヒット曲を次々に投下してクラウドを喜ばせた後に、KDJはJ DillaやO.D.B.、Andrésといった方向に転換。セット中盤に差し掛かると彼はRick WilhiteとOmar-Sをステージ上に呼び、後者は1回目のセットを聴き逃した人の為に再び"The Shit Baby"をかけてみせた。 一方Carharttステージでは、Dean Bluntがおそらくこの週末で1番挑戦的であっただろうパフォーマンスを行っていた。彼は自身の最新アルバム『Black Metal』の歌ものから始め、最後の20分間を強烈なストロボライトとドローン、ホワイトノイズで締めくくった。そのコントラストは実にパワフルで、ゾッとするような雰囲気さえあり、フェスティバルに刺激的なエッジを与えていた。続いて登場したAutechreもまた、フェスの空気を見事に無視し、完全なる暗闇の中で難解かつグリッチーなエレクトロニカを披露した。 持久力のある人たちにとって、Carharttステージのアフターアワーズは今回のフェスティバルの中でも最高の時間の1つとなっただろう。金曜にはBody Hammerが素晴らしい仕事をしてくれたが、次の日の夜World Unknownがプレイしていたフロアでは、大勢の変態達が遊んでいた。また、Andy BlakeとJoe Hartはダンサブルなテイストを披露。パーティーが終わる午前10時まで、ドラッギーな音楽と雰囲気が続いた。E.S.Pの"It's You"は、この夜1番のハイライトであった。 2日間に及ぶフルスロットルのパーティーの後、日曜の夜にファンシーな仮装をし始めたクラウド達は疲れきった笑顔を浮かべていた。I Love Acidステージのサプライズゲストは、絶対にAphex Twinだろうと、フェス開始直後から噂されていた(彼は金曜日にアーケードをぶらついているところを目撃されている)。しかし、実際ステージに登場したのはSpace Dimension Controllerだった。彼はFreestyleの"Don't Stop The Rock"をはじめとするド派手な クラシックスをかけ、小さなフロアを大いに盛り上げた。 全部で5つのうち3つのステージしか開いていなかった日曜日は、最も混雑しエネルギーに満ちた1日となった。汗まみれのRedsステージでは、Randallがバキバキのドラムンベースとジャングルを巧みにミックスしクラウドを沸かせていた。最もエレクトロニックなヴァイブに満ちていたのは、Ben KlockとMarcel DettmannがCentre Stageで披露した、今回のフェスティバルのクロージングセットだった。真夜中の洞窟のような空間で2人が繰り広げる、キャッチーで大箱向けのテクノに、大勢のレイバー達が拳を突き上げ狂喜乱舞した。最後の1曲にDettmannが選んだのは、LFO VS. Fuseの"Loop"。白い紙吹雪が我々の上に舞い上がったと同時に、クラウドは雄叫びを上げた。 2012年、Bloc.は多くの人を混乱させた。しかし、それ以前からBloc.のことを知り、信じていた人たちは、ロンドンで起きたことが大きなミスに過ぎないということを当然のように分かっていた。この週末の完ぺきなプログラミングと素晴らしいサウンド、そしてワイルドでのびのびとした雰囲気を差し置いても、Bloc. 2015は主催者側のオーディエンスに対する誠実さ、そして最高のイベントを実現する為の情熱が、今まで以上に強まっていることを証明するような内容であった。Bloc.が復活したことによって、UKのフェスティバルシーンがより一層活気づいたと思っているのは、筆者だけではないはずだ。 Photo credit: Jake Davis
RA