Percussions - 2011 Until 2014

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  • 文脈は違って聞こえるとはいえ、ボトムの効いたシャッフルするパーカッション、眩暈を起こしそうになるシンセ、そして、コーラスにさえ聞こえてくるサンプリング音など、Percussionsのトラックを聴いていると、この名義の背後に誰がいるのか見当が付く。Kieran Hebdenの作品は、朝焼けの輝きに似ている。その音楽がポストロックプロジェクトFridgeによるものでも、Four Tet名義による初期の頃のアルバムでも、海賊ラジオに捧げられた2013年の作品『Beautiful Rewind』(英語サイト)でも、それは共通している。2012年から2014年の間、彼はダンスフロアに向けた楽曲を違う名前でリリースしていくことを目的として、自身のレーベルTextからPercussions名義で12インチを3枚リリースしている。そして今回、その12インチに加えて、同時期にレコーディングされた音楽を一緒にまとめた本作がHebdenのBandcampからリリースされた。 過去の12インチをいくら聴き込んでいても、『2011 Until 2014』には、しっかりと作り込まれたリリースという印象を受ける。フロアにフォーカスした音楽を作るHebdenの意図を引き続き含んでいながら、単なるコンピレーション以上の印象を与える流動性がアルバムからは感じられるのだ。それは、2ステップのソウルトラック"Blatant Water Cannon"での鈍器のようなパーカッションによる再アレンジや、"Sext"でメインに使われている不可思議なメロディを聴いていても分かるし、さらには、1曲目の"February 2014"にも当てはまる。軽快なパーカッションを用いたブレイクと冷ややかなサンプルから成るこのトラックは、アルバムの出だしとして柔らかくスタートし、続く短尺トラック"March 2013"で、暖かな水の中を潜っていくメロディを中心に据えながら、流れるようにゆっくりとアルバムが加速していくのが分かる。さらに、未発表だったトラックが多くの場面で、上手く既発のトラックの間に挟まれており、コンピレーションというフォーマットを1つの「個」として機能させている。 御託は並べたものの、単純に今回のトラックを1つのパッケージとして持つだけでも価値があるだろう。この数年は、数々の名義を持つHebdenの作品の中でも、Percussions作品がベストであることが多かった。例えば、アフリカンパーカッションと鳥のさえずりのサンプルを用いた"Bird Songs"は、奇妙なピークタイムを演出する輝かしいアレンジだし、一方で、"KHLHI"は、陽気なディープハウスを歪ませて切り取ったようなトラックになっている。2012年の傑作『Pink』のコーダとも言える"Ascii Bot"では、ほんのり暖かいボーカルサンプルの周りをコズミッシェなシンセのメロディがゆっくりと巻き付いていく。しかし、今回最も盛り上がりが期待できる魅力を持っているのは"Rabbit Songs"かもしれない。けたたましい奇妙なノイズが拍を刻む様は、Paul Simonの"Cecilia"を彷彿とさせ、しばらくすると、異なるドラムパターンがトラックの周辺でカタカタと音を立て始める。低域がドラムを飲み込んでいき混沌とし始めるリズムは、光と闇の両方の世界で響いているかのようだ。16年という月日を自身のキャリアへと進化させ続けているHebden。本作はそのことを克明に物語っている。
  • Tracklist
      01. February 2014 02. March 2013 03. Blatant Water Cannon 04. Sext 05. October 2011 06. KHLHI 07. November 2011 08. Bird Songs 09. Rabbit Songs 10. Ascii Bot 11. January 2014
RA