Sherwood & Pinch - Late Night Endless

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  • Sherwood & Pinchは、実に素晴らしい組み合わせだ。何と言っても、一方には、デジタルダブのテクニックを切り開いたパイオニア、もう一方には、ダブステップ界の重要人物の1人にしてSherwood信者、という組み合わせなのだ。だからこそ、『Late Night Endless』に寄せられる期待は計り知れないものがある。しかし、2人はプレッシャーを感じている様子は無く、彼らのファーストシングルである2013年の"Brind Me Weed"には、仲の良い者同士で作ったような気軽さがあり、ダブステップの影響を取り入れた"Music Killer"では、一転してシリアスな一面を見せていた。そして、約1年と半年が過ぎた今、Adrian SherwoodとRob Ellis(Pinch)が帰ってくる。多様性と時に変化球を織り込んだこのアルバムは、2人のカジュアルなセッションと様々な意識が奇妙に巡り合う場所に落とし込まれている。 トリップホップのスモーキーなバイブスを持つ"Wild Birds"や、スピリチュアルに鼓動する"Stand Strong"、それに、執拗に迫りくるドラム&ベーススタイルの"Gimme Some More"など、異なるアイデアを試すにあたって、2人はダブをその架け橋として用いている。アルバム前半は万華鏡のように様々な模様を見せ、ダブからの影響は主にトラックの構造に関わっている。メロディフレーズは整然と繰り返される度に少しずつ移動していき、一方で、他の要素は拡張/収縮しながらバラバラに引き裂かれていく。 アルバムの後半では、遊び心のある多彩な素材から一転、黒曜石のように鋭く滑らかな響きに変わっていく。終盤にかけては、良くも悪くも、PinchとSherwoodが得意とする領域に立ち返っている印象だ。『Late Night Endless』では全編、Sherwood独自の立体サウンド処理が施されているが、耳触りを良くしただけでは、どうも物足りなさが残る。"Precinct Of Sound"や"Different Eyes"を例に挙げるなら、SherwoodとPinchがビールを飲みながらさくっと作ったような、あまり手を加えていない印象がある。 昨年、Pinchにインタビューした時、記事には掲載しなかったが、波長がすぐに合った話、彼らの強力な化学反応、そして、次々と楽曲を制作する2人の能力(どうやら、少なくとももう1枚のアルバムを作るだけの楽曲があるようだ)など、Pinchはこのプロジェクトを取り組むにあたって苦労を要していない点を語ってくれた。つまり、このプロジェクトはそれ以上でもそれ以下でもないということだ。多くの大物コラボレーションと同様、本作でも、2人が制作者としての枠を打ち壊すような力を発揮している姿は見受けられない。その代わりに本作で披露されているのは、彼らが既に熟知していることを形にする卓越した技術だ。狂気に満ちた"Buketman"など、期待通りの素晴らしさを見せているトラックもある。全てのダブ信者にとって、『Late Night Endless』はマストな1枚となるだろう。それ以外の人にとっては、何年も前から自身のサウンドを確立した2人の偉大なアーティストが、その過程の暇な時間に作った1枚に見えるだろう。
  • Tracklist
      01. Shadowrun 02. Music Killer Dub Vocals 03. Gimme Some More (Tight Like That) 04. Bucketman Vocals – Daddy Freddy 05. Wild Birds Sing 06. Stand Strong 07. Precinct Of Sound 08. Different Eyes 09. Africa 138 10. Run Them Away Bonus Track For Japan 11. Heat Rising 4:01
RA