Shackleton - Nisennenmondai Remixes

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  • これまでSam Shackletonの音楽は、必ずしもミニマリズムに関連付けて語られてきたわけではない。例えば『Music For The Quiet Hour / The Drawbar Organ EPs』のようなプロジェクトは、多方面に広がっていく長編大作だったと言えるし、昨年の「Freezing, Opening, Thawing」は、トラックを細部まで構築し、音素材が増減する過程を際立たせた作品だった。しかし、去年の下半期にかけて、Shackletonは変化を見せる。この時期にリリースされた2枚の「Deliverance」シリーズでは、同じく彼独自の素材を使いながらも、より直線的でじっくりと変化していく壮大な世界が生み出されていたのだ。おそらく、Shackletonが最も従来型のテクノに接近した作品だったのではないだろうか。そう考えると、今回、テクノを斜めから解釈し表現するバンド、にせんねんもんだいのリミックスを彼が長期に渡って手掛けることになったのも、頷ける話だ。 ギター、ベース、ドラムから成るこのバンドは、コズミッシュなミニマリズムを論理的に突き詰め、ピークタイムのテクノセットの強度に匹敵し得る4つ打ちの世界を構築している。それはまるで、テクノの要素を事細かに書き出しているかのようですらあるし、このアプローチは、まさにShackletonが得意とするところでもある。今回のリミックスでも、"B-1' (Remix)"の腰が疼くベースラインや、高田正子によるギターエフェクトを細かなループ素材に解体しているあたりに、Shackletonらしさを感じることが出来る。互いのソロ作品と比べると緊張感が若干、欠けてはいるものの、そのディティールは豊潤であり、展開の付け方が完璧だ。そして、突き抜けているのが、"A' (Remix)"だ。少しスピード感があることも、その理由だが、より重要なのは空間の使い方だろう。Shackleton的なテクスチャーが大量かつ濃密に織り込まれていった後、ベースとドラムによる骨組みだけのリズムを曝け出す様は、何ともスリリングだ。この展開は互いのソロ作品では成し得なかったことだろう。リミックスという行為に期待するのは、つまりは、こういうことなのだ。
  • Tracklist
      A1 A' (Remix) B1 B-1' (Remix)
RA