Keith Worthy - The Price of Non Conformance

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  • Keith Worthyのデビューアルバム『The Price Of Non Conformance』がスキットを含んだインタールードを収録しているからと言って、LPというフォーマットにダンスミュージックは合わないと思っている人、例えばPinchのような人の考えを変えることはまずないだろう。何故人々はアルバムを作るのか、ということに思考を巡らせたり、「この音楽が黒人コミュニティから生まれたことをみんなが知っていると思うでしょ?」と発言してみたり、スキットはどれも考えさせられる内容だが、決して作品全体に一貫性を与えているわけではない。むしろ全体の流れを断ち切ることで、各トラックごとにガラスのようなメロディとメタリックなシンセのフレーズを用いて、うっとりとした恍惚感へとリスナーを導びこうとしている印象だ この豊かなメロディの輝きはWorthyのレーベルAesthetic Audioからリリースされている大半の作品を特徴付けるものであり、また彼自身の音楽にもユニークな個性を与えている。2010年、RAに対し、今も自分は発展途上のプロデューサーだと認めたWorthy(英語サイト)だが、今回は特徴的なサウンドを敢えて用いず、素晴らしい仕事を成し遂げている。「俺がいつもやろうとしていたのは、自分自身であり続けることだ」と語るのは1曲目で使われている声だが、Worthyはこの発言通りの行動を実行している。例えば"Deeptroit"のようなトラックでは、ざらついたパーカッシブのフレーズ、そして、スタッカートで鳴らされるシンセ、旋回するパッドを用いてWorthy独自のコズミックな音世界の中心へと誘っているのだ。 ほとんどのトラックで冷やかなパッドと、大音量過ぎて目が潤んでしまうほどのハイハットが使われており、スピーカーから飛び出してくるような印象になっているが、とりわけ"Jazz"での初期Planet Eのようなソウルと一本の指で弾いたような熱狂的なメロディはその好例だろう。本作には"Guilty Pleasures ($ Of N.C Mix)"でのスケールを上下に移行する展開するなど、別世界にトリップさせられる場面もある。ドラムを深く打ちこみ、その脇には小刻みに鳴るパーカッションを組み合わせたこのトラックは、宇宙に対する見事な感覚を本作が持ち合わせていることを示している。クールに仕上がった今回の収録曲からは、1つの方向に急ごうとするのではなく、全方向に広がっていく様子がうかがえる。そしてその道筋の多くには美しい軌跡が描かれているのだ。
  • Tracklist
      A1 Interlude #1 A2 Deeptroit A3 Interlude #2 A4 Jazz B1 Interlude #3 B2 Guilty Pleasures ($ Of N.C. Mix) B3 Interlude #4 B4 Leftfield C1 Interlude #5 C2 The Aesthetic Track C3 Karma ($ Of N.C. Mix) D1 Interlude #6 D2 Resilience D3 The Elephant In The Room
RA