Zip and Fumiya Tanaka in Berlin

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  • 今回、ベルリンのヴェニューHoppetosseにて行われたЯeturnは、元々はRenateでスタートした、Solid AMというブッキング・エージェンシーが手掛ける不定期パーティーである。同エージェンシーの所属アーティスト達はもちろん、ЯeturnではRicardo Villalobos、Daniel Bell、Zipといった大物アーティストのプレイを、Get Perlonized!あるいはClub Der Visionaere以外で体験することができる。この12月の開催では、いつもよりはビッグネームが少なかったものの、私を含む多くのクラウドにとっては、Berghainの10周年よりもずっと魅力的な内容であった。 午前8時を回る頃に到着した私がまず向かった先は下のフロアだ。Onur Özerがダークでドラッギーなブレイクビーツでオーディエンスを虜にしていたところだった。クラウドのまどろんだ目や、どことなく乱雑なダンスフロアのヴァイブは、まるでこの薄汚れたクラブの姿を反映しているようで、窓から入ってくる冬のどんよりとした太陽光が、更にその雰囲気に拍車をかけていた。The Moleにバトンが渡されたのは午前9時。Portableの"A Deeper Love"や100 Hz'sの"Shoot The Bar"を含む、アップビートなハウストラックのセレクションは、バウンシーで陽気なヴァイブスを生み、先ほどのOnur Özerのセットとコントラストが非常に際立っていた。しかし私には、彼が当たり障りのないプレイをしているようにも思えて仕方がなかったのだが、おそらくそれも計算のうちだったのかもしれない。 眺めを変えるべく上階へ向かう。Brothers Vibeのスタートラインを丁度見逃したところだ(Radioheadのテックハウスリミックスが良かった、詳細を知っている人は是非教えてほしい)。昼間になり、下のフロアへ戻ると、Veraがプレイを始めるやいなや次々とミニマルからエレクトロなどを畳み掛け、オーディエンスを楽しませる。Villalobosの2003年のクラシック"Theogenese"はこの日のハイライトであり、じっくりと聴き入るオーディエンスが放つ多幸感に包まれた、至福の9分間であった。 パーティーは日曜日の夕方に差し掛かかる。Fumiya Tanakaは上階のブースで、ミニマルへの愛を思いっきり吐き出したプレイをしていた。彼の選曲は何とも魅力的で、ミキシングも極めて正確。しかし、注目すべき点は彼の忍耐力であった。ループを繰り返す、地味なテクノを数時間に及びプレイした後、彼は思いっきりテンションを解放し、ようやくクラウドをアゲる方向にシフトしたのだ。彼がセット終了の20分程前に投下した、先日再発されたばかりのK. HandのEP「Project 5」は、ダンスフロアを狂乱の渦へと落とし込んだ。軽快なハイハットに乗った女性ヴォーカルに、あれほど喜びを感じているオーディエンスを、私はこの時初めて見たかもしれない。 そこから最後まで、Tanakaはハウシーなセレクションで繋ぎ、温かで、もの悲しい旋律が印象的なKerri Chandlerの"Rain"で、Mr. Franzmannにバトンを託した。ジョイントを片手に、柔らかな笑顔を浮かべるZipは、いつもの調子でプレイを始め、スウィンギンなUSハウスからトリッピーなミニマル(毎回必ず、最低一曲はPerlonのトラックをプレイする)、そして数曲のテクノまでを完ぺきにミックスした。4時間のセットの中で、彼はもちろん変わりネタもプレイしてくれた。Anquetteによる1986年のマイアミベース・アンセム"Throw The P"は、残りの3時間を迎える為の小休止となった。 続いて、D'Julzがソリッドなトラックでスタートを切ったが(1曲目はNext Evidence "My Music")、フロアのエネルギーは明らかに落ちていた。午前3時に始まるBinhのセットまであと5時間待たなければならないという事実に直面した私は、顔から笑みが消える前にパーティーを切り上げ、家に帰ることにした。
RA