Leisure System presents New Build

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  • イベントの主催や作品のリリースを通して、ベルリン拠点のコレクティヴLeisure Systemは2008年より活動を重ねてきたが、彼らを代表する音楽性は未だにいまいちはっきりとしない。BerghainとPanorama Barで彼らが季節ごとに開催しているイベントでは、Venetian SnaresからDisclosureまで、幅広いタイプのアーティストが招かれており、2011年に立ち上げられたレーベルの方向性も同等に流動的であり、コンテンポラリー・クラブ・ミュージック内の様々なスタイルを行ったり来たりしてきた。これまで話題となった作品には、Jimmy Edgarのモダン・ファンクや、MachinedrumのサイドプロジェクトJETS、Visionistによる夢幻的なインスト・グライム、そしてベルリンのObjektによる鋭利なエレクトロなどがある。 Leisure Systemがこれまで受けた最大の称賛は、このObjektの作品に向けられたものであった。デトロイトのDopplereffektとのスプリット12インチに収録されていた"Ganzfeld"は、Resident Advisorの2014年のTop 50リストで堂々の1位を飾った。そして、今回Leisure Systemが初めて日本で開催したイベント「New Build」のヘッドライナーを務めたのも、やはりObjektであった。Alec Empireの"Lash the 90ties"で自身のセットをスタートしたObjektは、その後2時間かけて、妥協することなくハードにメインフロアを揺らし、自身の作品と同じ想像力と細部へのこだわりを見せた。簡単にフロアを盛り上げることができる人気曲に頼るようなことはせず、自身の“The Stitch Up”をようやくかけたのも、終わりに近づいた頃であった。元々無名義のホワイトレーベル12インチで出た同曲は、その後デビュー・アルバム『Flatland』の日本盤にボーナス・トラックとして収録された曲であり、この日にかかったのも納得の1曲であった。 Objektと共にヘッドライナーを務めたのは、U.K.のShackleton。過去にはLabyrinthフェスティバルや惜しくも閉店してしまった東京のクラブModuleなどで印象深いパフォーマンスをしており、日本での評価も高いアーティストである。Skull Discoの創始者でもある彼は近年、明るいトランス寄りのサウンドへとシフトしており、今回のセットも例外ではなかった。彼のライブセットには、ヒプノティックなポリリズムの嵐や、散りばめられた断片的な声ネタなど、Shackletonらしい要素があったものの、過去のトライバルさは今回皆無であった。最近リリースされた、東京のポストロック・バンド、にせんねんもんだいの彼が手がけたリミックス盤のA面の、尖ったレイヤード・シンセをかけたときが特に印象的な瞬間であった。フロアは爆発的に盛り上がり、客として来ていたらしいバンド・メンバーも、彼が提示した同曲の新しいクラブ・ポテンシャルを嬉しく感じたことだろう。凶暴なノイズやグリッチへと展開したライブセットの終盤は、Shackletonのダークな過去作を思い出させたが、全体的にはアップテンポで爽快な内容であった。 その他では、Future Terrorのレジデント、HarukaとDJ Nobuが相変わらずの職人芸でメインルームのオープンとクローズを担当。Kata Galleryでは、Nodaがレフトフィールドなエレクトロニック・ミュージックで早めに訪れた客を暖め、Leisure SystemのレジデントPuzzleが、MssngnoのBoxedLDNに影響されたグライム曲などをスピンし、日本人デュオDreampv$herは、L.I.E.Sライクな騒がしいアナログ・カオスで客を魅了した。夜が明ける頃になっても、Leisure Systemの音楽的ヴィジョンは一向にクリアにならなかったが、エキサイティングなイベントをキュレーションすることに関する彼らの才能に、議論の余地がないことは明確であった。
RA