- Bass ClefのレーベルMagic + Dreamsから新たなアイデア「12,000 Seconds(12,000秒)」が届いた。このシリーズでは2人のアーティストがカセット・テープのそれぞれ片面を担当するのだが、曲の長さが0:06、2:37、3:03という具合に固定されており、合計で12,000秒になるという計算だ(実際は計算間違いがあり、合計で12,060秒になっている)。それ以外には一切制約は無く、アーティストは好きなようにやっていいことになっている。このシリーズの第一弾はブリストルのプロデューサーPeverelistとニューヨークの実験アーティストAshley Paulのカップリングだ。前述のアイデアにより本作には面白い結果がもたらされている。
これまで以上に意識をねじり込んでいくのがPeverelistだ。彼が提供した8つのトラックは与えられた尺を最大限に活用している。中でもクラブ向けに仕上がったトラックはPunch Drunkからの初期作品を彷彿とさせ、例えば"Caught A Glimpse"のような回転するようなグルーヴのトラックは"Clunk Click Every Trip"スタイルのシンセを伴っている。他にハイライトを挙げるならば、クラシックなダブ・シンセによるホーン・セクションを明確に打ち出している"OK Run It"、アニメのような疾走音と逆回転に曲げられたリズムを用いた"Kinetics"だろう。Livity Soundの12インチに収録されていてもおかしくないトラックだ。
Ashley Paulが担当したサイドはより抑制されていながら同時に対抗的な仕上がりだ。静かに荒れ狂う一連のトラック上で、Paulは悲哀と不安の間を行き来するサックスとギターを用いて巧妙にサウンドを紡ぎだし、時折、自身の声を使って感情を露わにしている。12,000秒というコンセプトの利点を彼女のトラックはさらに上手く活用しており、それぞれトラックの尺を使って活き活きと呼吸し、感情を放出している。今回の2人の音楽は全く異なる内容となっているし、両サイドを行き来しながら聞くと、繋がりがそれほど感じられない。しかし、シリーズの第一弾としては成功である(そして他とは異なっている)のは確実だ。
TracklistPeverelist:
01. Introduction
02. Caught A Glimpse
03. In A Spin
04. Kinetics
05. A Brief Transmission
06. Silvers
07. OK Run It
08. Until The Next Time
Ashley Paul:
01. Distance
02. Face
03. Lines
04. Prelude
05. Weight
06. Hero
07. Take
08. Leave